忘れてはならない独立リーグの注目株
週が明けると、いよいよやってくる“運命の一日”…。
今年は10月11日(月)に開催されるプロ野球のドラフト会議。これまでもカテゴリー別にドラフト候補をまとめてきたが、今回も近年多くのNPB戦士を輩出しているルートインBCリーグから注目株を紹介したい。
9月23日~24日の2日間、ジャイアンツ球場で行われたのが巨人三軍とBCリーグ選抜の交流試合。
BCリーグの選手たちにとって、迫ってきたドラフト会議に向けた最後のアピールの場となる。
スタンドには多くのスカウト陣も視察に訪れたが、ここではその中で特に目を惹いた野手を取り上げる。
外野手不足の球団は注目!
この日、最も結果を残してアピールした選手といえば、「4番・右翼」で出場した信濃の岩田幸宏(24歳/外野手)だろう。
東洋大姫路高を卒業後は、社会人のミキハウスで4年間プレー。昨年から信濃に入団すると、今年は打率.357に29盗塁と見事な成績を残した。
一死一・三塁のチャンスで迎えた第1打席では、巨人先発の木下幹也のストレートをレフト前に弾き返して先制の適時打を放つと、すかさず盗塁もマーク。
さらに第2打席はショートへ、第3打席はセカンドへの内野安打を放ち、4.00秒を切ればかなりの俊足とされる一塁到達タイムは最速「3.86秒」を計測している。
抜群の脚力がありながら、決して当てにいくようなスイングにならず、強く振り切れるのが持ち味。膝を柔らかく使って縦の変化球にも対応し、簡単にアウトにならない。第1打席の適時打も、木下の決め球であるフォークをファウルにした後のストレートをきっちりととらえたものだった。
リーグ戦では2年間で本塁打が0と長打力には少し課題が残るものの、守備でも動きの良さと素早い返球が目立つ。外野手が手薄な球団にとっては、非常に魅力的な選手と言えるだろう。
上林誠知の元チームメイトもアピール
岩田と同じリードオフマンタイプの選手で存在感を示したのが、1番で出場した福島の菊名裕貴(26歳/二塁手)だ。
仙台育英高では上林誠知(現・ソフトバンク)と同期で、3年時には春夏連続で甲子園に出場。東北福祉大4年の春にはベストナインにも輝いている。
大学卒業後は社会人野球のバイタルネットでプレー。昨年から福島に入団すると、今年はリーグ4位の打率.358をマークしている。
なかでも目立ったのが、シャープなスイングとスピード、そして積極性だ。
第1打席には初球のストレートをいきなりとらえ、右中間にライナーで運ぶ二塁打を放ってチャンスメイク。8.00秒を切れば俊足といわれる二塁到達タイムは「7.81秒」をマークした。
一死二・三塁で迎えた第2打席でも再び初球を振り抜き、結果はライナー性の右犠飛。第4打席も、この日最速149キロをマークした巨人2番手・山﨑友輔のボールに振り負けることなく、鋭いライナーでライト前に運び、マルチヒットを記録している。
セカンドの動きも軽快そのもので、堅実さとスピードを兼ね備えている。今年で26歳という年齢を考えるとドラフト指名のハードルは高いかもしれないが、今年は全体的に二遊間の候補が少ないだけにチャンスはありそうだ。
右の強打者タイプにも注目候補
希少な右の強打者タイプでは、栃木の石川慧亮(19歳/外野手)と茨城の山中尭之(23歳/外野手)が面白い。
石川は昨年、東京ドームで行われたプロ志望高校生合同練習会でも柵越えを連発した若き強打者。
独立リーグに進んで1年目の今年は、怪我で離脱した時期もあって34試合の出場にとどまったが、3割を超える打率を残すなど力のあるところを見せている。
この日は「7番・指名打者」で出場。第1打席に死球を受け、安打は第3打席の内野安打だけだったものの、力強いスイングは目に付いた。加えて、高校卒1年目という若さは大きな魅力である。
山中はつくば秀英高-共栄大で中軸として活躍。182センチ・96キロという体格は外国人選手を思わせるたくましさがあり、1年目の今年はリーグ3位となる11本塁打を放っている。
この日は6回からの出場だったものの、最初の打席で今季一軍登板もある沼田翔平からレフトオーバーの二塁打。打ったボールは追い込まれてからの外のスライダーで、わずかに泳がされる完璧なスイングではなかったが、それでも打球はレフトフェンスを直撃するなど、インパクトとリストの強さは特筆すべきものがある。
石川、山中ともに守備・走塁は課題となりそうだが、貴重な長距離砲候補としてリストアップする球団が出てくることも考えられるだろう。
投手と比べると、野手への評価は厳しいものがありそうだが、巨人の三軍投手陣を相手に12安打を放って試合も勝利をおさめるなど、大きなアピールとなったことは間違いない。
ここで取り上げた選手が一人でも多くドラフトで名前を呼ばれることを期待したい。
☆記事提供:プロアマ野球研究所