投手・大谷は好不調の波なく順調
2001年のイチロー氏以来、20年ぶり日本人2人目のシーズンMVPを受賞したエンゼルス・大谷翔平。
前回の打者編につづいて、今回は“投手・大谷”の2021年を振り返っていきたい。
メジャー4年目を迎えた昨季も、中6日の週1ペースでマウンドに登ることが多かった大谷。自己最多の23試合に登板し、9勝2敗・防御率3.18という成績を残した。
投手・大谷を1年目から改めて振り返ると、常に故障との闘いだった。1年目の2018年は10試合に登板するも、その年の秋にトミー・ジョン手術を受け、2019年は全休に。
新型コロナの影響で短縮シーズンとなった2020年は夏場にマウンドに戻ったが、右腕のケガなどもあって僅か2試合に投げただけだった。
二刀流の真価を問われた2021年は、開幕からローテーションを任されたが、今度は制球難に苦しむことに。最初の4試合は18回2/3で19四球(与四球率9.16)という深刻なノーコンぶりを露呈してしまった。
それでも、気温の上昇に伴い、制球難は徐々に解消。その後の19試合は111回2/3で、25四球(与四球率は2.01)と改善に成功した。
前回の記事で述べた通り、打者・大谷はオールスターを境に調子を落としたが、投手・大谷はシーズンを通して好不調の波がほぼなかった。
オールスター前後の成績を比較すると、前半戦の4勝1敗・防御率3.49に対し、後半戦は5勝1敗・防御率2.84。後半戦は投手として自身の打撃不振をかき消すパフォーマンスを見せた。
シーズン終盤に本塁打王争いとともに注目されたのが、2ケタ勝利を達成できるかどうか。
9月3日にシーズン9勝目を挙げると、達成は間違いないかと思われたが、結果的にその後に登板した3試合で白星をつけることができず。
ベーブ・ルース以来の「2ケタ勝利&2ケタ本塁打」は今季以降にお預けとなった。
光った“強気の投球”
昨季の投手・大谷が特に好投を見せる頻度が高かったのは、本拠地エンゼルスタジアムで登板したときだ。
敵地での3勝2敗・防御率5.02に対し、本拠地では6勝0敗・防御率1.95。地元ファンの前では13試合すべての登板を自責点2以下に抑える安定感を見せていた。
また、得点圏に走者を背負った状況で強気の投球が光った。
得点圏時の被打率は.122(90打数11安打)。ここぞという場面でギアを上げ、相手打者を抑え込むシーンは少なくなかった。
一方、改めて2ケタ勝利が目標となる今季に向けて課題を一つ挙げるとすれば、「左打者への対応」だろう。
昨季は右打者に対しての被打率は.178(230打数41安打)。しかし、対左打者となると.235(243打数57安打)。被本塁打は15本中12本が左打者に許したものだった。
今季は「左打者」への対策、そして敵地での成績を上げることができれば、10勝以上は確実だろう。
大きなケガなく1年を過ごすことができれば、15勝も夢ではない。
文=八木遊(やぎ・ゆう)