A組抜擢に応えアピールの日々
日本一奪回を目指すソフトバンクで、2020年ドラフト1位の井上朋也が評価をぐんぐんと上げている。
昨年の井上は一軍出場がなく、二軍でも45試合の出場で打率.246(122-30)、3本塁打の成績だった。高卒ルーキーとしてはまずまずの数字ではあるが、一軍戦力になるにはいくつもの階段を登る必要があった。
しかし、この春季キャンプでは、一軍に相当するA組からのスタート。柳田悠岐や松田宣浩といった長くレギュラーを張ってきた主力や、大砲候補であるリチャードが新型コロナウイルスの影響でリハビリメインのC組からスタートだったこともあるだろう。それでもA組に抜擢されたのは、藤本博史監督ら首脳陣から大きな期待を寄せられていることに他ならない。
井上は期待に応えるかのようにバットで結果を残す。紅白戦では本塁打を含む3試合連続で長打を放つなど大当たり。藤本監督や王貞治球団会長も井上を絶賛し、キャンプ終盤の第5クールがはじまってもB組に降格することなくA組に帯同し続けている。
守備面では粗い部分が見受けられるが、まだ19歳だ。日々成長する「若き才能」は、松田やリチャードとの三塁手のレギュラー争いに名乗りをあげてくるだろう。
中堅手候補に名乗り!開幕一軍へサバイバル
2019年ドラフト1位の佐藤直樹も、2月17日の紅白戦で2安打。そして、好走塁も見せるなどして、すぐさまB組からA組に昇格した。
佐藤は、昨シーズン途中から柳田が右翼にまわったことで空席となった中堅が現在の本職だ。中堅のレギュラーの座は空いてはいるものの、佐藤に当確ランプが灯っているわけでない。紅白戦で大きな一発を放った上林誠知やアベレージヒッターの柳町達、その他にも真砂勇介、牧原大成とライバルは多い。
2010年代以降、ソフトバンクは7度の日本一に輝き黄金時代を築いてきた。そのチームを主力として支えてきた松田は38歳となり、正三塁手という立ち位置ではなくなった。紅白戦やノックでも一塁の守備につくなど、試合に出るために複数のポジションを守る覚悟だ。
柳田も33歳。打撃こそ健在だが守備の負担を軽くする意味合いもあり、中堅ではなく右翼にまわった。そのふたりの後継者として、三塁手として井上、そして中堅手として佐藤が頭角を現してきたことは、チームにとって明るい材料である。
ここ数年のソフトバンクは、「世代交代」がテーマのひとつだった。しかし、2010年代を支えた松田や柳田ら主力選手たちを脅かす中堅や若手が出てこず、その世代交代がうまく進んでいなかったのが現実だ。そういった現状のなかで、若手では2年前に栗原陵矢がブレークしレギュラーの座を掴んだ。そこに、ドラフト1位コンビである井上や佐藤といった若い選手が続けば、チームはガラリと変わる。
とはいえ、一軍での実績がないふたりに、いきなりの松田や柳田と同等の活躍を求めるのは酷というもの。今年は一軍での出場を増やし、ブレイクのきっかけを掴むことが求められる。
まずは、実戦の機会で結果を出し続け、開幕一軍切符を勝ち取ることができるか。2020年代のソフトバンクを担う野手の誕生に期待したい。