制球力に長ける本格派サウスポー
各地で球児たちが熱闘を繰り広げている7月下旬。
これから高校生のドラフト候補たちが大きな注目を浴びる時期となるが、今回はその前に社会人の注目株について取り上げておきたい。
6月29日から7月14日まで、ほっともっとフィールド神戸と京セラドーム大阪で開催された社会人野球日本選手権。
大会は大阪ガスの連覇で幕を閉じたが、今年は特にロースコアの接戦が多く、前評判の通り好投手たちの躍動が目立ったように思う。
そこで今回紹介するのが、三菱重工Westの左右の“2枚看板”。まずはサウスポーの森翔平から。
関西大で主戦となったのは4年からという遅咲きの投手だが、秋にはチームをリーグ戦優勝に導き、続く明治神宮大会でも準優勝。
社会人に進んでからも1年目から多くマウンドを経験し、昨年の都市対抗ではNTT西日本の補強選手として2試合に登板している。
今年の日本選手権では、初戦のJR四国戦に先発。立ち上がりにいきなり3連打を許して2点を失ったが、2回以降は立ち直ってみせ、6回を投げて2失点と試合を作った。
最大の魅力は、引っかかることのないスムーズで躍動感のあるフォームだ。
右足を上げた時の姿勢が良く、下半身主導でリードして投げることができている。テイクバックでわずかに左肩が下がる動きはあるものの、そこまで極端ではなく、無駄な沈み込みなどもない。高い位置から腕が振れるため、上背以上にボールの角度があるのが特長だ。
変化球は落差のあるカーブに、鋭く横に変化するカットボールとスライダー、ブレーキのあるチェンジアップを操り、どのボールもレベルは高い。本格派サウスポーながらコントロールは安定しており、この日も6回を投げて72球と球数も非常に少なかった。
一方、課題を挙げるとすれば、ストレートでも変化球でもなかなか空振りが取れないという点だろう。
右足を上げてからスムーズするまでの“間”があまりなく、リズムが単調で打者はタイミングをとりやすい。立ち上がりにストライクを揃えて3連打を浴びたのも、このあたりに原因があると言えるだろう。
しかしながら、フォームに大きな欠点がなく、コントロールも安定している本格派サウスポーというのは非常に貴重な存在である。左投手が不足している球団であれば、上位指名を検討する可能性は十分にありそうだ。
▼ 森 翔平(三菱重工West)
・24歳
・投手
・177センチ/80キロ
・左投左打
・鳥取商-関西大
<日本選手権成績>
1試(6.0回) 被安打5 失点2(自責点2)
四球1 奪三振1 四死球率1.50 奪三振率1.50
防御率3.00 WHIP1.00
<主な球種と球速帯>
ストレート:143~149キロ
カーブ:115~120キロ
スライダー:126~132キロ
カットボール:134~138キロ
チェンジアップ:124~128キロ
八木彬は最速150キロをマーク
三菱重工Westの左右の“2枚看板”、もう一人が八木彬だ。
東北福祉大では1年春から活躍したが、4年時には故障もあって春・秋とも登板なし。ただ、それでも高い潜在能力が評価されて社会人に進み、2年目の今年は主にリリーフとして登板を重ねている。
JR四国戦も、森の後を受けて7回からマウンドへ。9回裏に水野達稀(21歳/遊撃手)にサヨナラ本塁打を浴びて負け投手となったが、8回までの2イニングで2つの三振を奪い、持ち味は十分に見せてくれた。
182センチ・98キロというプロフィールを見ても分かるように、大学時代と比べて明らかに体つきが立派になった。それに比例して、ストレートの勢いも増したように見える。
この日の最速は150キロ。ストレートの大半が145キロを超えたが、その数字に見合うだけの威力が感じられた。140キロ前後のスピードとブレーキのあるフォークボールは、決め球として有効なボールである。
また、走者がいなくてもセットポジションで投げるスタイルだが、軸足にしっかりと体重を乗せてからステップしており、体重移動のスピードも申し分ない。投げ終わった後に体が少し一塁側に流れるのは気になったとはいえ、左足の着地も安定しており、制球が乱れることもなかった。
典型的なリリーフタイプの投手で、三振を奪うこともでき、社会人に入ってからスケールアップしてきたという点は大きな魅力。実績という意味ではまだ少し物足りないものはあるが、ブルペンを強化したい球団にとってはうってつけの投手で、今年のドラフトでも十分に指名される可能性はあるだろう。
▼ 八木 彬(三菱重工West)
・24歳
・投手
・182センチ/98キロ
・右投右打
・八戸学院光星→東北福祉大
<2021年社会人野球日本選手権成績>
1試合 2回0/3 被安打2 1失点(自責点1) 0四死球 2奪三振
防御率4.50 四死球率0.00 奪三振率9.00 WHIP1.00
<主な球種と球速帯>
ストレート:146~151キロ
スライダー:130~133キロ
カットボール:138~142キロ
フォーク:135~140キロ
☆記事提供:プロアマ野球研究所