アツい夏が終わって…
9月も折り返し地点を過ぎ、“運命の一日”まで1カ月を切った。
今年は10月11日(月)に開催されるプロ野球のドラフト会議。この時期は日々更新される「プロ野球志望届」の提出者が話題を集めている。
夏の甲子園は史上初の“智弁対決”が大きな注目を浴び、智弁和歌山の優勝で幕を閉じた。
聖地で自らの名を知らしめた選手もいれば、一方で今年は早くから注目を集めていた選手が甲子園までたどり着けなかったというケースも多々見られたように思う。
そこで今回は、連日お届けしているドラフト注目候補まとめの高校生編。まずは「投手」の有望株をご紹介したい。なお、既に進学や社会人入りが有力視されている選手は対象外とした。
1位指名が確実な投手は3人
高校生の投手で1位指名が確実視されるのが、風間球打(明桜)・小園健太(市和歌山)・森木大智(高知)の3人。
この中で唯一、夏の甲子園に出場したのが風間。2回戦で明徳義塾に敗れたものの、大会最速の152キロをマーク。全国の大舞台で改めてその潜在能力の高さを見せつけた。
スピードだけでなく、高い位置から投げ下ろす角度、手元での勢いなども一級品。ストレートに関しては、大学や社会人のドラフト候補を含めて“最上位”に位置していると言っていい。
コントロールや投球術などは未完成な部分が多く、プロ入り後に少し苦労しそうだが、スケールの大きいエース候補を求める球団にとって、これ以上とない人材といえそうだ。
小園は完成度の高さで他の有力選手たちを頭ひとつリードする好投手。和歌山大会の決勝で敗れ、春夏連続の甲子園出場は逃したものの、準決勝までは全く危なげない投球で格の違いを見せつけた。
ストレートと変化球でフォームが変わらず、テンポ良くコーナーや低めに投げ込む制球力はとても高校生とは思えない。球速は140キロ台中盤のボールが多い一方で、力を入れた時のボールの勢いは素晴らしい。早ければプロ入り2年目にも一軍の戦力へ…などということも十分に考えられる。
森木は中学時代にすでに150キロをマークした剛腕。早くからプロの高い注目を集める中で、最終学年でしっかりと成長を見せてくれた。
ストレートは、力みなく投げても140キロ台後半の球速をマーク。それでいて変化球の質も高い。一度も甲子園の土を踏むことはできなかったが、総合力で見ても風間や小園にも決して引けを取らない存在だ。
天理・達や中京大中京・畔柳らは「第2グループ」
これに続く「第2グループ」のドラフト候補としては、6人の名前が挙がる。
春のセンバツで大活躍を見せた達孝太(天理)と畔柳亨丞(中京大中京)をはじめ、竹山日向(享栄)や花田侑樹(広島新庄)、木村大成(北海)、松浦慶斗(大阪桐蔭)らは押さえておきたい注目株。彼らは1位指名は難しくても、巡り合わせによっては上位指名が狙えるポテンシャルを持っている。
まず達は193センチの長身を誇り、日本人離れしたスケールが魅力だ。潜在能力の高さで言えば、同じ世代で1、2を争う存在と言える。現状で安定感に乏しい面はあるが、そのあたりの課題をクリアできれば大きく飛躍することも期待できる。
竹山と畔柳はともに愛知県でしのぎを削った右腕で、最速150キロを超えるスピードが武器。竹山は太もも、畔柳は肘の故障を抱えて苦しんだ時期もあったが、好調時のストレートは目を見張る威力がある。
花田はなんと言ってもフォームの完成度が素晴らしい。センバツ後の肘の故障でノースロー調整が続くも、夏の甲子園では復調をアピールした。細い体を大きくすれば、楽に球速150キロを超えるボールを投げられるような雰囲気を持つ。
そしてサウスポーをみると、木村と松浦が肩を並べている。ともに大型の左腕ながらコントロールがしっかり安定しており、試合を作る能力が高い。左投手が不足している球団が、上位で獲得を目指す可能性も十分に考えられるだろう。
“春の優勝投手”の評価は…?
注目の左腕と言えば、羽田慎之介(八王子)と石田隼都(東海大相模)もそこに続く。
190センチの長身を誇る羽田は、サイドに近い腕の振りから140キロ台後半のストレートを投げ込む好素材。直球には目を見張るような勢いがあるが、この夏は肘を故障して一度も登板できず、スカウト陣に怪我の回復具合をアピールすることができなかった。それでも、春に投げていたボールの勢いは圧倒的。器の大きさに期待を込め、指名に踏み切る球団が出てくる可能性もあるだろう。
石田はご存じの通り、春のセンバツの優勝投手。5試合に登板して無失点という圧巻のピッチングを見せ、東海大相模を10年ぶり3回目の優勝に導いた。ところが、夏の神奈川県大会はチームが新型コロナウイルスで出場を辞退するという不運もあって、最終学年でのアピールは不十分に終わってしまった。現時点で進路は明らかになっていないが、もしプロ志望であれば、春の実績を評価して高い順位で指名する球団も出てくるはずだ。
他の候補をみると、右投手では田中楓基(旭川実)、黒田将矢(八戸工大一)、滝口琉偉(日大山形)、深沢鳳介(専大松戸)、堀越啓太(花咲徳栄)、市川祐(関東一)、寺嶋大希(愛工大名電)、中西聖輝(智弁和歌山)、山本大揮(九州国際大付)、京本眞(明豊)。
左投手では秋山正雲(二松学舎大付)、井上透摩(金沢龍谷)、泰勝利(神村学園)といったところ。彼らも支配下での指名が十分に狙える位置にいる注目株だ。
このように、トップの3人以外にも楽しみな選手が非常に多く、今年のドラフト戦線は高校生投手が中心となる可能性が高いといえる。今から10月11日の本番が楽しみだ。
☆記事提供:プロアマ野球研究所