コラム 2022.01.27. 18:12

DeNA・森敬斗は「横浜反撃」のキーマンとなれるか?【ネクストブレークの候補者たち】

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DeNA・森敬斗

最終回:DeNA・森敬斗、チームを変え得るピース


 今季のDeNAのチームスローガンが「横浜反撃」に決まった。

 三浦大輔監督にとって、就任1年目の昨季は屈辱の最下位。「今年は何が何でもやり返す」という番長の思いがストレートな表現となった。

 新スローガン発表の席には三浦監督のほかに、日本ハムから移籍した大田泰示選手と、3年目の飛躍が期待される森敬斗選手が出席。大田にはチームに新たな風を、森には遊撃のレギュラー獲りへの期待がかかる。地元、東海大相模出身の大田と同じく桐蔭学園出身の森。この人選には、反撃のキーマンになって欲しい思いと、地元熱の更なる盛り上がりへの願いが込められていたのだろう。

 三浦ベイスターズの前年の失敗は成績面からも明らかである。

 強打者揃いの攻撃陣は新人の牧秀悟選手を筆頭に桑原将志、佐野恵太、宮﨑敏郎の各選手が打率ベストテン入り、わずかに規定打席に達しなかったタイラー・オースティン選手も3割台の成績を残している。

 一方で、投手防御率4.15はリーグワースト。先発陣が不安定なうえに、山﨑康晃、三嶋一輝投手らの抑え陣も打ち込まれる試合が多く、手痛い逆転を許している。

 加えて、忘れてはならないのが、深刻な機動力不足だ。チーム盗塁31は12球団ワーストで、いくら塁上を賑わせても効果的に得点を重ねることは難しい。

 こうした“病巣”を踏まえたうえで、チームを変え得るピースとなるのが森の存在である。

「シングルヒットを二塁打に、左中間を抜けた当たりで三塁打に出来る男」と三浦監督が二軍監督時代から評価する。50メートル5秒7の俊足に加えて、遠投120メートルの強肩の持ち主。遊撃手として必要な条件を満たしているから首脳陣の期待も大きい。

 チームにとっても重厚な打線にあって、小回りの効く機動戦士は喉から手が出るほど欲しい。ほぼ先発メンバーが固定している野手陣にあって遊撃のレギュラーは過渡期にある。昨季は大和、柴田竜拓選手らと共に森も名を連ねたがどれも決め手に欠けた。ショートは守りの要であり、20盗塁以上を期待出来る森が定位置を確保できれば、これ以上の戦力アップもないだろう。

打撃の課題を改善しショートの定位置獲得へ


「悔しさの多いシーズンでした。チャンスをいただいたのにも関わらず、出来ないことがたくさんありました」と森は消化不良に終わった昨季を振り返る。

 プロ2年目の滑り出しは素晴らしかった。7月に一軍昇格すると、すぐさま「二番・遊撃」で先発出場した中日戦でマルチ安打を放つ。8月には初の1試合3安打も記録。前途洋々に思えたが、8月下旬から打撃不振に陥り、その後はシーズン終盤まで30打席無安打の地獄も味わった。終わってみれば44試合出場で打率は.194。自慢の脚も4盗塁で、守っても6失策。力不足と課題だけが残った。

 未完の大器には、キャンプを前にやるべきことが山ほどある。

 レギュラー獲りへ、大きな関門となる打撃面では上体の開きを直すことに腐心している。

「自分の状態が悪くなると、焦ってしまい、ゆっくりタイミングを取れなかった。そうなるとボールに食い込まれるので早く体を開かないと差し込まれる。でも逆に体が開いてしまうからバットのヘッドが出て来ない。完全な悪循環でした」。秋季練習では早出、居残りを繰り返して、修正に取り組んだ。守備面ではライバルでもある大和から「上半身に頼らず、下半身から送り込め」とアドバイスを受けている。こうした弱点が解消された時、レギュラーの座は視界に入って来る。

 喜びも、ほろ苦さも味わった昨季、森には大きな刺激もあった。牧のルーキー離れした活躍だ。年齢では3学年上の牧だが、新人史上初のサイクル安打や、長嶋茂雄、清原和博らに並ぶ3割プラス20本塁打以上の快記録を次々と打ち立てた。

「打撃はもちろん、野球に対する姿勢やチームへの声かけなど学ぶ部分が多かった」と語るが、近い将来の二遊間コンビは球団としても売り物にしたいところだろう。

 レギュラーとは自らの力で奪い取るものだ。しかし、チーム事情でぽっかりと穴が開いている時もある。巨人の坂本勇人選手は二岡智宏(現二軍監督)の故障離脱を機に高卒2年目から遊撃の座に就いた。森の現状もまた、定位置獲得へこれほどのチャンスはない。

 昨年はヤクルトが最下位から日本一まで駆け上がった。ベイスターズが同じ夢を叶えたいなら、前年を超すプラスアルファが必要となる。投手陣の奮起は当然として、野手の起爆剤となるのは森の成長だ。

 甘いマスクで女性の人気度はすでに主力級。お次は自らのバットと足と守備で主役の座を掴み取る番である。

文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

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