リーグ優勝の原動力に
オリックスの日本一で幕を閉じた2022年のプロ野球。激戦を制したオリックスは投手陣の活躍が目立った。
優勝の原動力となったエースの山本由伸は、史上初となる2年連続投手四冠(最多勝、最優秀防御率、最多奪三振、最高勝率)を達成し、昨年に続いて投手最高の栄誉である沢村賞を受賞。都城高から2016年ドラフト4位と決して指名順位は高くなかったが、高卒6年目にして世代を超え、球界を代表する投手となった。
また、オリックスは同年のドラフトで山﨑颯一郎(敦賀気比高)も6位指名している。入団後にトミー・ジョン手術を受けたものの、昨季一軍デビューを果たし、先発として2勝をマーク。今季は終盤戦から中継ぎとして起用され勝ちパターンに入り、クライマックス・シリーズ(CS)でも160キロを計測するなど一気に頭角を現してきた。
オリックスは大学生や社会人の即戦力候補と呼ばれる選手ではなく、ダイヤの原石である高卒の選手を中位・下位で指名し、時間をかけて育ててきたことが功を奏したといえるだろう。
この2016年のドラフト会議を振り返ってみると、オリックスのように、中位・下位で指名された高卒の投手たちが複数ブレイクしている。
世代トップBIG4は苦戦
セ・リーグでは阪神の浜地真澄(福岡大大濠高ドラ4)もブレイクした。浜地は19年に21試合に登板したものの以降は伸び悩み、昨シーズンはわずか4試合の登板にとどまっていた。しかし今年は、52試合の登板で防御率1.14と大ブレイク。最終的には7回を任され21ホールドを挙げた。
また、才木浩人(須磨翔風高⇒ドラ3)も躍進した。20年にトミー・ジョン手術を受けたことで今季は3年ぶりの一軍登板だったが、9試合(先発8試合)で4勝1敗、防御率1.53と復活。登板間隔を空けながらではあるが、終盤戦は先発ローテーションの一角を担った。
その他では、梅野雄吾(九産大九産高⇒ヤクルト3位)や藤嶋健人(東邦高⇒中日5位)らが、すでに中継ぎとして一軍の戦力となっている。
だが、ドラフト当時に「高校生BIG4」と呼ばれた投手たちは苦しんでいる。
ここまで結果を残しているのは、通算28勝を挙げている今井達也(作新学院高⇒西武1位)だけ。今井は今季も故障離脱がありながら5勝をマークするなど、CSでも先発の大役を任されており、西武の主軸として期待されている存在であることは間違いない。
その他の3人を見ると、高橋昂也(花咲徳栄高⇒広島2位)は昨シーズンこそ5勝をあげるも、今季は一軍未登板。藤平尚真(横浜高⇒楽天1位)は野村克也元監督の背負っていた背番号「19」を与えられたものの、すでに「46」へと変更。今季も8試合で1勝0敗、防御率3.97と結果を残すことができていない。そして、大型左腕として期待された寺島成輝(履正社高⇒ヤクルト1位)は、この秋に戦力外通告を受けた。
ここまで振り返って見えてくるのは、アマチュア時代に高評価を得てドラフト上位で指名を受け、なおかつプロ入り後も活躍することは簡単ではないということ。逆にドラフト時は世代のトップクラスでなくても、数年後には球界を背負う存在に飛躍する可能性もあるのがプロ野球という世界なのだろう。
▼ 2016年ドラフトで指名された高卒の投手
藤平尚真(横浜高⇒楽天1位)
寺島成輝(履正社高⇒ヤクルト1位※22年戦力外)
今井達也(作新学院高⇒西武1位)
堀瑞輝(広島新庄高⇒日本ハム1位)
古谷優人(江陵高⇒ソフトバンク2位※21年自由契約)
高橋昂也(花咲徳栄高⇒広島2位)
島孝明(東海大市原望洋高⇒ロッテ3位※19年戦力外)
梅野雄吾(九産大九産高⇒ヤクルト3位)
才木浩人(須磨翔風高⇒阪神3位)
浜地真澄(福岡大大濠高⇒阪神4位)
山本由伸(都城高⇒オリックス4位)
京山将弥(近江高⇒DeNA4位)
藤嶋健人(東邦高⇒中日5位)
髙田萌生(創志学園高⇒巨人5位⇒楽天)
高山優希(大阪桐蔭高⇒日本ハム5位※22年戦力外)
アドゥワ誠(松山聖陵高⇒広島5位)
長井良太(つくば秀英高⇒広島6位※19年戦力外)
大江竜聖(二松学舎大付属高⇒巨人6位)
山﨑颯一郎(敦賀気比高⇒オリックス6位)
種市篤暉(八戸工大一高⇒ロッテ6位)
野元浩輝(佐世保工高⇒楽天7位※19年戦力外)
根本薫(霞ヶ浦高⇒オリックス9位※20年戦力外)
榊原翼(浦和学院高⇒オリックス育2位※22年戦力外)
長谷川宙輝(聖徳学園高⇒ソフトバンク育2位⇒ヤクルト)
堀岡隼人(青森山田高⇒巨人育7位)
※育成は支配下登録された選手のみ
※入団拒否した選手を除く
※数字は2022年シーズン終了時点