昨季の反省を活かして…
キャリアの大きな分岐点にする。阪神タイガースの岩貞祐太の肉体が変わりつつある。
「体脂肪率も変わりましたし、(変化の)実感はかなりありますね」
30歳にして、今オフから本格的にウエートトレーニングに取り組み始めた。
「昨年は疲労が溜まって完全に終盤は出力不足だった。そこを筋力で補おうという考えです。30歳になって回復力というのも落ちてくると思うので、そこを筋力でカバーできたら。シーズンで安定した投球を続けられるように。良い、悪いの波を減らせるように基礎体力を上げていきたい」
意志はあっても、ノウハウがない状態の左腕。そこで頼ったのが、元ソフトバンクの馬原孝浩氏(火の国サラマンダーズ監督)だった。
新たな引出しになった“馬原メソッド”
熊本・必由館高校の先輩で、現役引退後に「柔道整復師」と「鍼灸(しんきゅう)師」の国家試験に合格。トレーナーに転身したその道のスペシャリストだ。
昨年12月から福岡に出向き師事しており、「今までウエートをあんまりやってこなかったので(やったことでの)変化という恐怖もあったりしながらだった。今回はそういう馬原さんのような知識のある方に教えてもらいながら、自分で納得しながらできている」と充実感を口にした。
質・量だけでなく納得感もあるメニューを消化しながら、馬原氏からは肩肘のケア法なども伝授された。年間戦う上で、故障防止への備えになる。
「(ケア法は)本当に全部違うというか全部新しいもので。本当に効果的なものばかり」と、ケガに苦しみ現役時代から「ケアに没頭した」という同氏が行き着いた“馬原メソッド”が、岩貞の新たな引き出しに。
自主トレ期間中も実践し、肩の状態は「ここ数年で一番良い」と言い切った。
中継ぎ2年目の今季、問われる真価
30代に突入し、中堅と言われる年齢になった。あえて肉体改造に動いたのも、昨季の悔恨と雪辱の思いがあるからだ。
開幕時は勝ちパターンの7回を任されながら、本格転向した中継ぎへの対応に苦しみ、46試合で防御率4.66。ブルペンで肩を作りながら出番がない日も少なくなく、登板数に現れない疲労の蓄積がパフォーマンスに影響した。
中継ぎの洗礼を浴びた形にはなったが、この経験をプラスに転化する決意。昨年の自身にはなかった安定した出力を維持できる筋力と、故障や離脱を防ぐケア法が、中継ぎ2年目を迎える背番号17の本領発揮を呼び込む。
今季のブルペン陣は、守護神ロベルト・スアレスが退団したことで大きな穴が空いた状況だ。同期入団の岩崎優とともに「勝利の方程式」を担いたい。
「先発から中継ぎに入って、そういう場所をやるために中継ぎに入ったと思っているので。そういう気持ちをずっと持ってやっている」
タイガース時代から「師」と仰いできたオリックスの能見篤史と、今年は合同自主トレを行わなかった。
肉体を変えることにひたすら時間を注ぎ込んだこの1月。変身を遂げた岩貞の逆襲が始まる。
文=チャリコ遠藤(スポーツニッポン・タイガース担当)