コラム 2023.02.07. 07:08

「なぜクビにした」と惜しむ声も…巨人から他球団に移籍した“助っ人列伝”

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巨人退団後も日本で活躍したホセ・ロペス (C) Kyodo News

昨オフは3人が他球団へ


 春季キャンプが開幕し、2023年シーズンに向けた戦いがスタートしたプロ野球。

 まず注目ポイントになるのが、各球団の新戦力たち。新外国人選手も話題を集めているが、その一方で今年は前阪神のジョー・ガンケルがソフトバンクへ、前中日のアリエル・マルティネスが日本ハムへ移籍するなど、新天地でプレーすることになった助っ人たちも目につく。


 特に移動が多かったのが“前巨人”組。グレゴリー・ポランコとC.C.メルセデスは揃ってロッテに移り、育成選手のエスタミー・ウレーニャも楽天へ。同年オフに3人の外国人選手がNPBの他球団に移籍をするのは、球団史上初の珍事だという。

 そこで今回は巨人から他球団に移籍をし、日本でのプレーを続けた助っ人たちの“その後”に注目。どんな選手がいたのか、彼らの顔ぶれを振り返ってみたい。


韓国・斗山→巨人→韓国・斗山→楽天


 まず一人目が、188センチの長身左腕・ゲーリー・ラスだ。

 2002年に韓国・斗山で16勝を挙げた実績を買われ、翌03年に巨人入り。5月9日の中日戦で初登板初先発すると、長身と長い腕を利して変化球を巧みに投げ分け、7回を4安打・無失点に抑えた。

 ところが、5-0とリードして降板後、8回・9回にリリーフ陣が炎上してまさかの逆転負け。勝利投手になり損ねてしまう。そんな不運にもめげず、5月16日の阪神戦では8回を6安打・無失点の好投で来日初勝利を挙げた。


 だが、6月4日の横浜戦では1試合3ボーク、7月12日の阪神戦では10失点を記録するなど、好不調の波が激しく、終わってみれば3勝4敗で防御率4.14。たった1年で戦力外になった。

 翌04年は斗山に復帰し、17勝を挙げて最多勝に輝いたラスは、今度は投手層の薄い新球団・楽天に移籍。しかし、ここでも3勝9敗の防御率6.33に終わり、これまた1年で退団となった。


日本ハム移籍するも「防御率54.00」


 2人目はドミニカ出身の右腕ウィルフィン・オビスポだ。

 2007年に育成で入団し、09年に故障のマーク・クルーンに代わって一軍昇格。6勝1敗とまずまずの成績を残したばかりでなく、クライマックスシリーズの中日戦、日本シリーズの日本ハム戦において、育成出身選手として史上初のポストシーズン勝利も記録した。


 その一方で、同年4月28日の広島戦では、ベンチ前で投球練習中に3度にわたって暴投。試合を中断させたことから、渡田均球審にベンチに戻るよう命じられる“珍ハプニング”もあった。

 その後、11年に須永英輝、紺田敏正との交換トレードで日本ハムに移籍したが、登板2試合で防御率54.00と結果を出せず。1年で戦力外通告を受けている。


トレードでソフトバンクに移籍も…成績が振るわず退団


 3人目はベネズエラ出身の右腕レビ・ロメロ。

 09年に育成選手として入団し、翌10年6月に支配下登録をかち取ると、6試合に登板。196センチの長身から繰り出す150キロ台の速球を武器に、1勝0敗、防御率0.00と中継ぎとして安定した成績を残した。

 11年は41試合に登板し、1勝3敗11セーブ・8ホールドを記録するも、抑えとしては安定感に欠けるシーンも目立ち、翌12年6月に2対2の交換トレードでソフトバンクへ。

 だが、新天地でも巨人時代同様、走者を出すと乱れる欠点を修正できず、登板3試合で防御率10.13と振るわないまま、退団となった。


DeNAで大活躍したホセ・ロペス


 巨人から他球団に移籍をした外国人選手の中で、最も活躍した選手と言えば、メジャー通算92本塁打を記録したベネズエラ出身の内野手ホセ・ロペスだろう。

 2013年に巨人の歴代助っ人として初めて初年度に打率.303をマークし、18本塁打・55打点。一塁守備でもゴールデングラブ賞を獲得するなど、攻守にわたってリーグ優勝に貢献した。

 日本シリーズ第6戦では楽天・田中将大から本塁打を放った直後、挑発的なガッツポーズを見せ、マウンドの田中と口論しながらダイヤモンドを一周したシーンも懐かしく思い出される。


 ところが、翌14年もチーム最多の22本塁打を記録しながら、打率.243がネックとなり自由契約に。

 だが、翌15年は長打力を見込まれてトニ・ブランコの後釜としてDeNAに迎えられると、16年から2年連続30本塁打以上を記録するなど、頼れる中軸打者として長く活躍した。巨人内部でも「あんな優良助っ人を何でクビにしちゃったんだろう」と惜しむ声が出たといわれる。


大田泰示につづけ…?


 最後に紹介するのは、メキシコ出身の内野手クリスチャン・ビヤヌエバだ。

 18年にパドレスで20本塁打を記録した長打力を買われ、翌19年に退団したケーシー・マギーの穴を埋めるべく、右の長距離砲として入団。「(本塁打を)33本以上打ってほしい」という原辰徳監督の願いから背番号33を着けた。

 しかし、20本塁打の一方で104三振という不安定さは日本でも矯正できず。出場73試合で8本塁打の52三振。4月21日の阪神戦では、一塁走者として二塁に滑り込んだ直後、ベース上に立ちはだかって両手で「セーフ」を示した珍パフォーマンスを見せ、「守備妨害ではないか」と物議をかもした。


 1年で巨人をお払い箱になったが、捨てる神あれば拾う神あり。リーグ唯一のチーム本塁打2ケタ台(93)にとどまった日本ハムが、長打力不足解消と正三塁手不在のチーム事情から“一石二鳥”とばかりに獲得。

 同じ巨人→日本ハムルートで長距離打者として開花した“第2の大田泰示”の期待もかけられたが、出場54試合で4本塁打と戦力になれず、こちらも1年限りで戦力外になった。

 こうして振り返ってみると、“失敗例”がほとんどだが、ロペスのようにハマった例もある。新天地で3選手がどんな成績を残すか注目してみたい。


文=久保田龍雄(くぼた・たつお)

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