大学球界の大注目スラッガー
昨年も多くのアマチュア野球選手を取り上げてきたプロアマ野球研究所のコラム。
2022年も引き続き、有力なドラフト候補選手を積極的に紹介していきたい。
昨年のプロ野球は両リーグあわせて6名の「新人特別賞」受賞者が出たように、近年はプロ1年目からレギュラー級の活躍を見せる選手も少なくない。
特に牧秀悟(DeNA)や佐藤輝明(阪神)のセンセーショナルな暴れっぷりで“大砲”の価値が高まる中、次のドラフトに向けた注目の“大砲”候補が大学球界にいる。
逸材揃いの大学生野手の中でもNo.1の呼び声高いのが、早稲田大学の蛭間拓哉だ。
▼ 蛭間拓哉(早稲田大)
・新4年
・外野手
・176センチ/87キロ
・左投左打
・浦和学院
<リーグ戦通算成績>
43試 率.275(142-39) 本10 点30
打席158 二塁打10 三塁打1 四死球15 盗塁6
出塁率.342 長打率.570 OPS.912
<各塁へのベスト到達タイム>
一塁到達:4.05秒
二塁到達:8.04秒
早慶戦の歴史に残る2発
浦和学院では1年時から中軸としてプレーし、3年夏には渡邉勇太朗(西武)らとともに甲子園に出場。初戦の仙台育英戦で本塁打を放ち、大会後に行われたU18アジア選手権でも日本代表として活躍を見せている。
早稲田大でも1年秋からレギュラーとなり、2年春からは中軸を任せられているが、強烈なインパクトを残したのは2年秋の早慶戦だ。
引き分けの時点で慶応大が優勝となる展開だったが、第1戦では同点の7回裏に木澤尚文(現・ヤクルト)から決勝の2ランを放つと、続く第2戦でも1点ビハインドの9回表に生井惇己(新4年・慶応高)から起死回生の逆転2ランをバックスクリーンに叩き込んで見せたのだ。この2本の本塁打は、早慶戦の長い歴史の中でも代々語り継がれるものになるだろう。
本格的にレギュラーになったのが2年春からということもあって、これまでの通算安打こそ山田健太(立教大/62本)や下山悠介(慶応大/57本)、宮崎仁斗(立教大/42本)、中川卓也(早稲田大/41本)に次ぐ現役5位の39本にとどまっているが、本塁打に関してはこの秋に引退した4年生を含めても、正木智也(慶応大→ソフトバンク)と並ぶ10本を既にマークしている。
驚異的な長打力
また、39安打の内訳を細かく見ても、二塁打が10本に三塁打が1本、そして本塁打が10本と、その半数以上が長打となっている。これは驚異的だ。
高校時代と比べても明らかに体つきは大きくなっており、タイミングをとる動きに全く無駄が感じられない。さらに、本塁打の打球方向を見ても、レフトに5本、センターに1本、ライトに4本と広角に打ち分けている。安定して長打を打てるという点では、佐藤輝明(阪神)の大学時代を上回っていることは間違いないだろう。
3年秋のリーグ戦は打率.220で1本塁打と厳しいマークの中で少し成績を落としたが、その汚名を返上したのが、昨年12月に行われた大学日本代表候補合宿だ。
3試合行われた紅白戦では、7打数5安打と全国から集まった好投手を相手に見事な結果を残し、スタンドに陣取ったスカウト陣にアピールしたのである。
この5安打もレフトへ2本、センターへ1本、ライトへ2本ときれいに打ち分けており、普段対戦のないピッチャーに対しても高い対応力を見せた。
50メートル走で5.93秒という俊足
また、目立ったのはバッティングだけではない。初日に野手全員で行った50メートル走でも、全体で4番目となる5.93秒というタイムをマークした。
一昨年の合宿では手動での計測ということもあって5秒台を記録する選手が多かったが、今回はスタートのタイミングこそ選手任せとはいえ、光電管を使用しての計測ということもあり、その信憑性は高い。
これまでに実戦で計測することができた各塁への到達タイムもまた、高水準をマークしており、スピードに関しても大学球界でトップレベルと言えるだろう。
肩の強さは特別に目立つものがあるわけではないが、これだけの長打力と脚力を備えた選手はなかなかいない。プロでも中軸を打てるだけの潜在能力が感じられるだけに、春・秋のリーグ戦で順調に結果を残すことができれば、野手の目玉候補となる可能性は高いだろう。
☆記事提供:プロアマ野球研究所