交流戦が今季の行方を占う?
24日に開幕する「セ・パ交流戦」。
広島は貯金6を数えての3位と、上々の結果を残して交流戦を迎えることとなった。
しかし、広島にとって交流戦は鬼門。いまの勢いがそのままパ・リーグにも通用するか、ナインは少しばかりの不安を抱えて臨むことになるだろう。
昨季は3勝12敗3分けで最下位。3勝は2015年のDeNAに並ぶワースト記録という惨敗だった。
交流戦でセ・リーグが12年ぶりに勝ち越したように、同一リーグの球団が軒並み善戦したこともペナントレースの順位に大きく影響した。
昨季は交流戦直前に新型コロナウイルスの感染者がチーム内で続出。鈴木誠也、菊池涼介、小園海斗ら主力が一斉に離脱する戦力ダウンは、苦戦した要因の一つとなった。
とはいえ、不運が重なった昨季を除いたとしても、例年のように苦戦を強いられているのが現実だ。
2019年も借金7で最下位に沈み、リーグ3連覇を達成した2018年も借金4での10位に終わっている。
苦手とする交流戦さえ乗り越えられれば、Aクラス死守どころか、さらなる上位進出も見えてくるだろう。
そこで今回は交流戦の投打のキーマンを取り上げて、現在のチーム状況を整理しておきたい。
安定した投球が光る森浦大輔
投手陣は、救援陣の整備が喫緊の課題となっている。
開幕直後は、抑えの栗林良吏につなぐ勝ちパターンを中崎翔太、島内颯太郞が担っていた。勝ちパターンの固定は安定した試合運びにつがなり、一時はチームを単独首位に押し上げた。
しかし、中崎と島内がそろって不振で二軍再調整となり、勝ち継投は解体。現在のところ、接戦の終盤には森浦大輔やケムナ誠、矢崎拓也、塹江敦哉らが展開に応じて起用されているように、役割を固定できるほどに信頼を勝ち取った投手はいまだに現れていない。
その中でも、森浦大輔が救援陣の出来を左右する大きなカギを握っていると言っていい。
現在のブルペン陣は150キロ超を誇る直球自慢が大半を占める中、制球の不安定さを隠せずにいる。一方の森浦は四球から崩れるタイプではなく、安定感では光るものがある。
大卒1年目だった昨季はチーム最多となる54試合に登板。今季は開幕の時点で勝ちパターンの一員を担わなければならない立場ではあった。
しかし、オープン戦で結果を残せずに開幕二軍スタート。4月下旬に昇格をつかむと、交流戦までの登板9試合で失点したのは1度のみ、防御率1.17とアピールを続けている。
交流戦前最後の一戦だった5月22日の中日戦では、1点リードの8回に抜てきされた。
三者凡退に片付けて抑えの栗林につなぎ、首脳陣からの評価を高めることにも成功した。
今後、勝ちパターンの一員として固定されるためには、“左打者への対応”が欠かせない。
左腕ながら、右よりも左打者に対して分が悪い。開幕前の降格時には、佐々岡真司監督も「去年からの課題である左打者に結果が出ていない。使う方としても左を抑えてくれないと難しい」と課題を挙げていた。
今季は、交流戦前まで対右打者への被打率.077(13-1)に対して、対左は同.231(13-3)と両方ともに上々の結果を残している。
このまま左打者への課題克服を印象づけることができれば、打者の並びに関係なく「8回の男」への抜てきが見えてくるだろう。
西川龍馬の調子と打線の得点力が連動
野手では西川龍馬の爆発力に期待がかかる。
交流戦前の時点でリーグトップの56安打。開幕時は1番を担っていたものの、現在は3番として中軸の役割を果たしている。
交流戦直前の不振は、図らずも自身の役割の大きさを示すこととなった。
5月14日のヤクルト戦から4試合連続無安打という大不振。この間の4試合でチームは3敗1分と勝つことができず、打線は1試合平均3得点と勢いを失った。
それでも西川は不振を長引かせることなく、19日の巨人戦で2安打を放つと、20日からの中日3連戦では本塁打を含む11打数5安打(打率.455)と復調。
すると、チームも中日に対して2試合連続で2ケタ得点を挙げるなど、同一カード3連勝。西川の調子と打線の得点力は連動していると言っていい。
打線では、日替わりとなっていた1番を奪おうと19日に昇格したばかりの野間峻祥がバットでアピールしている。
1番の出塁率が高まれば、得点圏に走者を置いて西川に打席が回る確率は高まるだろう。さらに、西川の直後の4番からはライアン・マクブルーム、坂倉将吾、小園海斗と好調な打者が並んでおり、自身の出塁がチームの得点力を上げることにもつながっていく。
西川が座る3番は、現在の打線の中で非常に大きな役割を担っているのだ。交流戦前で得点数リーグトップを誇る打線の勢いをパ・リーグ相手にも持続できるかは、西川がいかに本来の力を発揮できるかにかかっていると言える。
昨季、同一リーグで負け越したのはヤクルトのみ。つまり、昨季の4位は交流戦の苦戦がそのまま響いた。今季も交流戦が運命の分かれ道だと言っても、決して過言ではない。
文=河合洋介(スポーツニッポン・カープ担当)