記録ラッシュの1年目を終えて…
広島・栗林良吏は、「2年目のジンクス」を乗り越えようとする姿から少年少女に伝えられるものがあると信じている。
「今年は野球の楽しさを伝えることができたと思います。来年も一人でも多くの子どもたちに野球を始めたいと思ってもらえるように頑張ります」。新人王受賞が発表された昨年12月、年間表彰式『NPB AWARDS 2021 supported by リポビタンD』の壇上で力強く誓った。
新人だった昨季は「野球の楽しさ」を伝えられる機会が何度も訪れた。
新人守護神として開幕から22試合連続無失点。これはプロ野球の歴代新人記録を大幅に塗り替える快挙だ。東京五輪の日本代表にも選出され、全5試合に登板して2勝3セーブ。胴上げ投手となり、金メダル獲得の立役者となった。
シーズン後半も主役は譲らず、計53試合に登板して0勝1敗37セーブ、防御率0.86。連続試合セーブで歴代2位の岩瀬仁紀氏(中日/2009年)に並び、年間セーブ数も山崎康晃(DeNA/2015年)の新人最多記録に追いつくなど、記録尽くしの一年となった。
「2年目のジンクス」は新人で活躍した選手の特権
自身は「野球の楽しさを伝えることができた」という理由をこう振り返る。
「五輪が一番大きかった。日本中が期待してくれる大会で金メダルを取れて、コロナ禍で外に出られない子どもたちにも投げる姿を見てもらえたと思う。そういう面で野球の楽しさは伝えられたと思います」
今年1月には、東京五輪の金メダルを見せてあげようと決めていた場所に向かった。中学時代に所属した軟式野球チーム「藤華クラブ」である。
選手たちの首に金メダルをかけて回り、一緒にノックを受けながら「野球は、とにかく楽しんでやればいいんだよ」と伝えた。
自身の影響で同クラブの知名度が上がり、新1年生の入団希望者があっという間に定員に達したと言う。
「例年以上に選手が集まってくれたみたい。僕も野球の楽しさを少しは伝えられていたのだな……って思えた」
小中学生の頃に学んだ野球の楽しさが「僕の原点」と断言する。だからこそ、学生時代からオフ期間に入る度に出身チームに出向いて練習参加を続けている。
昨年同様、少年少女にたくさんの笑顔を届けようと迎えた今季。開幕から調子が上がらず、今季登板3試合目となった2日の中日戦では、1点優勢の延長12回に登板するも、一死しか奪えずにサヨナラ負けを喫した。
それでも、そこからすぐに立て直した。今季初黒星後は3試合連続無失点と復調気配を見せている。
オフ期間から「どんな数字を出しても2年目のジンクスと言われると思います」と、自らに言い聞かせるように繰り返してきた。
たとえ防御率が悪化したとしても、目先の数字に惑わされることなく、チームの勝利だけに集中すると心に決めている。
「2年目のジンクス」との言葉がついて回るのは、新人で活躍した選手の特権。
この壁を乗り越えられれば、「野球の楽しさ」をより多くの子どもたちに届けられるに違いない。
文=河合洋介(スポーツニッポン・カープ担当)