広島のキーマンを探る
プロ野球は約1カ月間の中断期間を終え、13日から後半戦が始まる。
広島は今季最長となる4連勝で前半戦を終えたとはいえ、得点力不足や救援陣の再整備など、課題を残したまま中断期間に突入した。
借金12のリーグ5位からリーグ戦再開…。
そこで今回は、後半戦開幕を前にチーム浮上に欠かせない投打のキーマンを取り上げたい。
待たれるフランスアの復調
前半戦の投手陣は、リーグ5位のチーム防御率3.87と低調に終わった。
喫緊の課題は、抑えの栗林良吏につなぐ勝ち継投を確立させること。そのカギは、ヘロニモ・フランスアが握っている。
昨季は自己最多の19セーブを挙げて、抑えの最有力候補だった。しかし、3月上旬に右膝の手術を受けたため、昇格は6月下旬までずれ込んだ。
昇格後は6試合に登板。しかし、防御率7.71と本来の姿ではなかったと言える。ウエスタン・リーグでは5試合にしか登板しておらず、前半戦は本調子に向けて状態を上げていく段階だった。
佐々岡真司監督も「(コルニエルと)2人で勝ちパターンに入ってくれれば大きい」と、悲観することなく見守ってきた。しかし、結果的には信頼を得るまでには至っていない。
8月4日の西武戦。9回を6球で三者凡退に抑えたかと思えば、11日のソフトバンク戦では3安打を許して2失点。指揮官は「リードしている試合で投げてもらいたいが、いいときと悪いときの差がある」と、不安定な投球内容に頭を悩ませることになった。
フランスアの本調子を判断するには、「先頭打者」が指標となる。
150キロ台中盤の直球を持っていながら、登板直後は140キロ台前半にとどまることも少なくない。首脳陣も初球の大事さを繰り返し伝え続けてきた。この課題を理解し改善できれば、本来の状態に近づいていくだろう。
中断期間でのアピールは乏しかったものの、フランスアは後半戦再開後から勝ち継投の一員として起用される見込みだ。ここで結果を残せず、一から救援陣を再整備し直すとなれば、後半戦のスタートダッシュは相当に厳しくなる。
前半戦のブルペン陣を支えた島内颯太郞や森浦大輔の力も重要な場面で必要になるだろう。そのためにも、実績のあるフランスアを7回・8回に固定させ、若手救援陣の役割を明確にしたいところ。
やはりフランスアの状態が、後半戦の投手陣を左右することになる。
大きかった會澤の不在
一方の打線は、チーム打率がリーグ2位(.2606)を誇りながら、チーム得点298は同5位に低迷。得点力不足の解消に向けて「つなぐ攻撃」の再構築を目指してきた。
前半戦で打線が効果的に機能しなかったのは、正捕手である會澤翼の不在が大きかった。
首脳陣は會澤の負担を減らそうと、開幕直後は8番で起用。ケビン・クロンや堂林翔太らの不調によって、打順は次第に5番、6番へと昇格していった。
しかし、打線の中軸としても期待されながら、故障により2度の登録抹消を経験。東京五輪の代表内定も辞退。現在はリハビリ組である三軍で実戦復帰を目指している。
會澤の不在は、2番手捕手争いの活性化を促した。
坂倉将吾は打力、石原貴規は守備力、磯村嘉孝は経験や総合力を前面に押し出し、それぞれが持ち味を生かして評価を高めた。しかし、“代役正捕手”を固定するまでには至らなかったのもまた事実だった。
會澤が復帰すれば、攻守に厚みが出るのはもちろん、精神的支柱としての役割を期待することもできる。豊富な経験によるアドバイスは、野手のみならず投手にも大きな影響を与えるだろう。
チームの低迷は、會澤の存在の大きさを改めて実感する期間でもあった。
前半戦は、投手では玉村昇悟、野手では林晃汰や小園海斗ら若手の台頭が目立った。
後半戦では、若鯉の勢いを実績組がうまく支えられれば理想的。そうなれば、チーム浮上への大きな力が生まれるに違いない。
文=河合洋介(スポーツニッポン・カープ担当)