第2回:新たなコロナ余波
巨人が今月6日、新外国人、スコット・ハイネマン外野手の獲得を発表した。レイズ傘下の3A・ルイビルに所属していた同選手は、メジャー出場こそ68試合と少ないが、3Aでは166試合に出場して打率.304、20本塁打、86打点の成績を残している。今月中に来日しても2週間の隔離期間を経るとチーム合流は9月にずれ込みそうだ。
五輪前の前半戦を首位・阪神から2ゲーム差の2位で折り返した巨人だが、投打の誤算に泣いた。大黒柱の菅野智之投手の度重なる戦列離脱。野手に目を転じると、1番打者として期待していた梶谷隆幸、吉川尚輝両選手が故障で一軍から姿を消す。さらに大砲として期待された新入団外国人に大誤算が生じた。
メジャー通算196本塁打の実績を誇るジャスティン・スモーク選手が6月に突如の退団。巨人でも34試合で7本塁打、打率.272と、「5番」の役割を果たしていただけに、痛い途中退団となった。途中帰国の理由はコロナ禍でビザ発給が遅れて来日できない家族との時間を優先したいというもの。
巨人ではもうひとりの大物助っ人、エリック・テームズ選手も来日早々、アキレス腱断裂の大ケガで帰米している。4番・岡本和真選手の後ろを打つ5番に人材を失ったチームは、やむを得ず坂本勇人選手を起用することで急場をしのいできたが、本来なら上位打線の核となる選手なだけに、原監督が後半戦でどんなオーダーを組んでくるのか? 逆転優勝に向けた大きなポイントとなりそうだ。
相次いだ退団と新戦力
スモークの例を引くまでもなく、今季ほど外国人選手の途中退団が続出する年は珍しい。
4月、オリックスのブランドン・ディクソンは来日することなく退団。5月には楽天のアダム・コンリーが契約解除。7月には西武の元本塁打王、エルネスト・メヒア。さらに8月に入るとオリックスのステフェン・ロメロ、ソフトバンクのコリン・レイの各選手が退団を申し入れている。いずれもスモーク同様にコロナ禍で来日の叶わない家族の存在が決断の理由だ。DeNAのケビン・シャッケルフォードも同じく速やかな処置を外務省に申し入れている。
野球選手は遠征が多く、日頃から自宅を留守にするケースが多い。それでも平時なら来日した家族はショッピングに出かけ、友人との会話も楽しめるが、コロナ禍ではそれも大きな制限を受ける。異国で不安な日々を送ることをあきらめ、単身赴任となると、今度は選手が孤独とストレスにさいなまれる。何とも因果な時代になったものである。
去る者がいれば、来る者もいる。ペナンレースの後半戦は約55~60試合を残す。東京五輪をはさんで約1カ月のブレーク期間のあった今季は、この間に再調整も可能な特殊な戦いとなった。中でも外国人選手の働きによってチームの強化も図れるだけに各球団は水面下で激しく動いている。
最も顕著なのはオリックス。この夏に相次いで入団発表を行ったのはグレン・スパークマン投手(ツインズ傘下)と、ランヘル・ラベロ内野手だ。前述の通り、ディクソン、ロメロ両選手が相次いで退団した後釜として期待される。中でもスパークマンはすでに五輪ブレーク中に行われたエキジビションマッチの阪神戦で4回被安打1、6奪三振の好投を見せている。25年ぶりのリーグ優勝を狙うチームの秘密兵器となれるか、注目だ。
チームの成績を左右する助っ人たち
そのオリックスを4ゲーム差で追う“王者”ソフトバンクには、国内BCリーグ・茨城からダリエル・アルバレス選手が加入した。こちらもエキジビションマッチで快打を連発して首脳陣の信頼を勝ち取りつつある。常勝軍団も今季はエース・千賀滉大投手の出遅れに加え、ジュリスベル・グラシアル、アルフレド・デスパイネの主力打者が故障で戦列を離れて打線の迫力不足にも泣かされてきた。
後半戦はデスパイネが復調気配であることに加えて、アルバレスが加われば戦力に厚みが増すことは間違いない。
一方、前半戦を振り返ると、外国人選手が威力を発揮したのが阪神とロッテだ。8人もの外国人選手が在籍する阪神は、打者ではジェフリー・マルテとジェリー・サンズが大暴れ。投手陣にはロベルト・スアレスが絶対守護神として君臨し、先発ではジョー・ガンケルが6勝1敗と安定感を示している。ロッテもレオネス・マーティンとブランドン・レアードの長打力が、優勝を狙える位置にまでチームを引き上げた。
東京五輪では侍ジャパンが見事に金メダルを獲得したが、ペナントレースに戻ると、外国人選手の活躍が優勝争いに直結する割合は高い。逆に助っ人が不振に陥ると失速することもあり得る。
コロナ禍に再開する後半戦。異変続きの外国人選手から見る風景は、予測不能と言えるかも知れない。
文=荒川和夫(あらかわ・かずお)