コラム 2023.01.01. 07:08

大学日本代表合宿にドラフト候補が集結 秋に向けて覚えておきたい投手の有望株

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平成国際大・冨士隼斗 [写真提供=プロアマ野球研究所]

2023年のドラフト候補が松山に集結


 12月2日から3日間にわたり、日米大学野球の代表チーム先行のための侍ジャパン・大学代表の強化合宿が愛媛県松山市の坊っちゃんスタジアムで開催された。

 候補として選ばれたのは、投手20人:野手24人の合計44人。初日と2日目には紅白戦が計3試合、3日目には50メートル走のタイム測定やフリー打撃などが実施されたが、全国から集った精鋭たちの競演とあって、随所にレベルの高いプレーが見受けられた。

 今回はその中から、2023年のドラフト候補になりそうな投手について取り上げてみたい。


“最速155キロ”12月に異次元の投球


 紅白戦は全ての投手が2イニングずつを投げる形で行われたが、最も強烈なインパクトを残したのが平成国際大・冨士隼斗だ。

 投球練習の初球でいきなり151キロをマークすると、実戦が始まっても150キロ以上のストレートを連発。全投手の中で最速となる155キロを計測した。

 ちなみに、20球投じたストレートのうち15球が150キロを超え、その平均球速は150.7キロに達した。短いイニングだったとはいえ、12月の寒い時期にこれだけのスピードが出せるのはまさに“異次元”と言える。

 変化球にはまだ課題が残るものの、コントロールもそこまで荒れているわけではない。冨士から本塁打を放った廣瀬隆太(慶応大)も、紅白戦後の取材では「速くて最初は全然見えていなかったです。今年見たストレートで一番速かったです」と話している。

 全国での実績はないが、秋のリーグ戦ではノーヒットノーランも達成しており、来年はさらに注目を集めることは間違いないだろう。


リリーフならプロでも“即戦力”



 投球内容という点で圧巻だったのが、名城大・松本凌人と法政大・尾崎完太。ともに2回をパーフェクト、4奪三振と打者を寄せ付けなかった。

 松本は2年春からエース格として活躍しており、既に大学日本代表の常連となっている。明治神宮大会でリリーフとしてフル回転したこともあってか、ストレートの最速は147キロにとどまったものの、ボールの勢いは素晴らしく、スライダーやカットボール、シンカーなど変化球も一級品だ。変則フォームでここまでボールの力がある投手は珍しく、リリーフならプロでも即戦力として期待できそうだ。

 尾崎も層の厚いチームにあって1年春からリーグ戦で登板。3年秋は少し調子を落としていたものの、この合宿で復調をアピールした。最速147キロをマークしたストレートはサウスポーらしい角度があり、腕を振って投げられる落差の大きいカーブで緩急をつけられる。貴重なサウスポーだけに春以降も注目だ。





星槎道都大・滝田一希は上位候補に浮上も


 冨士や松本と同じ地方大学勢でアピールに成功したのが、星槎道都大・滝田一希である。

 夏に行われた「タンチョウリーグ」(プロ・社会人・大学による交流戦)のソフトバンク三軍戦では151キロをマーク。6回を無失点、10奪三振と好投して注目を集めると、秋のリーグ戦はエース格として活躍する。

 今回の合宿でも全国から集まった強打者たちを相手に2回を被安打1、無失点と見事な投球を見せ、参加した左投手では最速タイとなる149キロもマークした。少し沈み込んで、そこから体を反らせて腕を振る変則的なフォームだが、躍動感は素晴らしいものがある。

 またストレートだけでなく、腕を振って投げられるチェンジアップもブレーキ抜群。打者の体勢を大きく崩すだけの威力があった。順調にいけば、上位候補となる可能性が高そうだ。


 東京六大学勢では、立教大・池田陽佑と明治大・蒔田稔も2回をパーフェクトと好投。

 池田は最速150キロをマークしたスピードはもちろんだが、高校時代からの持ち味である打者の手元で動くボールを武器に2回をわずか14球で抑え込んで見せた。荘司康誠(楽天1位)などが抜ける来年は、エースとしてかかる期待が大きい。

 蒔田は秋のリーグ戦で防御率4点台と苦しんだが、明治神宮大会に続く好投で復調を印象付けた。大学の先輩である柳裕也(中日)に似たフォームと投球スタイルで、ストレートの勢いは柳の大学時代を上回っているように見える。東京六大学で注目を集めることは間違いないだろう。


例年以上にハイレベル


 一方、2023年は好投手が目白押しの東都大学勢からは、武内夏暉(国学院大)・常広羽也斗(青山学院大)・西舘勇陽(中央大)・大栄陽斗(中央大)・細野晴希(東洋大)の5名が招集され、全員が無失点とさすがの投球を披露。

 また、関西学生から選ばれた真野凜風(同志社大)と谷脇弘起(立命館大)も素材の良さを見せつけている。


 この合宿に参加した3年生投手16人のうち全員が最速145キロを超え、6人が150キロ以上をマークした。

 もちろんスピードだけが全てではないが、昨年の最速が矢澤宏太(日本体育大→日本ハム1位)や曽谷龍平(白鴎大→オリックス1位)の147キロで、2019年も木澤尚文(慶応大→ヤクルト1位)の150キロが最速だったことを考えると、レベルの高さがよく分かる。

 2023年のドラフトでは、ここで挙げた投手の中から何人が名前を呼ばれるのか。今後のアピールが楽しみだ。


文=西尾典文(にしお・のりふみ)
☆記事提供:プロアマ野球研究所
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