チームの空気を変えた秋山翔吾の加入
セ・リーグは、前半戦を終えてもなお同率2位の広島、阪神と最下位・中日までが6ゲーム差と混沌としており、順位争いの先行きは見通せない。
この団子状態から頭一つ抜け出し、ヤクルトの独走を食い止めようとするチームは現れるのか。スパートの材料となり得る「伸びしろ」を最も多く残しているのは、勝率5割の2位で折り返した広島かもしれない。
広島の伸びしろは、新加入した秋山翔吾と負傷離脱中の西川龍馬が揃うことによる化学反応である。
秋山翔吾の合流から、チームの空気は確かに変わった。
7月8日の初出場から、出場13試合で打率.280(50-14)、3本塁打で13打点。群を抜いた成績ではないとはいえ、秋山が加わったことで打線の流れが明確に見えるようになったことは大きい。
秋山が合流するまで、首脳陣は苦しいやりくりを強いられていた。
開幕から3番を務めていた西川が、6月中旬に下半身のコンディション不良で離脱。3番を日替わりで起用するも適任は見つからず、最終的には菊池涼介を2番から3番に変更することで落ち着いた。
秋山が加入して3番に入ったことで、菊池涼を本来の役割である2番に戻すことが可能になった。
「秋山×西川」の化学反応
今季のチームは「つなぐ攻撃」を掲げており、2番の役割は重要だ。
2番の菊池涼が得点圏に走者を進めて、3番の秋山が走者を還す。この理想的な攻撃は、開幕から目指してきた得点の形を改めてチームに再認識させていると言える。
ここに西川が戻ってくれば、流れを取り戻し始めていた打線に厚みが増す。
西川は開幕から全試合に出場していたが、6月2日の日本ハム戦で下半身のコンディション不良を訴えて途中交代。翌3日から2試合連続で出場機会がなく、5日に登録を抹消された。
前半戦での実戦復帰はかなわず、現在もリハビリ組となる三軍での調整中。とはいえ、秋山とのタッグが実現する日は遠くないだろう。
西川の再昇格後、秋山の打順は現在の3番に加えて1番も検討されている。
秋山の西武時代の先発数は、1番が658試合に対して3番は78試合と限られていた。西川を3番に起用すれば、秋山を経験豊富な1番に置くことが可能になる。
また、打率.310と好調な野間の打順を1番のまま固定し、西川を3番以外に置くこともできる。これまで限られていた先発オーダーの選択肢は、西川次第で一気に広がることになる。
もちろん、他球団にも伸びしろはある。
阪神には新外国人のアデルリン・ロドリゲスが加入し、巨人は坂本勇人、DeNAはタイラー・オースティンら故障で離脱していた主力が戻ってくる。
それらと比べても見劣りしないほどに、「秋山×西川」による化学反応への期待値は高い。
広島のチーム打率はリーグ2位の.256と前半戦から上々の結果を残していた。
この打線がさらに勢いづくのであれば、後半戦の広島は面白い。
文=河合洋介(スポーツニッポン・カープ担当)