コラム 2022.05.31. 07:08

ホームランの爽快感は野球ゲーム史上屈指だった『スーパーパワーリーグ』

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「本塁打の爽快感」は野球ゲーム史上屈指

野球ゲームの移り変わりから見るプロ野球史~第6回:スーパーパワーリーグ


 「高速演算チップDSP搭載」

 これは1993年10月1日にジャレコから発売されたスーファミ野球ゲーム『スーパー3Dベースボール』の箱に書かれた文言である。




 ちょっと何を言っているのか分からないが、なんとソフトの定価は1万2800円。新技術によりバッターの打球を画面切り替えなしで追いかける疑似3D表現も可能になり、先日の日テレ系野球中継で話題になった“自由視点映像”を見て、「これ、スーパー3Dベースボールぽいな」と懐かしく思い出したジャレコファンもいたはずだ。

 なお、同年の5月にサッカーのJリーグが開幕して社会的なブームに。8月にはナムコから『Jリーグサッカー プライムゴール』発売されるなどサッカーゲームも徐々に増えていくが、まだまだプロ野球ゲームの人気は高かった。

 プライムゴールと同日の93年8月6日には、ヒューマンから解説者の加藤博一がデータ監修した『ヒューマンベースボール』(数カ月後にはワゴンセールの常連)、そしてハドソンからはあの『スーパーパワーリーグ』が世に出る。



 パワーリーグと言えば、PCエンジンの人気シリーズだが、なにせ当時はPCエンジンを持っている小学生はクラスにひとりいるかどうか……というファミコン一強時代。教室にはニンテンドウロッカー・ベイビーズが溢れていた。なかなか手軽に遊べる機会に恵まれなかったが、ついにスーパーファミコンでもリリースされるという。

 PCエンジン版ではお馴染み、バッターの神主打法風の構えはそのままに、当時のスーファミでは異例の身体の大きさで打席に入るド迫力のビジュアルでユーザーの度肝を抜いた。

 正直、操作性はいまいちでこれといったウリがないピッチングシステムは単調かつ大味。当時の野球ゲームあるあるの守備・走塁がマジ適当問題も解消されておらず、平凡なサードゴロでも打者は全盛期のイチロークラスの俊足で一塁を駆け抜ける。かと思えば、外野手はフェンス際からもレーザービーム返球を連発。ゲームバランスはお世辞にも良いとは言い難い。


ホームランの爽快感は野球ゲーム史上屈指


 それでも、それらの欠点を補って余りある魅力がスーパーパワーリーグにはあった。「ホームランをかっ飛ばす」爽快感である。

 打った瞬間に画面は打者目線で固定され、スタンドに向けて飛ぶ白球の行方を追うあのビジュアル。プレーヤーは大空高く舞うボールが徐々に小さくなって外野スタンドに消えていく様子を確認しながら、会心の一撃をしばし堪能する。

 時間よ止まれ──。ホームランの気持ち良さをこれほど見事に表現した野球ゲームは他にないと思う。


 そして、もうひとつパワーリーグのこだわりが、テレビ局とのタイアップである。

 スーファミ版1作目ではフジテレビの『プロ野球ニュース』と組み、試合結果を実写取り込みのアナウンサー中井美穂が伝え、最後は画面に向かって笑顔で手を振り肉声でサヨウナラ。ゲームの中で最もリアルなのが、試合後の中井美穂という意味不明な熱意を感じさせる仕様は話題となった。

 この路線はその後も継続され、94年8月3日発売の『スーパーパワーリーグ2』ではTBSとコラボ。試合中に松下賢次アナウンサーの実況もつき(かなり片言ではあるが)、試合後の野球情報コーナーにはのちのイチロー夫人・福島弓子アナが登場だ。

 スーパーファミコンでも人気シリーズとなり、95年8月10日に出た『スーパーパワーリーグ3』では再びフジテレビとタイアップ。実況を福井謙二アナ、試合後には八木亜希子アナがプロ野球情報を伝えた。

 各々の重要なプレーはズームアップビジョンで盛り上げ、ペナントモードではチームの勝敗によって観客数が変わる“観客増減システム”を搭載。まるでラーメン屋のオヤジがスープや麺じゃなく、どんぶりの形状や色味を追究するようなスタンスで、肝心の野球ゲームのプレー部分の進化はほとんどなかったが、ひたすらプロ野球の見せ方にこだわった印象だ。まさに黄色いハドソンの頑固者である。





打席での動作、リプレイ機能…こだわり演出の数々


 スーファミ版ラスト作、96年8月9日発売の『スーパーパワーリーグ4』でもその徹底した(ちょっとズレた)こだわりは健在である。

 選手のピッチングやバッティングフォームに実写をとり込み。バッテリー画面時にYボタンを押したまま十字ボタンを押すと、投手が汗を拭い足でマウンドを慣らしたり、打者が構えたバットの先端を動かしタイミングを取る等の細かすぎるアクションを追加した。

 例によって、そこは肝心の試合プレー部分のクオリティには関係ないんじゃ……という事実は置いといて、さらにパッケージには取扱説明書や収録選手データ一覧表とともに一枚の黄色い紙が封入されている。「リプレイ機能についてのご注意」である。

 「今回、新しい試みとして搭載された「リプレイ」機能ですが、簡略化されたデータでリプレイ再生を行っている関係上、ビデオにおけるリプレイほど正確には再現されません。場合によっては、明かに異なる再生をすることもありますが、ゲームには何ら影響いたしませんのでご理解のうえお楽しみください」


 ここで『えっ……リプレイってそこまで無理して付ける機能なの?』……なんて真っ当な突っ込みは野暮だろう。白熱のシーンをその直後にもう一度見れる、当時の野球ゲームとしては画期的な挑戦だった。この無茶苦茶なベクトルの熱意こそパワーリーグシリーズの真骨頂なのだ。

 いつの時代も、ある種の“熱”は人を突き動かす。80年代から90年代にかけて大量の作品がリリースされた野球ゲームバブル期、そんな作り手側の狂熱に浮かされ、全国の子どもたちは夢中になったのだ。

 ちなみに、翌97年夏にNINTENDO64で出た『パワーリーグ64』でも、会心の一発を打った瞬間に打者目線やバックスクリーン横の固定カメラ映像に切り替わる、爽快感を追究したこだわりのホームラン演出は健在だった。

 最後は『スーパーパワーリーグ3』のオープニング映像で誇らしげに掲げられる、この一文で終わりにしよう。

 「野球とは人々を魅了するスポーツである」




文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)
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