社会人に進む有力選手
今年は10月20日に開催されたプロ野球のドラフト会議。
育成ドラフトを含めて126名が指名を受け、夢へのスタートラインに立った。
その一方で、この秋の挑戦を見送り、進学や社会人入りを決断した選手もいる。
ここでは仮にプロ志望ならば指名の可能性が高かったであろう「プロ志望届未提出の有力選手」を取り上げてみたい。今回は社会人に進む大学生編だ。
潜在能力が高い「153キロ右腕」
投手で下級生の頃から評価が高かったのが加藤泰靖(上武大)だ。
志学館高校時代から千葉県内では評判だった右腕で、上武大進学後も1年秋からリーグ戦に登板。2年秋には5勝をマークし、リーグ戦後に行われた横浜市長杯では最速153キロをマークするなど、スカウト陣の注目を集めた。
その後も主戦投手として活躍し、昨年の大学選手権では隅田知一郎(西日本工大→2021年・西武1位)と投げ合い、1-0で完封勝利をおさめている。
リーグ戦の実績だけで言えば1位候補の曽谷龍平(白鴎大)と比べても全く遜色なく、今年春の直接対決にも11球団・18人のスカウトが集結するなど、注目度の高さが伺えた。このほか、今年の大学選手権でもチームの準優勝に大きく貢献している。
だが、大学時代の最速は前述した2年秋にマークしたもので、その後はフォームのバランスを崩してなかなか調子が上がらない時期があり、今年のストレートは140キロ台中盤ということが多かった。
現時点でプロ入りの可能性もありそうだったが、高い順位での指名は難しいという状況。今後は、まずは好調時の状態に戻せるかが注目ポイントとなりそうだ。
ポテンシャルの高さは誰もが認めるところ。大学の先輩である吉野光樹(トヨタ自動車)のように、社会人野球で誰もが認めるエース格となり、2年後のプロ入りを目指してもらいたい。
「191センチ・96キロ」という大学球界屈指のスケール
スケールの大きさで、大学球界屈指と見られているのが勝本樹(日本体育大)だ。
明石商時代から同学年や下級生に好投手が多かったこともあって甲子園での登板はなく、大学でもリーグ戦デビューは3年春と早くはない。
身長191センチ・体重96キロという日本人離れした体格から投げ下ろすストレートは、数字以上の威力が感じられ、ボールの角度も素晴らしい。
コントロールは不安定だが、3年秋には防御率0点台という好成績を残している。
ただ、フォームにぎくしゃくしたところがあり、体格的なことを考えて、投手として完成する時期は25歳を超えてからのように見える。
社会人野球では安定感のない投手は重要な公式戦に登板することは難しい。それだけに、スケールを残したまま、上手くまとまりが出てくるかという点が重要になりそうだ。
▼ その他の注目投手
細川拓哉(東北福祉大)
有本雄大(東北福祉大)
佐伯亮太朗(東京情報大)
生井惇己(慶応大)
島田直哉(立教大)
福山優希(駒沢大)
西舘洸希(筑波大)
斎藤礼二(東海大)
定本拓真(関西大)
「打てる捕手」に成長できるか
野手では、加藤ともバッテリーを組んだ小山忍(上武大・捕手)が面白い。
1学年下に来年の上位候補と見られている進藤勇也(上武大3年・捕手)がいることもあって、指名打者で出場することが多いが、進藤が調子を落としていた昨年秋は正捕手として攻守ともに見事なプレーを見せている。
また、最終学年で打撃も大きく成長。この秋は6割を超える打率を残した。しかしながら、重要な試合では、どうしても進藤が捕手として起用された。
小山の経験不足を気にしているスカウトが多いだけに、社会人野球では守備面でも万全な実績を残すことができれば、「打てる捕手」として2年後のドラフトで注目されることは間違いないだろう。
リードオフマンタイプの選手では、山田拓也(青山学院大・二塁手)と梶田蓮(近畿大・外野手)の名前を挙げたい。
山田は169センチと小柄だが、スイングは決して小さくなく、昨年秋・今年春とリーグ戦で2本塁打を放っているようにパンチ力のある打撃が持ち味だ。
さらに、セカンドの守備は軽快そのもので、スピード感と堅実さを兼ね備えている。プロで完全なレギュラーを勝ち取れるかは微妙なラインだが、一定の戦力となる可能性は高いだろう。
梶田は抜群のスピードが持ち味の外野手。パンチ力は山田と比べると少し落ちるものの、ミート力が高く、3年春から3季連続で打率3割をクリアし、この秋も4割近い打率を残した。
社会人野球で力をつければ、近本光司(阪神)のような選手になれる可能性は十分にありそうだ。
大学生は高校生に比べると、プロ志望届の提出者は多い。ただし、決められた順位以下であれば入団しないと言われている選手も少なくなく、他にも社会人野球に進む選手は増えることが予想される。
大学卒の社会人からプロ入りはハードルが高くなるが、この中から2年後に即戦力として評価される選手が多く出てくることを期待したい。
☆記事提供:プロアマ野球研究所