3年ぶりの夏開催「都市対抗野球」
7月18日に開幕した社会人野球の祭典『第93回都市対抗野球大会』。
昨年までの2年間は東京オリンピック・パラリンピックの影響により、ドラフト会議後の冬に行われていたが、今年は例年通りのスケジュールに戻った。
1回戦の戦いも進み、23日の第2試合からは2回戦に突入。ベスト8進出に向け、戦いはより一層激しさを増してくる。
そんな中、「都市対抗」は社会人野球最大の大会であると同時に、ドラフト戦線にも大きな影響を与える舞台。個人のアピールというのも重要になる。
今回は前回の投手編に続き、野手の注目ドラフト候補を紹介したい。
大阪桐蔭時代は4番で活躍
今年に限らず、投手に比べるとドラフトの有力候補は少ない印象を受ける野手。
その中でも、近年指名されることが多い強打者タイプの筆頭と言えるのが大阪ガス・三井健右(24)だ。
大阪桐蔭高では2年秋からクリーンアップに定着すると、チームの近畿大会優勝にも大きく貢献。翌年春の選抜でも4番として出場している。
立教大では2年春に4本塁打を放って頭角を現すと、4年秋には打率3割をクリアしてベストナインを受賞。
大阪ガスでも1年目から中軸を任され、昨年の日本選手権では2回戦の西部ガス戦で本塁打を放つなど、チームの優勝にも大きく貢献した。
身長186センチ・体重96キロという堂々とした体格を生かしたフルスイングで、とらえた時の打球の速さ、飛距離は社会人でもトップクラスだ。左方向への打球もよく伸び、広角に長打を放つことができる。
今年の都市対抗予選では本塁打こそ出なかったものの、3割を超える打率を残し、3本の長打を放つなど中軸として見事な成績を残している。
しかし、本大会の初戦・JR東日本戦ではベンチスタートとなり、代打からの出場で1打数無安打。チームも敗れ、アピールする間もなく夏の大舞台が終わった。
指名打者での出場が多く、守備・走塁面で目立つところがないのは気になるとはいえ、安定して長打を打てる選手は貴重だけに、今後のアピール次第では獲得を検討する球団も少なくないだろう。
アマ時代の広島・栗林から見事な一発
一方で、体こそ大きくないものの、フルスイングと長打力が魅力なのがNTT西日本・平良竜哉(24)だ。
九州共立大では1年春から中心選手として活躍し、1年秋に出場した明治神宮大会では名城大のエース・栗林良吏(現・広島)から本塁打も放っている。
NTT西日本でも1年目から二塁のレギュラーをつかみ、昨年の都市対抗でも2試合で8打数4安打、二塁打2本と社会人野球の大舞台でしっかりと結果を残した。
170センチと小柄だが、全身を使った豪快なスイングでセンターを中心に強い打球を放つ。
空振りしても観客からどよめきが起きるほどで、ヘッドスピードとインパクトの強さは大きな魅力だ。
今年の都市対抗予選では打率1割台と苦しむも、第1代表決定戦のミキハウス戦では貴重な追加点となる本塁打をレフトスタンドに叩き込んでみせた。
こちらも本大会はJR東日本東北にコールド負け。初戦敗退となったが、平良はその中でも2安打に加えて2盗塁をマーク。苦しむチームの中で奮闘を見せた。
父親は中日の元投手
逆に高い守備力が評価されているのが、トヨタ自動車・佐藤勇基(24)だ。
父は1992年のドラフト1位で中日に入団した佐藤秀樹氏(現・中日スコアラー)。中京大中京高時代は2年夏に甲子園に出場。3年時にはU-18・侍ジャパンにも選出されている。
法政大ではそれほど目立った成績を残すことができなかったが、トヨタ自動車では1年目から二塁のレギュラーとなり、昨年の都市対抗では本塁打も放った。
派手なプレーをするタイプではないが、軽快なフットワークと巧みなグラブさばきで、見ていて安心感のある守備が持ち味だ。課題だった打撃も年々力強さがアップしている。
トヨタは初戦を突破し、佐藤も2打数1安打をマーク。勢いに乗って、昨年のようなインパクトのある結果を残すことができれば、プロ入りの可能性も出てくるだろう。
▼ 今年指名解禁となる注目選手
拾尾昌哉(三菱重工West/21歳)
大庭樹也(東芝/24歳)
滝沢虎太朗(ENEOS/23歳)
ドラフト“解禁済選手”にも注目
また、投手と同様に、野手も昨年指名されなかった、いわゆる“解禁済”の有力選手が少なくない。
中でも今年目立つのが、日本新薬・福永裕基(26)だ。
昨年の都市対抗では2試合で8打数5安打を記録。今年に入ると、3月のJABA東京スポニチ大会では3試合で12打数7安打・3本塁打と圧倒的な成績を残している。
大学までは広角に打てる上手さが目立つ打者だったが、年々長打力はアップしており、本塁打を打つコツをつかんだようだ。
大学卒4年目だが、本人もプロ入りへ強い意欲を持っているとコメントしており、大舞台でのさらなるアピールに期待したい。
福永以外でも、セガサミー・中川智裕(25)やトヨタ自動車・和田佳大(25)、NTT西日本・藤井健平(25)、三菱重工West・根来祥汰(25)なども、それぞれ特長のある選手で密かに狙っている球団もありそう。
昨年のドラフト会議では、下位指名ながら野村勇(NTT西日本→ソフトバンク4位)や末包昇大(大阪ガス→広島6位)、上川畑大悟(NTT東日本→日本ハム9位)が指名され、1年目から一軍で戦力となっていることから、解禁済の選手を見直す動きが出てくることも十分に考えられる。
※記載した年齢は今年度中にむかえる年齢
☆記事提供:プロアマ野球研究所