自己最多を上回る1試合6安打
バットを振るたびに“Hランプ”を灯した。
8月3日のヤクルト戦(神宮)。中日・大島洋平が打つわ打つわの全打席安打で、脅威の6打数6安打。2リーグ制以降における両リーグの1試合最多安打記録に並んだ。
まだ明るい神宮球場で、大島劇場は開幕した。初回先頭の第1打席。ヤクルト先発・サイスニードの外角球を叩くと、左翼線への二塁打で出塁。3番・阿部寿樹の7号2ランを呼び込んだ。
2回二死の第2打席でも中前へ打ち返すと、もう止まらない。4回と5回にもヒットゾーンへ飛ばし、7回には適時打。二死二塁で左腕・久保拓眞の内角球を芸術的に弾き返す。
そして、9回の右前打で6安打。これまでの自己最多は、2012年8月5日・ヤクルト戦(神宮)の5安打。これを1安打上回った。
「トップはいいんですが、シーズン終わってから考えます。これからも、勝てるように頑張ります」
この試合を終えた時点で打率を.329へ上げ、DeNAの佐野恵太を上回ってリーグトップに浮上した。
7日終了時点では.322の佐野がトップで、大島は.321の2位。両者のデッドヒートは続いている。
大台へ向けて着実に
1試合6安打は球史で8人目の記録だった。
1リーグ制の大下弘(東急)が1949年に7安打したのが過去最多。2リーグ制以降は6人。セ・リーグでは、過去に1951年の大沢伸夫(大洋)、1954年の渡辺博之(阪神)、1974年の高田繁(巨人)、2018年の大山悠輔(阪神)が達成。パ・リーグの達成者は1955年の仰木彬(西鉄)、2003年の城島健司(ダイエー)となっている。
通算安打も1849。2000安打達成までは残り151安打とし、来季中の大台到達へ確実に進んでいる。
7月には中日OBで2012年からチームメートだった山﨑武司の1834本を超えた。
「山﨑さんは400本以上、ホームランを打っているので(403発)、何とも言いようがないのですが、超えられたのは嬉しいですし、もっと打てるように頑張ります」と話す。
一方の山﨑さんは「何としてでも打ってもらいたいよね。2000安打しないと『2000打ってないくせに』と言う人間がどこかで出てくる(笑)」とコメントした。
スラッガーの記憶に残っているのは、大島が駆け出しだった2013年のこと。前年の172安打に対して、124安打と低迷したシーズン。打率.248の姿を間近で見た。
「これからどう成長していくのかな、と思った。いろいろ悩みながらやってきた。あの期間があったかから、今は『これだ』と思えるものがあると思う」と話した。
大島の2000安打物語は続く。
文=川本光憲(中日スポーツ・ドラゴンズ担当)