コラム 2023.01.03. 07:08

“大学2年”にドラフト候補がズラリ 大学日本代表合宿に集結した金の卵たち

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関西大・金丸夢斗 [写真提供=プロアマ野球研究所]

2024年秋に注目の逸材たち


 12月2日から3日間にわたり、日米大学野球の代表チーム先行のための侍ジャパン・大学代表の強化合宿が愛媛県松山市の坊っちゃんスタジアムで開催された。

 候補として選ばれたのは、投手20人:野手24人の合計44人。初日と2日目には紅白戦が計3試合、3日目には50メートル走のタイム測定やフリー打撃などが実施されたが、全国から集った精鋭たちの競演とあって、随所にレベルの高いプレーが見受けられた。

 今回は、その中から2024年のドラフト候補となる現在2年生の選手を取り上げたい。


関西大・金丸夢斗は2024年の目玉候補?


 投手で見事なピッチングを見せたのが、金丸夢斗(関西大)と徳山一翔(環太平洋大)のサウスポー2人だ。

 金丸は2年生ながら早くも関西No.1との呼び声が高い実力派。春はリーグトップの防御率0.33をマークすると、秋は6勝0敗と圧巻の投球でチームを優勝に導き、自身もMVPとベストナインに輝いている。

 この合宿の紅白戦でも2回を無失点、3奪三振と好投を見せたが、特に圧巻だったのが2イニング目の投球だ。先頭打者から連打を浴びて無死一・二塁のピンチを招いたものの、全く動じることなく後続3人を抑え込んで見せたのだ。

 この合宿での最速は147キロと自己最速の151キロには届かなかったものの、球持ちの長さは素晴らしく、コーナーいっぱいに投げ分けるコントロールも抜群。スライダー、カットボール、チェンジアップ、スプリットといった変化球も一級品だ。順調にいけば、2024年の投手の目玉候補になる可能性は高い。


 一方の徳山は2年秋にリーグ戦デビューしたばかりだが、明治神宮大会では初戦の国際武道大戦で先発を任されると、7回を投げて無安打無失点、4連続を含む9奪三振の快投を披露。その活躍が認められて今回の合宿に招集されると、紅白戦でも2回を被安打1、無失点と神宮大会での好投がフロックではないことを証明した。

下半身の強さと粘りを感じるフォームで、ゆったりとしたモーションから速いボールを投げられるのが大きな特長だ。この合宿でも最速147キロをマークしているが、数字以上に打者の手元で勢いがあり、空振りをとれる球質は魅力。変化球やコントロールは、現段階では金丸に比べると少し落ちるとはいえ、緩急を使えるのも魅力である。来年春以降はエースとしての活躍を期待したい。





日本体育大・箱山優が示したスケールの大きさ


 右投手でスケールの大きさを感じさせたのが、箱山優(日本体育大)だ。

 千葉県内では高校時代から評判だった大型右腕。2年秋はリリーフで11試合に登板し、防御率0.00と見事な成績を残し、最優秀投手のタイトルを獲得した。

 長いリーチを生かした豪快な腕の振りが魅力で、この合宿でも最速147キロのストレートと鋭く変化するスライダーを武器に2回を無失点、3奪三振と好投。特に、右打者の外角に決まるボールは独特の角度があり、打者からすると踏み込むのが難しい。投手陣の層は厚いが、矢沢宏太(日本ハム1位)の抜けた来年は主戦として期待がかかる。


 野手では、ともに広陵出身で、早くからチームの中軸を担っている宗山塁(明治大)と渡部聖弥(大阪商業大)がさすがのプレーを見せた。

 宗山はライトオーバーの二塁打を含む2安打をマーク。無駄な動きのないタイミングの取り方、内角から鋭く振り出せるスイングの軌道はお手本にしたい安定感がある。ショートの守備も、捕球や送球の形が素晴らしく、巧みなハンドリングと低くて伸びるスローイングが一級品だ。

 2年秋終了時点での通算成績は61安打、8本塁打で打率.367。高山俊(明治大→阪神)の持つ通算131安打の更新も十分に射程圏内と言えるだろう。


 一方の渡部は、高校時代は宗山と比べるとそこまで目立つ存在ではなかった。それでも、大学進学後に大きく成長。2年秋にはリーグ新記録となる5本塁打を放った。

 この合宿でも本塁打こそ出なかったものの、紅白戦で出場した野手24人の中でトップとなる4安打をマーク。フリーバッティングでも左右に鋭い当たりを連発した。

 しっかり鍛えてきたことがよく分かる堂々とした体格で、下半身を使ってゆったりとタイミングをとることができ、対応力の高さも見事だ。また外野手としての動きの良さと肩の強さも目立つ。宗山とともに2024年の大学生野手をリードする存在になりそうだ。





“甲子園中止世代”が大学で開花


 その他の野手で存在感を見せたのが井上幹太(金沢学院大)だ。

 神村学園時代から九州では評判の強打者で、3年時に行われたプロ志望高校生合同練習会にも参加している。指名はなかったものの、金沢学院大では入学直後から中軸に定着し、2年秋にはMVPに三冠王、ベストナインとタイトルを総なめにした。

 地方リーグの2年生野手としては唯一の参加だったが、紅白戦では西舘勇陽(中央大)や武内夏暉(国学院大)といった東都を代表する投手から、いずれもセンター前に鋭く弾き返すヒットを放って見せた。

 プロフィールからも分かるように、堂々とした体格でインパクトの強さとパワーは間違いなく全国レベル。少しバットを動かしてタイミングをとるが、鋭い振り出しで対応力も高い。守備・走塁は目立たないものの、貴重な大型の強打者タイプだけに今後も注目を集めることになるだろう。


 今秋のドラフト注目選手だけでなく、2024年のドラフトに向けても楽しみな選手が多くいた今回の代表選考合宿。特に現在大学2年生の世代といえば、高校3年時にコロナ禍が直撃して春夏の甲子園が中止となってしまった世代だけに、大学球界でその才能をさらに大きく開花させてくれることを期待したい。


文=西尾典文(にしお・のりふみ)
☆記事提供:プロアマ野球研究所


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