4月連載:BIG BOSS 新庄日ハムの1カ月
BIG BOSSこと、日本ハムの新庄剛志監督が早くも苦境に立たされている。
7日現在、2勝9敗の最下位に加えて、チーム打率(.203)同防御率(4.16)共にリーグワーストでは「新庄劇場」も盛り上がらない。
「野球を変える!」「球場を満員にする!」と吠えて、奇抜な言動でも注目度ナンバーワンの新監督だが、目の前の現実は厳しい。戦前の評論家による順位予想でも圧倒的な最下位候補。
「ないない尽くし」のチームを、今後どう立て直し、逆襲に転じるのか?
ユニークな指揮官とその軍団の戦いを追ってみる。
第1回:戦力見極めの遅れが低迷を招く
BIG BOSS野球に、わずかながら光明が見えてきた。
6日に行われたロッテ戦は9回サヨナラ勝ちで2勝目をもぎ取った。最後は宇佐見真吾選手の放った浅い左飛をロッテの髙部瑛斗選手が判断を誤るボーンヘッド。決着だけを見れば手放しでは喜べないが、どんな形であれ白星は良薬になる。
新庄流の切れ味を見せたのは、その直前の9回無死一塁の場面だ。
セオリーなら手堅くバントで送る場面だが、BIG BOSSは強行策を選択、石井一成選手の一打は右前打となって一・三塁。これがサヨナラ劇の決め手となった。この日は期待の若手、野村佑希と清宮幸太郎選手に一発が生まれ、北山亘基投手に待望のプロ初勝利と「新庄チルドレン」が輝いた。
だが、これで弾みがつくかと問われれば、まだ疑問符はつく。それほど開幕からの10試合は迷走が続いた。
「遊びます」と勝敗度外視ともとれる発言でスタートした開幕カードのソフトバンクに3連敗。続く本拠地開幕の西武戦でも連敗は続いて初勝利は6戦目。開幕セレモニーではホバーバイクに乗って空中浮遊と、ど派手な新庄劇場もチームは浮上できない。その後にまた4連敗では専門家やファンの見る目が厳しくなっていくのは当然だろう。
中でも、迫力不足の打線を印象づけるのが「日替わりオーダー」である。開幕から11戦たっても未だに同じ打順で戦ったことがない。チームで唯一のレギュラー固定と言っていい近藤健介選手ですら、1日のオリックス戦では先発メンバーから外れて代打起用されている。
元中日監督の落合博満氏はテレビ番組で「選手の状態を見ながら打順を組み立てているのかも知れないが、ある程度は固定していかないと。打線と言うのは“線”だから、これじゃ“線”にならない」と首を傾げた。
投手起用でも不可解な点は数多くあった。
開幕戦でドラフト8位の北山先発は「奇襲」としても、翌日に予告先発の堀瑞輝や先発エース格の伊藤大海投手を中継ぎで起用。3月30日の西武戦では好投を続けていた加藤貴之投手が7連打を浴びて逆転負け。ベンチの用兵に批判が集まった。
オープン戦なら“ガラガラポン”と抽選機を回して打順を決めるのも笑えた。ソフトバンクとの開幕カードにベンチ入り全選手を起用したのも「全員が横一線」のBIG BOSS流と理解しよう。
だが、4カードを終えてまだ「日替わりオーダー」では、本当の戦う集団とは言えない。試行錯誤は、本来オープン戦の中盤まで。開幕直前にはどのチームも打順の骨格は決めて本番に臨む。それだけ戦力把握が遅れているからだろう。
打線の「核」ができれば今後に楽しみはある
昨年、長く4番を務めた中田翔選手がチーム内暴力沙汰で巨人に移籍。オフには西川遥輝(現楽天)大田泰示(現DeNA)らの主力打者も放出して誰の目にも戦力ダウンは明らかだった。それでも若手育成に舵を切ったのだから、現有戦力で戦うしかない。
ケガで出遅れた野村が戦列に戻り、清宮にも長距離砲の片鱗は覗き出した。そこに淺間大基、万波中正選手らが絡んで来れば、今後に楽しみはある。
要は首脳陣が打線の「核」をどう作り、チームを落ち着かせるかだろう。
「ファンは宝」と言う指揮官が一番、現状に悔しい思いをしているはずだ。一方で負け戦の中でも「日々、選手が成長してくれたらいい」とも語る。
理想と現実のはざまで辛抱の時が続く。
文=荒川和夫(あらかわ・かずお)