第39回:試される若い力
コロナ禍で初めて入場制限がなくなった2022年のプロ野球。満員の球場で多くのファンを沸かせた選手のひとりが、ヤクルトの村上宗隆だ。
今年もスワローズの4番を務めた22歳は、史上最年少で三冠王を獲得。さらに、日本選手最多となるシーズン56号を達成するなど、球界の歴史を大きく塗り替えた。
村上は「数字としていい成績を残せた。目標にしてきたことは達成できた。すごくいい一年になりました」と、納得の22年シーズンを振り返った。
今季のヤクルト打線は12球団トップの619得点を誇った。その中心にいたのが村上で、両リーグ最多の114得点をマーク。それに次いで83得点を挙げたのが、村上と17年ドラフト同期入団の塩見泰隆だ。
リードオフマンとして打線をけん引した塩見は今季、打率.276、出塁率.345、16本塁打、54打点。盗塁数はチームトップの24個を記録した。
高津臣吾監督の参謀役としてチームを支えた松元ユウイチ作戦コーチは、今年の塩見について、出塁率を評価しながらもこのように話している。
「本人も反省するところはたくさんあると思います。三振を減らすとか、自分のヒットゾーンを広げるためには何をしなければいけないとか、たくさん方法はあると思うので、そこをまた、本人とバッティングコーチと話してやっていきたい」
開幕前に塩見自身も課題に挙げていた三振数に関しては、昨季の156三振から30個以上も減らし今季122個。打席数が30打席以上増えているなか、着実に進化の跡を示しているものの、1番打者としてはこの数字をさらに少なくしていきたい。松元コーチがあえてそれを指摘したのも、塩見の能力を高く評価しているからだ。
課題を克服すれば、3割30本30盗塁の偉業“トリプルスリー”へ期待が膨らむ29歳。来年3月にはWBC出場の可能性もあり、球界を代表するトップバッターへと進化を遂げられるか、注目だ。
長岡の台頭がもたらしたチームの明るい未来
リーグ連覇を果たし、野手陣は若手が力をつけてきている。開幕から遊撃を守り、今季139試合に出場した長岡秀樹の台頭は、チームの明るい未来を予感させた。
松元作戦コーチも長岡の1年間を振り返り、確かな成長を感じ取っていた。
「(長岡は)経験がほぼなくて、最初から自分のできることを常に全力でやってきたことは良かった。試合に出ながら、(守備面では)球際が強くなった。村上がいて、山田(哲人)がいて、アドバイスとかたくさんもらったと思うし、マウンドに行って(投手に)一言声をかけているところを見て成長したなと…」
村上もそうだったが、試合に出続けることで成長し、チームの中心選手になっていった。長岡が示した投手への声がけも、その兆しといえる。
未来の正捕手候補である20歳の内山壮真、外野のレギュラーを狙う23歳の丸山和郁も、来季は出場機会をさらに増やして、将来は主軸としての活躍が期待される。
また、今年のドラフトでも将来性豊かな選手が入団。2位指名の西村瑠伊斗(京都外大西)は高校では投手と外野手だったが、プロでは内野手にコンバートされる。村上と同じく右投げ左打ちの三塁手として育成していくことも考えられる。
3位指名の澤井廉(中京大)は、広角に打ち分けられる左の外野手。目標とする村上の凄さを「シンプルなスイング軌道から広角に飛距離を出せるところ」と口にし、本塁打数では「56本、57本を打っていきたい」と宣言している。
村上が将来的なメジャーリーグへの挑戦を表明し、早ければ2年後にもポスティングシステムを利用して海を渡る可能性がある。
現時点で村上の穴を埋められる選手は他にいない。この先、村上に続く若い中心選手は生まれるか。リーグ3連覇を目指すスワローズが黄金期を築き上げるために、来季以降も若い選手たちの無限の力が試される。
取材・文=別府勉(べっぷ・つとむ)