再出発した矢先に…
密かに期待していた“昇格”は、幻に終わってしまった。
嘆息の知らせが球団から届いたのは24日。「北條選手について」と題された報道陣への配信メールには、左肩を負傷していた北條史也が大阪市内の病院で手術をし、無事に退院したことが記されていた。
何度も読み返してしまったのは、文末にあった本人のコメント。
その性格を知るからこそ、筆者には無機質な文字の羅列でも自身への怒りや無念さがにじんでいるように見えた。
「この大事な時期にけがをしてしまい、チームに貢献することができずに本当に悔しいです。また、全力でプレーしている姿を皆さんに見てもらえるように一日一日全力で野球に取り組んでいきたいと思います」
アクシデントに見舞われたのは、今月18日のみやざきフェニックス・リーグのDeNA戦だった。
二塁守備で一二塁間の打球に飛びついた際に負傷。痛みに強い男が、顔をゆがめながらベンチへ下がった。
9月15日に行われたウエスタン・リーグのソフトバンク戦でも、三塁ファウルゾーンのフェンス際で捕球を試みた際に左肩を痛めており、診断結果は「左肩亜脱臼」…。
ようやく実戦復帰した矢先の“再発”だったのだ。
チームに欠かせないムードメーカー
3年前から数えれば、もう3度目になる。
2018年9月14日のヤクルト戦でも、遊撃で三遊間のゴロにダイビングした際に激痛が走り、その場に倒れ込んだ。
甲子園に悲鳴が響くなか、担架に乗せられて退場。「左肩亜脱臼」でギプス固定を余儀なくされ、そのシーズンを終えた。
リハビリを終えて完治はしたものの、翌年もダイビングキャッチやハーフスイングした際に左肩に痛みを覚えるなど、不安を抱えながらプレーをしてきた。
それからちょうど3年が経過した日に、再び悪夢が襲った。
9年目の今季は開幕一軍にも名を連ね、代打や守備固め、そしてベンチ内では“声出し役”として貴重なムードメーカーとなっていた。
ナインの士気を上げる大きな存在。矢野燿大監督も度々、北條の名前を口にして貢献度の高さに目を細めていた。
一方で、レギュラー争いに顔をのぞかせることはできず、3度の降格も味わい、9月2日に出場選手登録を抹消されて以降は二軍でプレー。故障が癒えて参戦したみやざきフェニックス・リーグでアピールを続けていた。
筆者は、11月から始まるクライマックスシリーズで再昇格することを期待していた。満を持して、背番号26が短期決戦のグラウンド、ベンチで躍動することを…。
だからこそ、余計に辛い知らせになった。
キャリアで初めての手術。再び固定器具を装着し、これからは地道なリハビリが待ち受けている。
来季、帰ってきた北條史也の逆襲の叫びを目の当たりすることを信じ、完全復活を願う。
文=チャリコ遠藤(スポーツニッポン・タイガース担当)