7月以降は27試合で防御率1.09の好成績
2年連続でセ・リーグを制したヤクルトも、いよいよクライマックスシリーズがスタート。シーズン終盤は先発、中継ぎともに打ち込まれる試合も散見されたが、やや手薄だった左のリリーフの一角として久保拓眞が好投を見せた。
久保は2018年のドラフト7位で入団。通算3シーズンで26試合、0勝1敗1ホールド、防御率5.84とさしたる実績はなく、昨季は一軍登板ゼロ。
二軍で迎えた今春のキャンプでは新型コロナウイルス陽性判定を受け一時離脱した影響もあり、オープン戦での登板もなく、開幕は二軍スタートだった。
今季開幕後は4月1日に初昇格を果たし2試合に登板するも連続失点。4月11日には登録を抹消された。この時点で久保はまさに崖っぷちだったといってもいい。
しかし、7月に再昇格を果たしてからは、27試合の登板で失点したのは3試合しかなく、防御率1.09と抜群の成績を残している。当初は比較的プレッシャーのかからないビハインドでの登板が多かったが、試合数を重ねるにつれて痺れる場面での登板も増えていった。
9月17日の中日戦では、1-1の同点で迎えた11回裏の二死二塁、土田龍空の打席途中(2ストライク0ボール)から異例の登板だったが、わずか1球で空振り三振に仕留めた。翌18日の阪神戦では、1-0と1点リードの8回裏一死一・二塁でマウンドに上がると、2球で中野拓夢を併殺に打ち取りピンチを脱した。
この2日間で久保は3球で3つのアウトを奪い、2ホールドをマーク。左のジョーカーとしてこれ以上ない働きを見せた。
ブルペン待望のサウスポー
ヤクルトは昨季からスコット・マクガフと清水昇の“勝ちパターン”を中心に強固な中継ぎ陣を形成してきた。しかし、中継ぎ左腕には苦労しており、昨季後半に田口麗斗を先発から配置転換していたほどである。田口は今季も中継ぎで結果を残しているが、それに次ぐ2枚目の左腕がなかなか定着しなかった。
昨季36試合に登板した坂本光士郎や、自由契約を経て加入した宮台康平は結果を残せず、その坂本との交換トレードでロッテから移籍してきた山本大貴も、大事な場面を任せられるほどの信頼感はまだない。
今季一軍で腕を振った田口と久保は、左打者に対するワンポイントはもちろん、回跨ぎもこなせる万能タイプ。レギュレーションが延長12回制に戻ったタイミングで、様々なシチュエーションに対応できる中継ぎ左腕が1枚増えたことは、チームにとって大きなプラスとなったはずだ。
球団史上初の日本シリーズ連覇を目指すヤクルト。ポストシーズンは新たな“左のジョーカー”の投球にも注目だ。
▼ 2022年・ヤクルトの主なリリーフ投手
<右投手>
マクガフ 55試 防2.35 2勝2敗38セーブ
木澤尚文 55試 防2.94 9勝3敗8ホールド
今野龍太 51試 防3.72 1勝2敗16ホールド
清水 昇 50試 防1.16 5勝4敗28ホールド
大西広樹 43試 防4.45 3勝2敗3ホールド
梅野雄吾 41試 防3.00 4勝3敗16ホールド
石山泰稚 38試 防1.75 2勝0敗16ホールド
コール 34試 防2.75 2勝0敗6ホールド
<左投手>
田口麗斗 45試 防1.25 1勝1敗18ホールド
久保拓眞 29試 防2.70 1勝0敗7ホールド