レギュラー遊撃手たちの成績は?
昨季は5シーズンぶりとなるBクラスに沈んだ巨人。多くの課題が指摘される中、懸念の声が徐々に強まっているのが「ポスト坂本勇人」の育成である。
長年のあいだ巨人の不動のレギュラー遊撃手として君臨してきた坂本だったが、昨季はケガの影響などでシーズン中に2度の出場選手登録抹消を経験。高卒3年目だった2009年から続けていた2ケタ本塁打がついに途絶え、出場試合数が減ったなかで失策を大きく増やしてしまうなど、その衰えが目を引くシーズンとなった。
巨人にとっては坂本の今後の起用法や後継者の育成は大きな課題だが、実は「レギュラー遊撃手」の部分で頭を悩ませているチームは巨人だけではない。
広い守備範囲をカバーするスピードや判断力はもちろん、強肩や正確な送球も含めた総合的な守備力のほか、一軍のスタメンを張る選手となれば一定程度の打撃力も求められる。そんな存在を育てることは、他球団にとっても簡単なことではないのだ。
では、12球団の「レギュラー遊撃手」の昨季成績はどんなものだったのか。2022シーズンの各球団における“遊撃でのスタメン出場が最も多かった選手”の成績を振り返ってみる。
▼ セ・リーグ
・ヤクルト
長岡秀樹(遊撃スタメン:137試合)
試139 率.241 本9 点48 盗塁2 失策13
・DeNA
大和(遊撃スタメン:65試合)
試91 率.247 本1 点18 盗塁1 失策4
・阪神
中野拓夢(遊撃スタメン:135試合)
試135 率.276 本6 点25 盗塁23 失策18
・巨人
坂本勇人(遊撃スタメン:82試合)
試合83 率.286 本5 点33 盗塁2 失策11
・広島
小園海斗(遊撃スタメン:124試合)
試合127 率.266 本7 点38 盗塁2 失策13
・中日
土田龍空(遊撃スタメン:57試合)
試合62 率.248 本0 点12 盗塁3 失策5
▼ パ・リーグ
・オリックス
紅林弘太郎(遊撃スタメン:126試合)
試合130 率.224 本6 点32 盗塁2 失策11
・ソフトバンク
今宮健太(遊撃スタメン:125試合)
試合130 率.296 本7 点47 盗塁3 失策7
・西武
源田壮亮(遊撃スタメン:108試合)
試合108 率.266 本2 点17 盗塁12 失策6
・楽天
小深田大翔(遊撃スタメン:94試合)
試合118 率.267 本2 点29 盗塁21 失策10
・ロッテ
エチェバリア(遊撃スタメン:60試合)
試合76 率.222 本2 点20 盗塁4 失策5
・日本ハム
上川畑大悟(遊撃スタメン:62試合)
試合80 率.291 本2 点17 盗塁8 失策3
上位球団ほど遊撃を固定できている?
坂本の打率.286という数字は、上記12選手のなかでは今宮健太(ソフトバンク)の.296と上川畑大悟(日本ハム)の.291に次ぐものであり、決して悪い数字ではない。
ただし、これまで長きにわたってファンを沸かせてきた坂本の力を考えると、やはり“5本塁打”という数字には若干の寂しさも感じる。
また、こうして見ると、100試合以上に遊撃手としてスタメン出場を果たし、はっきりと「レギュラー遊撃手」といえる存在は上述した今宮のほかに長岡秀樹(ヤクルト)、中野拓夢(阪神)、小園海斗(広島)、紅林弘太郎(オリックス)、源田壮亮(西武)の6人になる。
球界では「センターラインを固定できるチームは強い」とよく言われるが、特にパ・リーグは遊撃手を固定できているチームほど上位に進出していると見ることもできるだろう。裏を返せば、下位球団を中心にレギュラー遊撃手の育成に苦悩しているチームが多いと言える。
とはいえ、ひとりの若手の台頭、あるいはルーキーなどの新戦力により、それまでスタメンが日替わりだったポジションが一気に埋まることがあるのも事実。昨季の長岡や2021年の中野、紅林などはまさにその好例だ。
レギュラーが固定されていないチームのファンからすれば、新たなシーズンを迎えるにあたって、誰がレギュラーをつかみ取るのかという点も大きな楽しみだろう。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)