阪神・湯浅京己も将来的な先発志向を希望
西武の平良海馬が来季から先発に転向することが決まった。
かねてより先発転向の希望を球団に伝えていた23歳の右腕は、今オフの契約更改交渉でも中継ぎでの起用を望む球団と折り合いがつかずに契約更改を保留していたが、球団が折れるかたちで決着を迎えた。
平良は2020年に54試合の登板で防御率1.87という好成績を残してブレイク。今季も61登板と35ホールドポイントはともにリーグ最多を記録し、最優秀中継ぎ投手のタイトルを獲得するなど、不動のセットアッパーとして活躍を続けている。
そんな平良が先発に転向するとなると継投策に大きな影響があり、球団側が中継ぎでの起用にこだわったのもうなずける。ただ、平良自身は2019年から先発転向の希望を伝えており、さすがに今回は妥協できなかったということなのだろう。
また、今季阪神のセットアッパーとして目覚ましい活躍を見せた湯浅京己も、将来的には先発をしたいという旨を明かしている。
理由はさまざまだろう。単純にもともと先発志向が強いということもあれば、あるいは中継ぎ投手の負担増加が問題視されることも多い近年では自身の選手生命を考えて先発を希望する投手もいるかもしれない。
山本由伸と千賀滉大は大成功例
そして、プロ野球においては若手投手をまずは中継ぎでテストするというケースが多いために、その後に中継ぎから先発へ転向してしっかりと結果を出している投手も多い。
現役投手のなかでその代表格となると、まずはオリックスの山本由伸が挙げられる。
山本は高卒2年目だった2018年に主にセットアッパーとして54試合に登板し、4勝2敗32ホールド・1セーブ、防御率2.89の好成績を残して頭角を現した。先発に転向した翌2019年以降の活躍は、野球ファンなら誰もが知るところだ。
また、ソフトバンクのエース・千賀滉大も中継ぎからの先発転向組だ。
高卒3年目だった2013年に中継ぎとして51試合に登板し、1勝4敗17ホールド・1セーブ、防御率2.40の成績を残すと、翌2014年には右肩の違和感により登板数は19試合と限られたものの、1勝1敗3ホールド、防御率はさらに改善して1.99をマークした。
2015年からは先発に転向し、2016年以降は今季まで一度も負け越すことなく7年連続で2ケタ勝利を挙げるなど、チームの大黒柱に成長した。
もちろん、中継ぎからの先発転向がうまくいかなかったケースもある。近年の選手でいうと、楽天・松井裕樹もそのひとりだ。
高卒2年目だった2015年から3年連続で30セーブを挙げるなど守護神として活躍していたが、2020年に先発に転向。しかし、その年の初マウンドから2試合連続で5回をもたずに降板するなど不安定な登板が続き、結果的にシーズン終盤に中継ぎへ再転向することとなった。
松井の場合、今季も防御率1.92を残して最多セーブのタイトルを獲得しており、やはりリリーフのほうが合っているということなのかもしれない。
先発と中継ぎでは調整方法などに大きなちがいがあるというが、平良の場合は一軍公式戦での先発経験はまだない。
果たして、その先発転向はチームにとって吉と出るか凶と出るか。新たな挑戦を見守りたい。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)