人々を惹きつける不思議な魅力
4年前からSNSでの発信にも力を入れるようになって、タイガースファンの直の反応を体感できるようになった。
選手が活躍すれば「いいね」はたくさん付くし、リツイートで記事も大きく拡散される。そんな熱量を見れば、原稿執筆も余計に力が入るというものだ。
Twitterなら、フォロワーの方々のアイコン画像を見ればどの選手を“推し”ているのかが分かったりもして、余計にその興奮が伝わってくる。
そういう意味では、今月だけで2度も甲子園のお立ち台に上がった北條史也の活躍は多くの人たちの胸を熱くしたようだ。
甲子園で行われた6日のカープ戦は、チームにとっての天敵でもあった床田寛樹から満塁で同点の2点適時打。翌朝の紙面記事は自社のウェブサイト「スポニチアネックス」にもアップされたが、当日のPV(ページビュー)は相当高かったそうだ。
昨秋、左肩の手術をして復帰してきた経緯や、生え抜き10年目の意地……読まれた要素はひとつだけではなく、北條の溢れる「人間味」も大きく影響している気がする。
大阪の堺市出身で、“コテコテ”の関西人。現場で顔を合わせると「また遊びにきたんか」「仕事せいや」と、高卒1年目から接する9歳上の記者にも容赦なく突っ込みを入れてくる。
タメ口で暴言?めいたものも時にはあるが、こちらを不快な気分にさせないのが不思議だ。
「爪痕」に込められた想い
広島戦のヒーローインタビューでも、持ち味は全開だった。
詰まりながら左前に落とした執念の一打に「手折れたかと思いました」と一言。
心境をスラスラと分かりやすく語るスマートなインタビューも心地よいが、時折、言葉に詰まりながらもぶっちゃける“北條節”もファンの心に深く突き刺さる。
北條は、8日後の中日戦でも1点劣勢の2回に今季1号の逆転2ランを左翼スタンドに放り込んだ。
試合中には球団広報を通じて「久しぶりのスタメン起用なので、試合前から絶対に爪痕を残してやろうと思っていました」とコメント。
この「爪痕」とは、昨年ベテランの糸井嘉男が同じように久々の先発起用に応えて活躍した際に使ったフレーズ。先輩へのリスペクトも込められているようで、これにもファンはすぐさま「北條、胸アツ」などと反応していた。
レギュラーではなく、日々の出場も確約されていない立場。それでも、年に何度かやってくる“見せ場”を待っているファンが数え切れないほどいることをあらためて再確認させられた。
担当記者として、そんな熱狂を活字でさらに昇華させられる存在でありたい。
文=チャリコ遠藤(スポーツニッポン・タイガース担当)