目立った2・3年生の躍動
慶応大の34年ぶり4度目の優勝で幕を閉じた『全日本大学野球選手権』。全国の26連盟・27チームが参加し、プロのスカウト陣も連日視察に訪れていた。
今秋のドラフト候補たちの活躍は以前のコラムでも取り上げたが、今年の大会ではそれ以上にたのしみな下級生が多いという印象を受けた。
というわけで今回は、大学選手権で光るプレーを見せた“来年以降のドラフト候補”をピックアップして紹介していきたい。まずは今大会で登板した「3年生投手」から。
安定感で一歩リードしている印象を受けるのが、金村尚真(富士大)だ。
春のリーグ戦・開幕戦で18奪三振の完全試合を達成。本大会では2回戦で国学院大に敗れるも、2試合・11回1/3を投げて2失点。1四球の14奪三振と見事な投球を見せた。ストレートは140キロ台中盤だが、鋭く変化するカットボールなど変化球とコントロールは高レベルだ。
馬力とスピードでは、加藤泰靖(上武大)と有本雄大(東北福祉大)が目立つ。
加藤は初戦の西日本工大戦で完封。最速は149キロにとどまったが、昨年の横浜市長杯では153キロをマークしており、ボールの勢いは目を見張るものがある。
有本は実績が乏しいが、今大会で最速152キロをマーク。恵まれた体格で、まだまだ速くなりそうな雰囲気は十分だ。
沖縄大・仲地礼亜の実力に驚いた!
そして、3年生の中で最も驚かされたのは仲地礼亜(沖縄大)だ。
東京ドームでの開幕試合となった名城大戦に先発すると、1回に2つの盗塁と味方のエラーから1点を失い、これが決勝点となって負け投手となったものの、2回以降はほぼ完璧なピッチングで相手打線を抑え込んだ。
バランスの良いフォームから投げ込む角度のあるストレートはコンスタントに145キロを超え、最速は149キロをマーク。両サイドに投げ分けるコントロールを備え、緩急をつけるカーブやブレーキのあるフォークなど変化球も質が高い。
まだ体が細いだけに、ここから大きくなれば、凄みが増すことも期待できる。これまで沖縄の大学からプロが注目するような選手が出てきたケースは非常に少なかったが、順調にいけば、来年の有力候補となる可能性は高いだろう。
このほか、伊藤茉央(東農大北海道オホーツク)や増居翔太、橋本達弥、生井惇己(いずれも慶応大)、真田拓(名城大)、立石健(福井工大)、木村光(佛教大)、渡辺翔太(九州産業大)などが、来年の有力候補に挙がっている。
名城大・松本凌人ら2年生投手にも注目
続いて、2年生の投手。なかでも松本凌人(名城大)と上田大河(大阪商業大)が上級生に負けないだけのパフォーマンスを見せた。
松本は昨年の大学日本代表候補合宿にも選出された本格派サイドスロー(※代表候補合宿はコロナ禍で中止)。初戦で先述した仲地と投げ合い、被安打3で9奪三振という見事な内容の完封勝利を飾った。
最速150キロをマークしたストレートは終盤まで全く球威が落ちず、鋭く変化するスライダーとカットボールも素晴らしかった。準々決勝の福井工大戦では、股関節の痛みを訴えて2回2失点で緊急降板したが、残したインパクトの強さは大会でも指折りだった。
一方、上田は上級生に好投手が多いというチーム事情があり、リリーフでの起用となった。
登板した2試合でいずれも150キロを超えるスピードをマーク。特に1回戦の東亜大戦では最速151キロ、投じたストレートの平均は147.5キロと圧倒的なスピードで相手打線を封じ込めた。
高校時代から評判の投手だったが、大学でも順調に体が大きくなり、それに比例してボールの威力も確実にアップしている。バランスの良いフォームでコントロールも安定しており、来年以降はエース格として期待できそうだ。
昨年は大会自体が行われなかったこともあり、アピールの場が少なかった。しかし、今年はその分も晴らすように、下級生も見事なパフォーマンスを見せてくれた。
スケール的に大きい投手も多いだけに、大舞台での経験を生かして秋のリーグ戦、そして来年以降もさらにレベルアップしたピッチングを見せてほしい。
☆記事提供:プロアマ野球研究所