コラム 2022.01.19. 17:30

突然のトレードを機に便利屋から勝利の方程式へ 新天地で飛躍した国吉佑樹

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12月24日の契約更改で掲げたのは「アップグレード」 (C) Kyodo News

横浜戦士の唐突な別れ


 ベイスターズから国吉佑樹がいなくなる…。

 トレード成立の報が流れた6月14日のランチタイム。古参のみならず、多くのベイスターズファンはその現実が受け止められずにいた。




 暗黒時代真っ只中の2009年、筒香嘉智らと同じドラフトで育成1位指名を受けて横浜ベイスターズに入団。

 2010年シーズン途中に支配下登録を勝ち取ると、ローテーションに入り初勝利を挙げ、翌年は開幕一軍で完封勝利を飾るなど、投壊していたチームの希望の光となった。

 その後は一軍に定着できず、中継ぎに先発と役割も安定しない苦難の時代が訪れたが、2017年の大家友和コーチとの出会いと、2019年オフのオーストラリア武者修行で一気に才能が開花。長い期間、紆余曲折を経て一軍の欠かせない戦力となった。



 田中健二朗と2人しか残っていないベイスターズ時代からの戦士。モップアッパー、回跨ぎの連投から、痺れる場面まで腕を振り続けた存在が横浜を離れる…。いつも見られるはずの最速161キロの剛球が、突然遠いものに感じられた。

 その気持ちは本人も同じだった。「10年以上在籍して育ててくれた球団。歳の近い仲の良いピッチャーもたくさんいるので…」と、寂しさが込み上げた。

 トレード直後、特に仲の良い三嶋一輝は「もっと一緒に野球がしたかった」としみじみ語るなど、チームにも衝撃が走った。


知らせは交流戦後に


 ベンチを外れながらもチームに帯同していた6月11日からの札幌3連戦を終え、飛行機は羽田に到着。すると、マネージャーから「あす球団事務所に行ってくれ」と、突然告げられた。

 「トレードか…それともなにか悪いことしちゃったかな」と思案しながら球団事務所へ足を運ぶと、球団代表からロッテへのトレードが伝えられる。

 「覚悟はできていましたけど、ビックリしましたね」と、当時を振り返った国吉。「発表するまでは誰にも言わないでくれ」と釘を差され、事務所をあとにした。


 発表後は二軍施設の追浜で別離の挨拶。三浦大輔監督からは「求められて行くんだから、しっかりやれよ」と激励され、チームメイトからも次々と惜別の言葉が送られた。

 そんな中で「クワ(桑原将志)だけは『バイバーイ』って手を振っていた(笑)」と場を温めたが、全体的に重い雰囲気の中、プロとしての“いろは”を叩きこまれた横浜・横須賀の地に別れを告げた。


新天地での飛躍


 「2〜3日は切り替えるのに時間がかかりましたね」と、ベイスターズに心残りはあったものの、住居のある横浜から比較的近い千葉という立地もあり、新天地での活躍を意に決した。

 そして、与えられたポジションは勝利の方程式の一角。「横浜では7回から9回がしっかりとしていたので、“いつでもどこでも行ける”のが持ち味でやってきた」右腕は、故障者が出たロッテのチーム事情もあり、便利屋からセットアッパーへ。

 「なんでも屋を評価してもらって、“欲しい”と言ってもらえた」と、横浜での奮闘ぶりを評価してくれたロッテへの想いと、「初登板のとき、ファンから大きな拍手で迎えていただいてホッとした。本当に嬉しかった」と、12球団を見渡してもトップクラスの熱狂的なファンに受け入れられたことが発奮材料につながった。

 新しい役割にも、「正直、7回って決まっているのはやりやすい」と述べ、ピッチングスタイルに関しては「ストレートの割合を増やしたので、それとともにカットの曲がりを大きくした」程度で、大幅なモデルチェンジはしていない。

 それでも、後半戦だけで25試合に登板し、2勝2セーブ・17ホールド。防御率は1.44と、ベイスターズでの前半戦の防御率5.16から劇的に良化させた。

 「吉井コーチも連投を加味してピッチャーを守ってくれる上に、起用法をきっちり明確にしてくれる。(佐々木)千隼とか益田(直也)さんとも仲良くなったし、横浜のブルペンと同じくらい雰囲気はいい。益田さんの代わりにセーブをあげたときは『ありがとう』と言っていただいたりもした」と、ロッテの新しい環境も自身の活躍を後押しした。


濃密な1年から勝負の2年目へ


 終盤戦に見せたオリックスとのデッドヒートには、「みんなが築き上げてきたものを壊すわけにはいかない。今までに経験したことのない緊張感があった」と、途中入団ならではのプレッシャーもあったことを吐露。

 そういった状況の中で「4つ勝てば優勝とか、本当に良い経験をさせてもらった」と、レギュラーシーズンを振り返ったが、クライマックスシリーズの初戦では制球が定まらず「ボロボロだった」と唇を噛む。

 それでも、「エチェバリアのホームランに救われた」というように、直後に飛び出した味方の援護に感謝。そのお陰もあって「リベンジに成功できた」と、翌日の見事な火消しに繋げ、「良い形で終われた」と濃厚な1年のラストには一定の満足感を示した。


 今年掴んだセットアッパーのポジションにも、「また競争なので、しっかり勝ち取っていきたい」と慢心はない。そのために、オフも「新たに身体の出力を効率よく使うためのトレーニング」を敢行するなど、横浜時代から常にレベルアップを図る姿は不変だ。

 新天地での2年目となる今季に向けては、「ロッテの一員として、より多くの試合で貢献できるように、トレーニングには取り組んでいる。ワクワクしてシーズンに臨みたい」と希望に満ちている。

 黒のピンストライプのユニフォームもすっかり板についてきた“進撃のクニ様”。横浜から東京湾を越えて辿り着いた幕張の地で、52年ぶりとなる勝率1位での優勝を果たすチームの重要なピースとなる。


取材・文=萩原孝弘(はぎわら・たかひろ)



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