リーグ内の移籍であれば成績は引き継ぎ
今月15日に掲載した「打率と盗塁でMLBトップの成績なのに…“無冠”が確定しているマルテが奮闘中」という記事で、アスレチックスのスターリング・マルテを取り上げた。
今季の開幕をナ・リーグのマーリンズで迎えたマルテは、7月下旬にア・リーグのアスレチックスに移籍。リーグを跨ぐ移籍だったため、どちらのリーグでも規定打席に達することができず、シーズン通算の成績でリーグ最高の打率を残したとしても、首位打者に輝くことはないということを紹介している。
そして今回取り上げるのが、その“逆パターン”?とも言える注目ポイント。
マルテと同じシーズン途中に移籍をしたのだが、移籍した先が同一リーグのチームだったため、個人タイトル獲得の可能性を残しているというケース。
今年はそんな選手が3人もいるのだ。
地区首位ジャイアンツを猛追するドジャースの中心
まずは、現在ドジャースに所属する2選手だ。
独特のフォームから投げ込む剛速球は日本でも有名。今年で37歳となったマックス・シャーザーは、トレード期限ギリギリの7月下旬にナショナルズからドジャースに移った。
移籍前も8勝4敗、防御率2.76と安定していたが、移籍後はさらにギアアップ。ドジャースでは7勝0敗、防御率1.43と圧巻の投球を見せている。
シャーザーの今季通算の防御率は2.28。これは2.29のコービン・バーンズ(ブリュワーズ)を僅かに抑えてナ・リーグ1位である。
もし、シャーザーの移籍先がア・リーグのチームであれば、規定投球回に届かず、最優秀防御率のタイトル獲得はあり得なかった。
さらに、シャーザーは現在のところ奪三振数でもリーグ2位につけており、二冠奪取の可能性も残っている。ベテランの投球から最後まで目が離せない。
そのシャーザーとともに、ナショナルズからドジャースに移籍したのが内野手のトレー・ターナーだ。
現在の打率.3222はナ・リーグトップ。元チームメートで打率.3216のフアン・ソト(ナショナルズ)と、激しい首位打者争いを繰り広げている。
また、ターナーは安打数と盗塁数でもリーグトップと絶好調。もし、この3つのタイトル獲得に加え、残り1週間で地区首位のジャイアンツを逆転する立役者となれば、ナ・リーグMVPの声も聞こえてきそうだ。これも全て同一リーグ内の移籍だったことが幸いしている。
70年ぶりの快挙も…?
最後は、現在ナ・リーグ最多打点をたたき出しているアダム・デュバル(ブレーブス)について。
2018年途中から昨季までブレーブスで中軸を担っていたが、オフにFAでマーリンズに移籍。ところが、7月下旬に古巣ブレーブスへとトレードで出戻り。今季の通算打率は.232と高くないが、勝負強い打撃で2位に8打点差をつけている。
また、38本塁打はリーグトップのフェルナンド・タティスJr.と3本差。打撃二冠の可能性も消えていない。奇しくも7月までマーリンズでチームメートだったマルテとは対照的な現状となっている。
このように、今季途中にリーグ間移籍を果たした3選手に個人タイトル獲得の可能性があるが、これは非常に珍しい出来事だ。
直近では2015年にタイガースとブルージェイズに在籍したデビッド・プライスがア・リーグの最優秀防御率を記録したが、打撃三冠に限れば1951年まで遡らなければいけない。
レギュラーシーズンも残り1週間。奇しくもシャーザーとターナー、そしてデュバルの3選手は地区優勝争いの真っ只中で、個人記録を気にする余裕はないだろう。
162試合目を戦い終えたとき、初めて個人タイトル獲得に気づくことになるかもしれない。
文=八木遊(やぎ・ゆう)
(※数字はすべて現地26日現在)