節目の10年目は一進一退の日々
開幕から9連敗を喫するなど、タイガースはいまだ勢いづいていない。担当記者になって13年目、これだけ負けが込むのも初めての経験だ。
「次こそ」と締めくくる原稿ばかりで、虎番にとっても辛い日々が続く。そんな中、今こそ顔を見ておきたい選手が鳴尾浜球場にいた。
北條史也は記者を見つけるなり「また冷やかしに来たんすか。仕事してください」と“威圧”。ずっと変わらない恒例の挨拶があって少しほっとした。
高校時代からのライバル・藤浪晋太郎と同期入団で、プロ10年目を迎えた今季はリハビリ組でスタートした。
昨年10月の『みやざきフェニックス・リーグ』で左肩亜脱臼の重傷を負い、同月に手術を決断。メスを入れた時点で次のシーズンを故障者として迎えることは決まっており、術後には「来年の4月ぐらいに試合に出ることができたら」と口にしていた。
4月中旬。その実戦復帰の時は直前に迫っていた。だが、北條の表情は厳しい。
「プラン通りではないですね……もうちょっと早くというか。うん、そんなに……(順調ではない)」
打撃と守備で肩の動きや使い方はそれぞれ変わる。痛みや違和感が幾度となく生じ、2月の春季キャンプから一進一退でここまで来たことがうかがえる言葉だった。
完全復活への第一歩「徐々にやっていきたい」
4月23日、ウエスタン・リーグのオリックス戦。同点の7回二死で、代打として187日ぶりの実戦出場を果たした。
コロナ禍でなければ、スタンドから多くの“お帰り”の声が注がれたはずだが、背番号26は静かに打席へと歩みを進めた。
左腕・富山凌雅の2球目、141キロの直球を振り抜いた左翼へのライナーは惜しくも外野手のグラブに収まった。
延長10回に巡ってきた2打席目は、8球粘った末に遊ゴロ。平田勝男二軍監督は「レフトライナーといい、ショートゴロも粘って粘って。根性が違う」と復帰初戦で持ち味を発揮したことを称賛したが、やはり本人の自己評価は辛い。
「(ライナーも)普通だったらもう少し飛んでいる。(2打席目も)最後あそこで(バットが)止まれるようにならないと」
一軍のレベルを経験しているからこそ、久々の打席でも高いハードルを設定していた。
3日後の26日には、社会人チームとの練習試合で二塁の守備にも就いた。
横への動きやダイビング捕球など、完全復活へ向けては守備がひとつの大きなチェックポイント。この日は一度の打球処理のみで激しい動きはなかったが、「徐々にやっていきたい。そんな簡単に(肩が)外れることはないと思うので」と前を向いた。
“北條がベンチにいれば”──。
一軍の苦境にあって、ファンからはそんな声が多く聞こえてきた。
チームNo.1のガッツマンで、仲間からの信頼も厚い27歳。何より本人が、一日でも早く甲子園で暴れたいはずだ。
一軍昇格が現実味を帯びてくるのはもう少しの時間が必要だが、北條の内なる闘志はずっと燃えている。
文=チャリコ遠藤(スポーツニッポン・タイガース担当)