一時はメジャー断念の可能性も…
筒香嘉智にとって、メジャー2年目の昨季は激動のシーズンとなった。
1年目と2年目の成績を比較すると、出場試合数こそ違うが、打率・出塁率・長打率はほぼ同じ。ただし、シーズンの前後半で雲泥の差があった。
開幕はレイズで1番打者としてスタート。シーズン初安打に4試合を要するなど、なかなか調子は上がらなかった。
チームは我慢強く起用を続けたが、打率は1割台を低空飛行。徐々に出場機会も減少し、5月中旬に40人枠から外されると、数日後にドジャースに移籍した。
初のナ・リーグとなった新天地でも打撃は一向に復調せず、故障を経てマイナーに降格。3Aで結果を残してメジャー昇格を狙ったが、結局8月中旬には3Aチームからも契約を解除されてしまった。
これでメジャー再起の道は閉ざされた…と思われたが、数日後にパイレーツと契約。筒香はこのチャンスを逃さなかった。
移籍後最初の試合は古巣・ドジャースが相手。9回に代打で起用されると、守護神ジャンセンから二塁打を放ち、一発回答に成功。さらに移籍4試合目でシーズン初本塁打が飛び出すと、8月は14試合で5本塁打を放って終えた。
その後も若手中心のチームにうまく馴染み、2番やクリーンアップを任され、主軸として活躍。結局パイレーツでは43試合で打率.268、8本塁打、25打点という成績を残した。
ただし、好調だったのは加入後の約1か月間だけで、9月下旬以降の12試合では打率.190、0本塁打に終わっている。それでも、11月にはパイレーツと新たに1年契約を結び、レギュラー定着を目標にメジャー3年目を迎える。
「バレル率」は低下も…
改めて筒香がこの2年間で残した成績を見ながら、今回は「バレル率」という数値を振り返っておきたい。
バレルとは「打球の初速と打球角度の理想の組み合わせ」を指し、バレルに当てはまった打球は高い確率で本塁打もしくは長打になると言われている。バレル率というのは、全打球のうちどれくらいの割合が"バレル”の当たりだったかを表す。
レイズ時代の2020年に筒香が残したバレル率は9.3%(10/108)だったが、3球団を渡り歩いた21年はこれが6.9%(11/160)に低下。11本あったバレルのうち、10本がパイレーツ所属時のものだった。
では、なぜパイレーツで成績を上げることができたのか…?
最大の要因は、「速球を打てるようになった」ことだろう。
球種別の成績を見ると、ストレートに対する打率は2020年の.159(88打数14安打)から、2021年は.225(138打数31安打)に上がっていた。
特にパイレーツでは打率.263(76打数20安打)で、シーズン終盤には相手投手も筒香に対して変化球を投げる割合も増えている。
浮き沈みを経て掴んだメジャー3年目のシーズン。30歳で迎える今季が、筒香の正念場と言える。
シーズンを通して安定した成績を残し、不動の地位を築くことができるだろうか。
文=八木遊(やぎ・ゆう)