コラム 2022.10.24. 07:14

新政権のブレイク候補は?広島・新井監督が熱望する「若手」の奮起

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新ユニフォームを発表する広島・新井貴浩監督ら (C) Kyodo News

再建のカギは「若手の底上げ」


 広島が球団OBで野球評論家である新井貴浩氏の新監督就任を発表した。

 佐々岡真司前監督が指揮官就任から3年連続Bクラスに沈んだ責任を取る形で退任。チームの再建は、指導者経験のない新井氏に託されることになった。




 新指揮官が就任会見で繰り返したキーワードのひとつが『若手』だった。

 再建の道筋を問われて、「まずは若手の底上げ。力をつけさせることが大切だと思います」と答えた。

 その直後、「シーズンは長いので、若手だけでは勝てない」と強調したとはいえ、2016年からのリーグ3連覇を支えたベテランから中堅選手以外の新戦力の台頭を待ち望んでいる。


打って走れる宇草孔基


 そこで今回は、秋季キャンプが始まる11月を前に、どこよりも早い来季のブレイク候補を分析していきたい。

 今季は若手野手の台頭に乏しかった。坂倉将吾と小園海斗の2人がレギュラーをつかんだとはいえ、チームの苦しい時期に新しい風を吹かせられるような新戦力は現れなかった。

 そんな今季の鬱憤がたまっている若手の中でも、特に注目したい外野手がいる。来季大卒4年目を迎える外野手の宇草孔基である。

 パンチ力のある打撃と俊足を兼ね備え、昨季のシーズン終盤には1番で固定されるなど潜在能力は高い。

 しかし、鈴木誠也が抜けた外野の1枠を埋める筆頭候補として期待された今季は、出場45試合で打率.205、1本塁打、6打点と殻を破れずに終わった。


 再び一からのアピールが必要な立場に逆戻りしたとはいえ、来季は宇草の長所にスポットライトが当たる可能性はある。

 新井新監督は就任会見で「走り回る野球がカープの伝統。(今季は)その点で少し寂しかった。足が速い遅い、盗塁ができるできないではなく、打つ、走ることの両面で相手に重圧をかけられるようなチームにしていきたい」と語っている。

 今季のチームは、球団ワーストを更新する26盗塁に終わった。偽走やエンドランなど、走者を生かした攻撃にも消極的だったこともあり、リーグトップのチーム打率.257をマークした打力を生かし切れなかった。


 その点、宇草の積極的な走塁姿勢は、チームの課題解消につながる可能性を秘めている。

 昨季は出場43試合で6盗塁。以前から「足も生かしながら、二塁打、三塁打と長打も見せられる打者になりたい」と口にしているように走塁への意識は高い。

 就任会見のコメントを受けて、若手選手は足を使ったアピールに燃えているだろう。とはいえ、打力と走力を両方兼ね備えているようなレギュラー候補が数多くいるわけではない。一方、宇草は6月22日の阪神戦でサヨナラ本塁打を放ったように、非凡な打力でもアピールできる貴重な選手の一人と言える。


 ただし、現在の外野陣に割って入るのは容易ではない。

 今季国内FA権を取得した野間峻祥と西川龍馬は、ともに残留を表明。さらに秋山翔吾や上本崇司、堂林翔太らが並ぶ外野の選手層は厚い。

 その中に宇草のような若手も加わることができれば、今季漂った閉塞感を振り払えるだろう。


高卒3年目右腕に飛躍の気配


 投手では、今季故障に泣いた先発候補が着々と逆襲への準備を進めている。来季高卒3年目を迎える小林樹斗だ。

 今季は開幕直前まで先発ローテーション争いに加わるなど、首脳陣から高い評価を受けていた右腕。しかし、コンディション不良に見舞われて、一軍登板は1試合に終わった。

 潜在能力の高さは一級品だ。直球は最速150キロ超を誇り、カットボールにスライダー、カーブやスプリットなどの変化球を制球良く操る。

 新井新監督は、先発投手に一定の球数制限を設ける構想を温めている。加えて「腹をくくって継投することも必要。いいことも悪いことも経験しないと成長しない」と説明したように、積極的な継投策も見据えている。

 小林は1年目から先発要員として経験を積んできた一方で、高校時代はエースながら救援としても起用されていた。チーム事情に合わせて先発・救援ともに対応できる器用さを持っていることは、一軍定着に向けた好材料と言える。


 チームにとって、高卒3年目は勝負の年だ。

 玉村昇悟は高卒3年目の今季に先発として8試合に登板したように、すでに先発要員の一人として計算されている。

 今季17試合に先発して飛躍した遠藤淳志も、高卒3年目の2020年に一軍の先発ローテーションを1年間守り抜いて貴重な経験を積んだ。

 小林は来季で高卒3年目を迎える。育成の意味合いが強かったこれまでとは異なり、戦力になり得るのか、来季は春季キャンプから厳しい視線が注がれることになるだろう。


 投手陣は先発・救援ともに選手を固定できるまでには至っていない。若手が一軍に割って入ることのできる枠はあるだけに、来季に才能が本格的に開花する可能性は大いにある。

 「新井チルドレン」に名乗りをあげるのは誰か──。新政権でブレイクできるだけの潜在能力を持った選手は、すでにいる。


文=河合洋介(スポーツニッポン・カープ担当)

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