大学野球の頂点を決する戦い
6月6日に開幕した『第71回全日本大学野球選手権大会』。
初日は神宮の試合が雨天中止となったが、東京ドームで4試合が開催された。
文字通り大学野球の頂点を決する大会であり、ドラフト候補となる選手にとっては大きなアピールの場として注目を集める。
昨年も隅田知一郎(西日本工大→西武1位)やブライト健太(上武大→中日1位)、黒原拓未(関西学院大→広島1位)、椋木蓮(東北福祉大→オリックス1位)、正木智也(慶応大→ソフトバンク2位)などが見事なパフォーマンスを見せ、高い順位でプロ入りを果たした。
今回は今年の大学選手権で注目したい「大学4年生のドラフト候補」を紹介していく。
「21勝」「防御率0.97」という圧倒的な数字
まず、投手では金村尚真(富士大)・細川拓哉(東北福祉大)・有本雄大(東北福祉大)・加藤泰靖(上武大)・高坂綾(千葉経済大)・青山美夏人(亜細亜大)・神野竜速(神奈川大)・真田拓(名城大)・堀本尚也(金沢学院大)・伊原陵人(大阪商業大)・木村光(佛教大)・村上幸人(福岡大)などの名前が挙がる。
この中で上位候補になる可能性がありそうなのが金村だ。
金村は下級生の頃から主戦として活躍し、これまでのリーグ戦通算成績は21勝4敗、防御率0.97と圧倒的な数字を残している。
攝津正(元ソフトバンク)に似たテイクバックの小さいフォームが特徴で、高い制球力も摂津と共通した長所。特にカットボールは打者の手元で鋭く変化する必殺のボールで、両サイドに投げ分けることもできる。
体つきも年々大きくなっており、ストレートもコンスタントに145キロ以上をマークしている。昨年12月に行われた大学日本代表候補合宿でも2回をパーフェクトと見事なピッチングを見せ、視察したスカウト陣に強烈にアピールした。先発タイプとしての総合力は大学球界でもトップクラスと言える存在だ。
今大会は初日の第2試合で早速登場。大阪商業大と延長タイブレークの末に1-2で敗れたが、金村は10回・122球を投げて被安打7、無四球・8奪三振で自責点1と力投。その実力は見せただけに、秋に向けて引き続き注目だ。
一方の加藤は、最速153キロを誇るパワーピッチャー。調子の波があるのは課題だが、それでもリーグ戦ではこれまで通算13勝0敗と結果を残し続けている。
昨年の大会では隅田と初戦で投げ合い、1-0で完封勝利をマーク。今年の春のリーグ戦でも同じリーグで上位候補と言われている曽谷龍平(白鴎大)との投げ合いを制し、改めてその実力を見せつけた。
下級生の頃はスピードこそあるものの、リズムが単調で打ち込まれるケースもあったが、昨年の秋と今年の春は変化球を中心にした組み立てもできるようになり、ピッチングの幅が広がった印象を受ける。先発でもリリーフでも力を発揮できるのも大きな持ち味であり、今大会でも大車輪の活躍が期待される。
また、将来性とスケールの大きさが評価されているのが青山だ。長いリーチで高い位置から腕が振れるためボールの角度があり、力を入れた時のストレートは目を見張るものがある。
この春は少しスピードは抑え目で140キロ台前半が多かったものの、逆にコントロールは安定。東都一部で6勝0敗、防御率1.40と見事な成績を残し、MVPに最優秀投手、最優秀防御率、ベストナインの4冠に輝いた。
全国の舞台で本来の威力のあるストレートを披露すれば、一気に評価が上がる可能性もあるだろう。
野手で注目選手は…?
一方の野手では、戸高誠也(東北福祉大/捕手)・小山忍(上武大/捕手)・土井克也(神奈川大/捕手)・野口泰司(名城大/捕手)・石伊雄太(近大工学部/捕手)・村松開人(明治大/内野手)・田中幹也(亜細亜大/内野手)・小松勇輝(東海大/内野手)・友杉篤輝(天理大/内野手)・杉沢龍(東北福祉大/外野手)・梶田蓮(近畿大/外野手)などが候補となる。
捕手に有力選手が多いが、なかでも総合力で一歩リードしている印象を受けるのが野口だ。
高校時代から愛知県内では評判の捕手だったが、大学で攻守ともにスケールアップ。少し日本人離れしたスタイルの打ち方で、昨年の今大会でも3試合で11打数8安打と打ちまくり、全国レベルの投手を相手にも高い対応力を見せた。
また、守備もフットワークと地肩の強さともに申し分なく、下級生の頃からあらゆるタイプの投手をリードしてきた経験も豊富だ。捕手が手薄な球団にとっては魅力的な人材である。
捕手以外の野手では、スピードがあるタイプの選手が揃う中、春のリーグ戦で強烈なアピールを見せたのが田中だ。
昨年秋は潰瘍性大腸炎が発覚してわずか2試合の出場に終わるも、この春は復活を果たす。4月14日に行われた国学院大戦では、リーグ記録となる1試合6盗塁をマークしている。
単純な脚力だけでなく、判断の良さやスライディングの上手さも際立っており、走塁技術はプロでも上位に入るレベルだ。
また、広い守備範囲も魅力で、課題だったバッティングもこの春は初本塁打を放つなど力もついてきた印象を受ける。守備と走塁のスペシャリストとして期待できる存在だ。
一方、バッティングに注目が集まるのが杉沢だ。
昨年は初戦で共栄大に敗れたものの、三塁打を含む2安打をマーク。この春は打率.550・4本塁打・14打点で三冠王を獲得したのだ。
以前から高いミート力には定評があったが、この春は軽々とスタンドへ運ぶ当たりを度々放ち、パワーアップを印象付けた。左投手も苦にせず、広角に長打を放つことができ、センターから見せる強肩でも目立つ存在だ。
投手・野手ともに「1位間違いなし」という候補は不在だが、冒頭でも触れたように過去にもこの大会で評価を上げた選手は少なくない。
今年も驚きの活躍を見せて、上位候補に浮上する選手が数多く出てくることを期待したい。
☆記事提供:プロアマ野球研究所