コラム 2022.10.20. 15:59

阪神・矢野燿大前監督が流した涙【指揮官たちの秋】

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退任会見をする阪神・矢野監督 (C) Kyodo News

第3回:頂点には手が届かなかった矢野野球の現実


 時の流れは速い。プロ野球界もまた、日本シリーズを控えるヤクルトとオリックスを除いて、新チームでの動きを加速させている。

 ドラフト、トレードに秋季キャンプ。新監督を迎えるチームは、新たに目指す野球と意識改革に余念がない。

 名門・阪神も矢野燿大前監督から岡田彰布新監督にバトンタッチ。17年間遠ざかっている覇権奪回に動き出した。


 今月15日、矢野前監督の退任会見が行われた。

 当日はパリーグのクライマックスシリーズ・ファイナルでオリックスがソフトバンクを破って、2年連続日本シリーズ進出を決めたこともあり、地元の関西地区を除いてはマスコミの扱いも決して大きなものではなかった。

 2019年に就任以来、3位、2位、2位と続いて今季が3位。頂点には手が届かなかったものの、指揮官としては決して悪い成績ではない。だが、優勝の美酒を味わえなかったのも矢野野球の現実である。

 会見の席で矢野は何度か声を震わせ、涙を見せた。

 あと一歩のところで戦いに敗れた悔しさや、共に戦った選手たちとの思い出が去来したのだろう。一方でキャンプイン前日に行った異例の今季限りの退任発表に話題が及ぶと「開幕のスタートにつまずく原因になった可能性もある。迷惑をかけてしまったというのは、率直な部分ではある」と複雑な胸中を明らかにした。

 今季の阪神の迷走は、まさに1月31日の矢野発言から始まったと言っても過言ではない。戦いに臨む前に大将が今季限りの撤退を明らかにして、何のメリットがあるのか?

 矢野にすれば、自らが退路を断って、全軍の士気を高める狙いがあったのかも知れない。

 しかし、そんな指揮官の思惑とは裏腹にチームは開幕からリーグワーストの9連敗。その後も泥沼状態は続き、ようやく最下位から脱出したのは6月中旬になってからだった。それを考えれば最終的に3位に浮上、クライマックスシリーズでは2位のDeNAを撃破して、あと一歩のところまで迫ったのだから“奇跡の復活”を遂げた1年でもあった。


チームに微妙な影を落とした開幕前の勇退表明


 矢野タイガースの特徴は「イケイケ」であり、「選手ファーストの野球」と評される。

 味方に殊勲打が生まれれば、選手以上に派手な“矢野ガッツ”で喜び、本塁打を放った打者には「虎メダル」を授与。「夢と理想を語りながらやる野球は貫けた」とも語っている。しかし、一方では86失策は5年連続12球団ワーストのお粗末な守りに、守備位置や打線も猫の目のように代わりチームが落ち着かない。それが、優勝に届かない原因とも指摘されてきた。

 キャンプイン前日の矢野監督による勇退表明はシーズン中にもチームに微妙な影を落とした。

 夏前には評論家時代の岡田と阪急阪神ホールディングスの総帥である角和夫会長がゴルフと会食を共にしたと言って騒がれる。シーズン終盤には球団からマスコミに対して、人事報道は控えるよう通達があったとも言う。結果は岡田新監督が誕生しているのだから、何とも奇妙な「かん口令」と言うしかない。

 その岡田新監督は早くもチーム改造に乗り出している。

 来季は三塁に佐藤輝明、一塁に大山祐輔選手を固定、さらに遊撃の中野拓夢選手を二塁にコンバートして、若手の小幡竜平選手を遊撃で育てる構想もある。今月18日には日本ハムとのトレードで渡邉諒、髙濱祐仁両内野手を獲得するなど、守りの整備に注力している。

 選手と喜怒哀楽を共にする矢野前監督とは対照的に、岡田の目指す野球は監督主導であり、時に選手は将棋の駒として扱う厳しさを兼ね備えている。

 180度違う矢野と岡田の新旧監督の交代劇がチームにどんな化学反応を引き起こすのか? 

 阪神最後の優勝となる2005年の指揮を執ったベテラン監督の手腕が見ものである。


文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

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