コラム 2022.07.11. 07:08

高校屈指の大型遊撃手にスカウト陣が大集結 誉高イヒネ・イツアが秘める“伸びしろ”

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誉高校のイヒネ・イツア選手 [写真提供=プロアマ野球研究所]

両親がナイジェリア出身の「大型ショート」


 7月に入り、全国各地で熱戦が繰り広げられている高校野球の地方大会。

 高校生のドラフト候補にとっては最大にして最後のアピールの場となるが、今回は激戦区・愛知が誇る“大型ショート”を紹介したい。




 今年の高校生のショートと言えば、センバツにも出場した戸井零士(天理)や金田優太(浦和学院)、さらに春の大阪府大会・決勝でセンバツ王者の大阪桐蔭を苦しめた光弘帆高(履正社)らの評価が高い。

 そんな中、東海地区でにわかに注目を集めている選手がイヒネ・イツアだ。

 ナイジェリア出身の両親を持つ右投げ左打ちの大型内野手だが、生まれも育ちも愛知県。中学時代は、先日の記事で取り上げた“巨漢スラッガー”・内藤鵬(日本航空石川)と同じ軟式の強豪クラブチーム「東山クラブ」でプレーしている。



▼ イヒネ・イツア(誉) 
・遊撃手 
・184センチ/82キロ 
・右投左打

<各塁へのベスト到達タイム>
三塁到達:11.34秒


粗削りな部分が“伸びしろ”に感じる


 高校入学時は外野を守っていたが、2年時からショートに転向。昨年夏の愛知大会では10打数7安打と見事な成績を残していた。

 新チームでは秋・春とも上位に進出することはできなかったが、そのプレーをプロのスカウト陣も高く評価しているという。

 そんなイヒネの実力を確かめるべく、5月28日に行われた全尾張大会の対横須賀戦に足を運んだ。


 この大会は尾張地区と知多地区の学校によって行われるもので、夏のシード権などには影響しないローカルな大会だ。

 それでも、会場となった小牧市民球場のスタンドには6球団・10人のスカウトの姿があった。

 そのなかには管理職クラスが足を運んでいる球団もあり、注目度の高さをうかがい知ることができた。


 イヒネは「3番・遊撃」で先発出場。まず目を引いたのが、試合前のキャッチボールとシートノックだ。

 体格はもちろんだが、ベンチから出てくる動きも明らかに他の選手とは動きが違う。ボールを投げる動作、受ける動作の一つ一つに躍動感があるのだ。

 シートノックのボール回しでも、跳ねるような動きは一際目立っていた。

 ノックになると、ゴロに対してバウンドを合わせるステップや、捕球から送球への流れなどは粗さが目立ったが、その粗削りな部分ですら“マイナス面”というよりも“伸びしろ”のように感じられた。


 バッティングも守備と同様に課題があるとはいえ、それを上回る魅力に溢れている。

 タイミングをとる時のバットの動きが大きく、ステップの粘りももうひとつ。緩急への対応はまだまだという印象を受けたが、三振と中飛に倒れた後の第3打席では、高めのストレートをとらえてセンターの左へ運ぶ三塁打を放った。

 全身を鋭く回転させるスイングはとにかく伸びやかで、ヘッドスピードの速さも申し分ない。

 粗っぽいように見えてヘッドが下がることなく、シャープに振り出せているのも大きな長所だ。

 結局、安打はこの三塁打1本のみだったが、甘く入るといつでも長打になりそうな雰囲気は十分に感じられた。


迫力満点のベースランニング


 そして、圧巻だったのが走塁である。

 フルスイングしてから走り出すため、スタートは少し遅れやすいものの、ファーストベースを回ってからぐんぐん加速するようなベースランニングは迫力十分。

 12.00秒を切れば俊足と言われる三塁到達タイムで11.34秒をマークした。


 182センチという長身でストライドが長いうえ、それ以上に際立っていたのが姿勢の良さである。

 背筋がきれいに伸び、上半身がほとんどぶれず、スピードに乗ることができている。

 かつて、オリックスの三輪田勝利スカウトがベースランニングを見てイチローの獲得を決めたという逸話があるが、イヒネの走塁にも目を奪われる迫力があった。


 攻守とも、プロで覚えなければならないことが多いことは確かだ。

 だが、その高い運動能力に見合うだけの技術が身についた時にはとんでもない選手になりそうな雰囲気を持っている。

 夏の愛知大会でもその高いポテンシャルを十分に発揮して、多くのスカウト、そしてファンを魅了してくれることを期待したい。


☆記事提供:プロアマ野球研究所
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