大トリ登場で踏み出した第一歩
勝利も、ホールドも、セーブも付かない場面でも……。本人にとっては価値あるアウト3つだった。
3月27日、スワローズとの開幕3戦目の9回に登板したタイガースの浜地真澄。4点劣勢と敗色濃厚の展開で巡ってきたマウンドが、今季初登板だった。
その時点で一軍登録されていた投手11人の中で、出番がなかったのは右腕のみ。プロ2度目の開幕一軍入りを果たした23歳は“大トリ”で登場すると、今季に懸ける思いをしっかりとボールに込めた。
先頭で対峙した“代打の神様”・川端慎吾を150キロの直球で遊ゴロに仕留めると、塩見はカットボールでニゴロ。渡辺はカーブで空振り三振と、わずか10球で三者凡退。
チームは開幕3連敗といきなり重苦しい空気に包まれた中で、浜地は着実に2022年の“第一歩”を踏み出した。
「やるべき方向が見つかった」
その1週間前、ホークスのエース・千賀滉大のツイートがタイガースファンの間で話題になった。
3月20日のバファローズとのオープン戦。4連続四球を与えて炎上した小野泰己に対し、「4連続四球は経験者。この経験を活かして欲しい」などと励ましの言葉を送るとともに、「ところで浜地くんはどこで何してるんだろう。。。」と“所在”を心配。その後、同日に登板していたことを知ると「投げたみたいですね!よかったです!」と安堵していた。
浜地は、昨年から2年連続で千賀とともに合同自主トレを敢行。今年も拠点としていた沖縄・宮古島から帰ってきた後には、球界を代表するエースから助言を受けたことを明かしている。
きれいな縦回転の直球を投げるには利点の多いフォームだが、変化球が弱くなることを指摘されたといい、改良に着手。「言われた時には分からなかったんですけど、千賀さんに聞いていくうちに“そういうことなのか”と納得して。明確にやるべき方向が見つかったのかなと思う」と手応えを口にしていた。
具体的には、前に出すぎていた肘の位置の修正で、「そんなにすぐできるものではない。すごい難しい」と一朝一夕に完成するフォームでないことは本人の言葉からもうかがえるが、成果はヤクルト戦でも見て取れた。
直球はプロ入り最速の152キロをマーク。カットボール、カーブも勝負球に選択してアウトを奪取した。“千賀の一声”で開けた視界は、開幕を迎えても良好のようだ。
2019年には開幕ローテーション入りを果たすなど、先発として期待されてきたが、昨年は二軍でクローザーの経験も積んだ。今季はブルペンの一角として、一軍定着を狙う。
「ハマチ」と聞けば、アングラー(釣り人)はすぐにメジロ、ブリを連想してしまうのではないだろうか。体の大きさ、成長とともに呼び名が変わっていく出世魚として有名だ。
勝負の6年目。プロという大海をダイナミックに泳ぐブリを目指す、浜地真澄の戦いが始まった。
文=チャリコ遠藤(スポーツニッポン・タイガース担当)