高卒2年目右腕が見せた圧巻ピッチ
初めての本拠地マウンドで、竜の未来を照らした。
オープン戦最終戦となった3月21日のロッテ戦(バンテリンドーム)。先発マウンドに登った中日の2年目・髙橋宏斗投手(19)は、6回途中まで100球を当時、被安打2、失点1。16個のアウトのうち三振が11個という衝撃デビューを飾った。
「(本拠地は)かなり良い感じ。投げやすかったです。今の自分ができるピッチングはできたと思います」
試合開始から150キロ超の速球をこれでもかと投げ続ける。スタンドのざわつきが止まらない。5回一死、岡大海に中前打を許すまで無安打投球。毎回奪三振で三者連続も2度あった。
これには立浪和義新監督も「真っ直ぐに力がありました。きょうのピッチングをしてくれれば非常に期待は持てるかなと思います」と納得顔を浮かべた。
指揮官が初めて開幕ローテ入りに言及したのは3月10日のこと。ブルペン入りする右腕を見て、打席に入った。
「まだ悪いボールもありますが、指にかかったボールは素晴らしいと思います」と高い評価を口にし、「実戦に入って、緊張した中で、どれだけ投げられるか。そこだけですね」と語った。
この時、すでにオープン戦では投げていた。となると、立浪監督が指す「実戦」とはペナントレースのことか。
指揮官はすぐに「入ってくるんじゃないですか」と語った。この時点でローテ入りを明言していたのは開幕投手に内定していた大野雄大をはじめ、柳裕也、そして小笠原慎之介の3投手。背番号19のが4人目となった。
チームは右腕に登板間隔を空けて投げさせる方針。疲労回復と肉体強化を同時進行させる。潰さない、かといって、楽もさせない。昨季のヤクルト・奥川恭伸もそうだった。
3月3日のソフトバンク戦の次は、12日の春季教育リーグ・阪神戦。そこから中5日でロッテ戦。さらに、中8日。一軍デビューは本拠地第2戦の30日・DeNA戦とみられる。
昨季はセパで高卒2年目投手がブレイク「そのつもりで」
グラウンド内外で胸を張る。オフには福谷浩司に弟子入り。三重・津市のスポーツ整形外科「みどりクリニック」に通った。
意識するポイントのひとつが胸郭。柔軟性を高め、股関節からの連動でリリースに力を伝える。
「胸郭を使うことで肘への負担も小さくなります。もっと使えれば、もっとボールも速くなると思います」
昨季は速球限定の登板もあった。「あの時は150キロを打たれたら、155キロを投げてやればいいと思っていました。今では恥ずかしいです。同じ真っすぐでも球速や強さ、いろいろありますから」という。
昨季は上述した奥川や、パ・リーグでもオリックスの宮城大弥が高卒2年目でブレイクした。
「そのつもりでやります」
今季は髙橋宏斗の番だ。
春季沖縄キャンプでは、ブルペンを見守った新指揮官から「まだまだだな」と話しかけられ、「試合で結果を出します」と大見得を切った19歳。根性は据わっている。
開幕ローテも手にした。ここからは、未知のペナントレースで足跡を刻む。
文=川本光憲(中日スポーツ・ドラゴンズ担当)