早速「プロ志望」を表明
史上初の“智弁決戦”が大きな話題となり、智弁和歌山の優勝で幕を閉じた『第103回全国高等学校野球選手権大会』。
夏の熱闘が終わると、カレンダーも9月へ。早いもので、もう1カ月もすれば、アマチュア選手たちの運命を決するドラフト会議を迎えることになる。
この夏の甲子園でも多くのスター候補が誕生したが、ドラフト会議に向けてプロから注目を浴びている球児は甲子園出場者だけではない。
プロアマ野球研究所では、残念ながら地方予選で涙を呑んだ有力選手も紹介していきたい。
今回は、総合力では全国1~2を争う“ドラ1候補”の右腕を取り上げる。
▼ 小園健太(市和歌山)
・投手
・185センチ/90キロ
・右投右打
<主な球種と球速帯>
ストレート:142~152キロ
カーブ:110~113キロ
スライダー:123~128キロ
カットボール:131~136キロ
ツーシーム:125~135キロ
☆クイックモーションでの投球タイム:1.18秒
プロ注目の強打者も完全に抑え込む
今年の高校生投手で風間球打(ノースアジア大明桜)、森木大智(高知)と並んで目玉候補として見られているのが、市和歌山のエース小園健太だ。選抜大会前にも注目選手として紹介しているが、改めてこの夏に見せた成長ぶりを紹介したい。
筆者が足を運んだのは、7月25日に行われた和歌山大会・準決勝の対高野山戦。
市和歌山に続いて、次の試合に智弁和歌山が登場することもあり、紀三井寺球場は早朝から多くのファンが訪れ、10時開始にもかかわらず開門が7時半という異例の事態となった。
そんな高い注目の中、小園は立ち上がりから二者連続三振を奪う上々のスタートを見せる。
3番打者には不運な安打を許すも、プロ注目の強打者である4番打者の渡辺大和(3年/三塁手)との対戦が興味深かった。
初球のカットボールはわずかに外れたものの、その後は145キロを超えるストレート3球続け、力勝負で空振り三振を奪って見せたのだ。
なお、渡辺とは4回にも対戦したが、この打席でもストレートを中心に圧倒。見逃し三振を奪っている。
ちなみに、この日対戦した両校は6月にも練習試合を行っているのだが、その時も小園は渡辺から3打席連続三振を奪って完璧に抑え込んだ。
他の打者と渡辺の時では明らかに力の入れ方が違い、狙って三振を奪いにいっているようにも見えたが、その通りに抑えてしまうというのはさすがという他ない。
結局、小園が打たれたヒットは1回のポテンヒット1本のみ。5回を四死球0、8奪三振とほぼ完璧なピッチングで、チームを勝利に導いた(10-0でコールド勝ち)。
スライダー、カッターを直球と同じ軌道で投げ込む技術
球数は62球と1イニングあたり12球程度だが、それでも8個の三振を奪っているところに小園の凄さがよく表れている。
変化球は110キロ台のカーブと120キロ台のスライダー、さらに130キロ台のカットボールを操り、それぞれにスピードと曲がりの大きさに差があるというのが大きい。
特に、スライダーとカットボールはどちらもストレートと軌道が変わらず、ネット裏から見ていると、曲がる方向とは逆へのいわゆる“ふくらみ”がないため、打者はギリギリまで球種を見分けることが難しいだろう。
ストレートとこれらの変化球をほぼ狙った通りにコーナーに集めることができ、テンポよくどんどん追い込んでいくため、高野山の攻撃はあっという間に終わってしまうように感じた。
ストレートの最速は147キロ。自己最速の152キロには及ばなかったが、選抜の時と比べて球速のアベレージは確実に速くなっているように感じた。
点差がついたということもあって余裕を持って投げており、140キロ台前半のボールも多かったが、それでも力を入れた時のボールは勢い十分。5イニング全てで145キロ以上をマークしたのは、大きな成長と言えるだろう。
その中で少し気になったのは、ツーシームなどのシュート系が確認できなかった点だ。
次の決勝戦に備えて温存していたことも考えられるが、秋まではこのボールがスライダー、カットボールと対になって威力を発揮していただけに、改めて見直してもらいたいボールである。
結局、小園は決勝戦で智弁和歌山に敗れ、春夏連続の甲子園出場はならず。しかし、その智弁和歌山が甲子園でも快進撃を見せて21年ぶりの優勝。
のちに全国制覇を成し遂げる相手に1-4と接戦を演じており、さらに準決勝までに見せたピッチングは「1位候補に相応しい」と思わせるには十分な内容。特にコントロールとテンポの良さ、投球術に関しては、近年の高校生候補の中でも頭一つ抜けている印象を受ける。
単純なストレートの威力に関しては風間や森木には劣るものの、体格的なポテンシャルを考えても、まだまだ速くなることも十分に期待できそうだ。
高校生とはいえ完成度の高さは抜群であり、最も失敗するリスクの低い投手といえるだろう。ドラフト1位の12人に入ってくる可能性は極めて高い。
☆記事提供:プロアマ野球研究所