最速150キロ超えの高卒左腕・門別啓人を2位指名
1985年以来2度目の日本一を目指す阪神は、2005年にリーグ優勝へ導いた岡田彰布監督が復帰。頂点を知る指揮官のもと、この秋からチーム再編に着手している。
岡田監督の“初仕事”となったドラフト会議では、巨人と1位指名が重複した浅野翔吾(高松商)の当たりくじは引けなかったものの、外れ1位で同じ右の外野手である森下翔平(中央大)を指名。ドラフト翌日には中央大へ岡田監督が直々に足を運び森下と握手を交わした。森下は長打力のある外野手。即戦力としての活躍も見込まれ、球団の期待も大きい。
指揮官も熱望していた強打の右打者の交渉権を獲得した阪神が、続く2位で指名したのは門別啓人(東海大札幌高)だった。門別は甲子園出場経験こそないが、ストレートの最速が150キロを超えるなど、世代ナンバーワン左腕とも称されていた逸材だ。
1年目から一軍でバリバリ活躍することを期待したいものの、そこはまだ高校生。いきなり戦力として計算することは現実的ではないかもしれない。
近年の阪神の高卒投手では、西純矢(2019年1位)が2年目に一軍デビューを果たしプロ初勝利をマーク。3年目の今シーズンは一軍で77回1/3を投げ6勝を挙げた。
これが門別にとってもひとつの目安となるだろうか。まずは二軍で身体をつくるのが1年目のテーマとなる。
第一次政権を支えた井川以降、高卒の先発左腕は不在
現在の阪神投手陣の顔ぶれを見ると、西純だけでなくその他にも高卒投手が育ってきている。先発では才木浩人、中継ぎでは浜地真澄が6年目の今シーズン躍動した。
その他にも、藤浪晋太郎や秋山拓巳といった高卒の投手たちが先発ローテーションに入り、これまでに複数回の2桁勝利をマーク。阪神という球団が高卒の投手たちをしっかりと戦力に変えてきたことは、門別にとっても心強いことだろう。
しかし、その多くが右腕ばかり。高卒の左腕では、育成ドラフトから這い上がってきた島本浩也が中継ぎで目立つくらいで、昨季に飛躍の兆しを見せていた及川雅貴は故障の影響もあり今季1試合どまり。先発投手は岡田監督の第一次政権でもある2000年代初頭を支えた井川慶以降、まったく出てきていない。
高卒という括りを外せば、現在も岩貞祐太、岩崎優、伊藤将司、故障で離脱しているが高橋遥人ら多くの左腕がいる。少し前では能見篤史(現オリックス)、岩田稔、榎田大樹らもチームを支えていた。投手コーチが入れ替わりながらもチームとして左腕を指導し、しっかりと戦力に変えてきたという流れがある。
振り返ってみると、第一次岡田政権は星野仙一監督と野村克也監督がエースに育てた井川が先発ローテーションの柱だった。
井川は岡田監督就任から3年連続2桁勝利と規定投球回を達成。3年間で41勝29敗と貯金を12個もつくり、MLB挑戦のために海を渡った。
岡田監督が勝利の方程式“JFK”を作り上げた功績はもちろん忘れてはならないが、2005年のリーグ優勝は前任の監督たちが残した遺産をしっかりと受け継いだことでなし得たともいえる。
今度は17シーズンぶりに阪神の指揮を執る岡田監督の番だ。第二次政権では「アレ」を目指すのはもちろんのこと、阪神の未来を担う指導者、そして選手を育成するのがミッションでもある。井川と同じ高卒ドラフト2位左腕である門別を次世代のエースへと育て上げることもそのひとつだ。