第31回:40歳のヒットメーカー
節目の試合に感謝の思いを込めた。ヤクルトの青木宣親が、4月30日のDeNA戦(神宮)で史上201人目となるNPB通算1500試合出場を達成。その記念の試合に自らのバットで決勝打を放ち、花を添えた。
開幕から本調子ではなく打率も2割を切ることもあったが、4月15日のDeNA戦(横浜)から気合の入った丸刈り姿で登場。本人も「気分転換になったのは間違いない」と、それからは2試合連続でマルチ安打も放つなど、徐々に調子を取り戻しつつある。
「長いシーズンこういうことも間違いなくあると思うから、そこはしっかり自分と向き合ってやっていきたいなと思います」
長丁場のシーズンで好不調の波をいかに少なくさせるか。頭を丸めたのも「自分の中では気持ちが変わるタイプ」と、自分自身を理解しているからこそ実行した。
若手主体のチームの中でも、40歳になった男の存在感は健在だ。決勝打を放った試合後のヒーローインタビューでも、明るく前向きにチームの中心に立つ青木がいた。
共にお立ち台に上がった2年目19歳の内山壮真に「チームを引っ張っていってほしい」と口にすると、最後は「ありがとうございます!」と、今季2度目の3連勝に沸くスタンドをさらに盛り上げた。
青木宣親のココがすごい
日米通算19年目。ここまで長く活躍し続けられる要因はどこにあるのだろうか。
青木の1学年下にあたる大松尚逸打撃コーチも、現役時代はロッテとヤクルトで活躍し、最後はBCリーグ・福井でプレー。37歳まで現役を続けた。
そんな大松コーチは、青木について「(現役生活で)体も変わるし考え方も変わる。そういうところに柔軟で自分の体のことに興味がある」と、分析する。
具体的には「探究心がすごい。若いときと当然同じ状況じゃないけど、その中でどうやって打てるか、どうやって体を使ったらケガしないか、もっと効率良い打ち方はないかとかを常に考えて、体のメンテナンスとかも踏まえてそういうことができる選手」と、青木の野球の取り組み方を絶賛した。
日本での通算打率は.318で、歴代の4000打数以上の選手の中で現在4位に位置する青木。現役選手の中では最も高い数字を誇る。類い稀な打撃技術もさることながら、それを維持するための思考と体力が、青木が今でも第一線で活躍し続けられる大きな理由だ。
入団以来オフの自主トレを共に行っている主砲・村上宗隆は「すべてを教えてくれた人ですし、僕にとってお手本になる先輩」と、青木の姿に感銘を受ける。
チームは開幕からケガ人が続出。それでも大きな連敗もなく上位をキープできているのは、青木という揺るぎない柱がいるからだ。
取材・文=別府勉(べっぷ・つとむ)