コラム 2022.12.26. 06:29

健大高崎のエースが11連続奪三振!「くまのベースボールフェスタ」で躍動したドラフト候補

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健大高崎・小玉湧斗 [写真提供=プロアマ野球研究所]

大規模練習試合でドラフト候補がアピール


 アマチュア野球もすっかりオフシーズンに突入。高校野球は12月から対外試合禁止期間に入ったが、その直前の11月下旬に三重県熊野市で毎年行われている大規模な練習試合がある。「くまのベースボールフェスタ 練習試合inくまの」だ。

 これは2002年に「くまのスタジアム」が開場したことをキッカケにスタートした取り組みで、全国レベルの強豪が毎年参加。今年の参加チームは以下の通り。


▼ 「くまのベースボールフェスタ」参加チーム
昴学園(三重)
近大高専(三重)
尾鷲(三重)
津田学園(三重)
弘前東(青森)
鶴岡東(山形)
健大高崎(群馬)
昌平(埼玉)
関東一(東京)
大府(愛知)
岐阜城北(岐阜)
敦賀気比(福井)
京都国際(京都)
近大新宮(和歌山)
創志学園(岡山)


 県外からの11校に三重県内からも4校が集まり、11月26日・27日の2日間で計30試合を実施。

 今回はその中でアピールに成功した来年のドラフト候補をピックアップして紹介したい。


健大高崎・小玉湧斗が驚異の奪三振ショー


 まず投手で圧巻のパフォーマンスを見せたのが、健大高崎のエース・小玉湧斗(2年/右投右打)だ。

 旧チームから投手陣の一角として活躍しており、新チームからは背番号1を背負うと、秋の関東大会でも青藍泰斗(栃木)や横浜(神奈川)を相手にいずれも2失点完投勝利と好投。チームの準決勝進出に大きく貢献した。

 くまのベースボールフェスタでは、2日目の近大新宮戦に先発。立ち上がりから三振を量産すると、2回二死から6回の一死まで11人連続奪三振を記録するなど、6回を投げて被安打2、14奪三振で無失点と見事なピッチングでチームを勝利に導いた。


 投手としては決して大柄ではないが、軸足にしっかり体重を乗せてからスムーズにステップすることができており、下半身の強さとバネを感じるフォームが持ち味。ギリギリまで左肩が開くことなく、それでいて球持ちも長いため打者は振り遅れることが多い。

 この日の最速は142キロ(自己最速は146キロ)と驚くような数字ではないが、打者の手元での勢いは申し分なく、シーズン終盤の11月末ということを考えると、まだまだ速くなる可能性は高いだろう。

 加えて100キロ台の大きいカーブで打者の目線を変えることができ、120キロ台中盤のスライダーと110キロ台のチェンジアップも空振りを奪えるボールで変化球の質も高い。


 ちなみに、相手の近大新宮は今秋の和歌山県大会準優勝チームである。近畿大会にも出場しており、そんなチームをここまで完璧に抑え込める投手はそうそういないだろう。

 健大高崎は選抜出場の可能性も高い。甲子園での投球次第では、一気に秋の有力候補になる可能性も高そうだ。


大府の大型右腕・林祐作に高い将来性



 一方、完成度はまだまだ低いものの、高い将来性を感じさせたのが大府の林祐作(2年/右投右打)だ。

 2日目の健大高崎戦では2点をリードした7回からマウンドに上がると、3イニングを被安打1、無失点の好投。まだまだ体つきは細く、ステップが狭いのは課題だが、力みなく上から腕を振ることができ、ボールの角度は大きな武器だ。この日の最速は136キロだったものの、まだまだ速くなりそうな雰囲気も十分ある。

 188センチの大型投手でありながら、指先の感覚も悪くなく、コントロールもまとまりがある。本格化するのは20歳を超えてからのようなタイプに見えるが、春にスピードが140キロを超えてくるようであれば、一気にプロからの注目度は高くなるだろう。

 その他の投手では下級生ながら最速141キロをマークした吉留勇太(近大高専/1年/右投右打)、会場の都合で残念ながら現場では確認できなかったが、サウスポーから140キロを超えるスピードをマークしていたという杉原望来(京都国際/2年/左投左打)も来春以降楽しみな存在だ。


野手は遊撃手の2選手が投打で活躍



 野手で光るプレーを見せたのは、創志学園の上田晴(2年/右投右打)と健大高崎の半田真太郎(2年/右投右打)。遊撃手の2人だった。

 上田は今夏の甲子園でもレギュラーとして出場していたが、初日の近大高専戦ではシートノックから軽快な動きを見せ、実戦でも三遊間の深い位置からノーステップで見事なスローイングを見せるなど、さすがというプレーを見せた。

 打撃も筆者が見た試合では快音は聞かれなかったものの、リストの強さは目立つものがある。中国地方で注目を集める存在となりそうだ。


 半田は小柄ながら抜群のフットワークとパンチ力が持ち味で、秋の関東大会でも3試合で打率5割をマークしている。

 初日の敦賀気比戦は、四球と内野安打で出塁して盗塁を決め、2日目の近大新宮戦では度々軽快な守備を披露。選抜でもその攻守に注目が集まることになるだろう。




 その他の野手では、旧チームから不動のレギュラーである敦賀気比の浜野孝教(外野手/2年/右投左打)がさすがのバットコントロールを見せたほか、京都国際の4番に座る梶島天(一塁手/2年/右投右打)が力強いバッティングでアピールしていた。

 かつて「くまのベースボールフェスタ」に参加した大谷翔平(現・エンゼルス)や西純矢(現・阪神)のような「ドラフト上位指名は間違いなし」という選手は不在という印象だったが、それでも将来が楽しみな選手は少なくなかった。

 高いレベルの試合を糧にして成長した選手が多く、ここで挙げた選手の来春以降の飛躍に期待したい。


文=西尾典文(にしお・のりふみ)
☆記事提供:プロアマ野球研究所
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