コラム 2022.06.16. 18:30

球界を席巻する「高津方式」【球界の「投高打低」現象を読み解く】

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ヤクルト・高津臣吾監督 (C) Kyodo News

第3回:各球団にも波及する「ゆとりの投手起用法」


 交流戦優勝後のインタビューでヤクルト・高津臣吾監督は「リリーフ陣、みんながMVP」と語った。

 そのMVPに輝いた村上宗隆選手は最も印象に残る交流戦に初戦の日本ハム戦を上げている。

 「(無死満塁の)ピンチを凌いだ田口さんのガッツポーズを見て僕らも奮い立った」試合は延長11回、村上の劇的なサヨナラ14号本塁打で決着を見た。主砲の豪打に、塩見泰隆、山崎晃大朗に長岡秀樹、内山壮真らの中堅、若手各選手が呼応する。救援投手陣は11試合連続無失点のまま交流戦を乗り切った。投打の歯車が見事にかみ合う盤石の戦い。「強い」の一語だ。

 「高津方式」と言う言葉が、注目されている。言い換えれば、「ゆとりの投手起用法」と解釈してもいい。これこそが昨年来、ヤクルトを強豪チームに作り替えた「投高」の秘訣である。

 12球団の今季先発投手登板間隔を調べてみると興味深い。

 日本球界の常識は、近年中6日で推移しているが、ヤクルトの中6日での先発は15回と12球団最少。逆に中7日以上は36回とダントツ。2番目に多い中日が26回だから突出している。

 救援投手陣の起用法も、極力3連投を避けてコンディションを優先する。今季も3連投はスコット・マクガフに一度あるだけ。その結果、目下、リリーフ陣の防御率は1.85と超安定している。

 ただ、登板間隔を空けて、疲労の軽減を考えているばかりではない。

 開幕から1カ月近くたった4月下旬の中日戦で2敗目を喫したエースの小川泰弘を「スピードもキレもない」と評した指揮官は、登板予定を飛ばしてミニキャンプを命じている。体の切れを取り戻した小川は中12日で阪神戦に登板すると完封で初勝利を上げた。


投手陣をサポートする伊藤智仁投手コーチの存在


 こうした「高津方式」は各球団にも波及している。オリックスの山本由伸、宮城大弥、ソフトバンクの千賀滉大投手らエース級も、故障ではなく1軍登録を抹消された後に復活登板を果たしている。抑えでは巨人のルーキー、大勢投手も3連投を避けて大事に起用されている。今や球界の新常識ともなりつつあるのだ。

 ヤクルトの巧みな投手陣の起用の陰には伊藤智仁投手コーチの存在も大きい。

 1992年のドラフト1位で入団。150キロ超の快速球と「高速スライダー」で、すぐさまエース格にのし上がったが連投の酷使で肩、肘を痛めて7年間で現役生活を終えた。時の名将・野村克也監督は伊藤を評して「稲尾(和久)と並ぶプロ野球史上最高の投手」と激賞、同時に短命で終わらせた起用について「ワシのミス」と頭を下げた。

 そんな体験が、投手の故障防止に生かされている。一方では打者に対して逃げずに向かっていく、エースとしての哲学も伝授。高津監督が就任した1年目はチーム防御率4.61と12球団ワーストの弱体ぶりが、伊藤コーチが古巣に戻った昨年は同3.48で日本一、そして今季は62試合消化時点ながら同2.73と着実に数字を上げているのも単なる偶然ではないだろう。

 細心かつ大胆。高津野球の真骨頂だ。投手のコンディショニングには細心の注意を払う一方で、6月9日のオリックス戦では2-1の薄氷戦で抑えに、日頃は中継ぎ要員の今野龍太投手を起用してプロ初セーブを上げている。マクガフや清水昇らの「抑えの方程式」を飛ばして大胆な用兵で結果をつかめば、さらにチーム力は増して行く。

 恩師・野村氏の教えの中には「常識を疑え」と言う一文もある。先発投手の中6日登板は本当にベストなのか? 救援投手を長丁場で効率よく活用するには、どこまで連投を強いるべきなのか? すべてはトップでゴールを切ると言う最終目的から逆算された投手操縦術である。

 チームの常識を変えて、球界に一石を投じる高津流。「投高打低」の今の野球を最も効果的に演出しているのかも知れない。

文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

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