“伝統の一戦”がCSファーストステージで実現
143試合目で優勝を逃した2位・タイガースは、6日から3位・ジィアンツと甲子園でクライマックスシリーズ・ファーストステージを戦う。
今季、13勝9敗3分で14年ぶりにシーズン勝ち越しに成功している宿敵を本拠地・甲子園で迎える「2021年最後の伝統の一戦」で日本一へ向けて再スタートを切る。
巨人に2戦2勝の高橋遥人が第1戦先発の大本命
3試合制の短期決戦。ファーストSでは上位球団のアドバンテージはなく、即王手をかけられる初戦の占める重要性は大きい。
リーグ覇者のスワローズに挑戦するファイナルステージも見据えながら、12球団屈指の陣容を誇る先発ローテーションの中で誰を1戦目に起用するかに注目が集まる。
青柳晃洋、秋山拓巳、伊藤将司の2桁勝利トリオが控えるなかで、大本命は高橋遥人で間違いない。故障で出遅れながらも、9月に昇格を果たすと7試合で4勝(2敗)、防御率1.65。圧倒的なパフォーマンスで熾烈な優勝争いを演じるチームに貢献した。
特筆すべきは、巨人戦での無双ぶり。2試合に登板し9月25日のプロ初完封を含む2戦2勝、計16イニングで無失点、被安打6、24奪三振と非の打ちどころがない内容で、相手にとって脅威の存在でしかない。
唯一の不安材料を挙げるなら、10月21日の中日戦で左肘の違和感を訴えて大事を取って降板しており、万全のコンディションで本番を迎えられるか。調整登板を挟まず“ぶっつけ”で本番に向かいそうだ。
2戦目以降も最多勝の青柳、終盤に好調をキープした伊藤将が控えており、先発陣の安定感はジィアンツを上回る。シーズン順位が上で、1勝1敗1分でも勝ち上がれるだけに、競った場合でも岩崎優、ロベルト・スアレスと盤石の勝ちパターンで引き分けに持ち込めることも大きいだろう。
開幕時のオーダーの「復活」が打撃陣のカギ
打線はベストオーダーが組めるかが鍵を握る。1番でけん引してきた近本光司が、右ハムストリングを負傷してレギュラーシーズンラスト3試合を欠場。リーグ最多安打のリードオフマンの不在は得点力に大きく関わってくる。
加えて中軸に目を移せば、シーズン最終戦は糸原健斗、ジェフリー・マルテ、大山悠輔で3~5番を形成。3人ともに開幕時とは違う打順で、開幕戦で5番に座り、2ホーマーを放ったジェリー・サンズは極度の不振に陥り、今も2軍で調整中で、10月は打率1割台に沈んだマルテの復調も待たれる。
好材料は、10月24日の広島戦で66日ぶりの本塁打を放った佐藤輝明。新人離れしたパワーと存在感で前半戦を引っ張った「怪物」が、初体験の短期決戦で完全に“お目覚め”となれば、1勝以上の勢いをチームにもたらすことは容易に想像できる。
近本、中野と2人で54盗塁の機動力も駆使して得点機を演出してきた2人が年間通して好調だっただけに、後半戦は大山、サンズ、マルテ、佐藤輝と還す役割を担う打者の不調が響いた。下位も含め、どこからでも得点を生み出した開幕時のオーダーの「復活」なるか。瞬く間に天国と地獄が分断される戦いがいよいよ始まる。
文=チャリコ遠藤(スポーツニッポン・タイガース担当)