コロンビア野球の歴史
昨年のカリビアンシリーズはラテンアメリカ野球の歴史において大きなエポックとなった。
2020年大会からこの大会に参加を認められたコロンビアリーグのチャンピオンであるバランキージャ・カイマネスが、決勝戦でホスト国ドミニカのシバオ・ヒガンテスを破り、初優勝を遂げたのである。
ドミニカ、プエルトリコ、ベネズエラ、メキシコのラテンアメリカビッグ4に加え、“アマチュアの雄”ことキューバが君臨するラテンアメリカ野球界に、「サッカーの国」のイメージが強いコロンビア勢が風穴を開けた大勝利であった。
この国に野球が伝わったのは、1870年代のこととも言われている。世紀が変わる頃には、カリブ海沿岸の2つの都市、カルタヘナとバランキージャでは確実にプレーされていたようである。
そしてこの両都市は、その後もコロンビア野球の中心地であり続けている。1902年には、内陸部の都市メデジン出身のルイス・カストロが、ラテンアメリカ出身者として初めてフィラデルフィア・アスレチックスでメジャーデビューを飾った。
世界野球における地位がぐんぐん向上中
20世紀の前半はこの国の野球界にとって最初のピークで、自国初開催となったワールドカップ1947年大会において初優勝をなし遂げると、翌年にはプロリーグが発足した。
当初サマーリーグとして始まったリーグ戦は、1953年にウインターリーグ化するが、このリーグは1957~58年シーズンをもって終了する。
この間、1955年2月には春季キャンプの一環として巨人が中南米遠征を行い、コロンビアでも試合を行っている。
プロリーグはその後、1979年冬に復活。この2代目リーグは1987~88年シーズンまで開催されるが、ここでは日米でスラッガーとして活躍したセシル・フィルダー(元阪神など)もプレーした。
現在のプロリーグは3代目で、1993年に復活したもの。コロンビア人メジャーリーガーで最も成功した選手のひとりであるエドガー・レンテリア(元ジャイアンツなど)や、今回の代表監督でソフトバンクでもプレーしたホルベルトとその弟・オーランド(元ホワイトソックスなど)の“カブレラ兄弟”もここでプレーした。
2008年からはニカラグアリーグチャンピオンとの国際シリーズが始まり、2013年にはパナマ、メキシコを加えたラテンアメリカンシリーズに発展したが、上位シリーズに位置付けられるカリビアンシリーズへの参加はプレーレベルを理由に長らく認められなかった。
それでも、2016年春にパナマシティで行われたWBC予選・決勝でホスト国パナマを破り本戦出場を決めると、翌年の本戦・1次ラウンドでカナダ相手に初勝利を挙げるなど、着実にその世界野球における地位を高め、2020年のカリビアンシリーズ出場につなげていった。
日本との交流は巨人の遠征以降皆無と言ってよかったが、現行プロリーグ発足後の2001~02年シーズンに4人の日本人選手がプレーして以来、2011年からは独立リーグが選手を派遣するなど、人的交流が行われるようになっている。
メジャー×マイナー×メキシカンリーガー
今回の代表チームは、メジャーリーガーを軸にマイナーリーガー、メキシカンリーガーが脇を固める布陣となる。
その中には、西武と育成契約を結んだJ.ヘレラの名もある。層の薄さは、WBCルールを利用してベネズエラからの“助っ人”で補っている。
先発の1番手には昨季パイレーツとカージナルスで計32試合に先発し、6勝を挙げたJ.キンタナ(メッツ)の名が挙がる。2番手は韓国リーグのKTで昨年までの3シーズンで32勝を挙げたW.クエバス(メキシコシティ/メキシカンリーグ)が務めることになるだろう。
リリーフ陣の中心は、パドレスで5勝5ホールドのN.クリスマットに託したい。これに現在FAのJ.ロメロ(前ツインズ)や、アメリカ独立リーグ最高峰のアトランティックリーグで防御率1.17を記録したA.アルメイダ(ヨーク)が加わる。
クローザー候補としては、ウインターリーグのメキシカンパシフィックリーグで20セーブを挙げブレイクした新鋭E.アルカラ(ベラクルス)、あるいは21セーブのY.ゴメス(ベラクルス)らのメキシカンリーグに在籍する投手が務めることになるだろう。
彼ら投手陣をまとめるのは、ロッキーズの正捕手、E.ディアスだ。
打線の方に目を向けると、今季から大谷のチームメートとなるG.ウルシェラ(エンゼルス)、昨季は規定打席には届かなかったものの、打率3割をマークしたH.ラミレス(レイズ)というメジャーのレギュラー級がけん引することになる。
彼らに加え、昨年メジャーデビューしたJ.ディアス(アスレチックス)、メジャーでもプレー経験がありこの冬のシーズンはコロンビアで打率.333をマークしたA.サンチェス(カルタヘナ)らが脇を固める。
コロンビアは1次ラウンドをアリゾナ・フェニックスで迎える。このプールCには優勝候補筆頭のアメリカに加え、メキシコ、カナダ、そして初出場のイギリスが控えている。
2次ラウンド進出を考えると、アメリカ戦を捨てゲームにして、格下のイギリス戦は確実に取りにいくというのが現実的な戦略だろう。そのうえでメキシコ、カナダ戦をいかに取るかが重要になる。
文=阿佐智(あさ・さとし)
メンバー
<投手>
22 A.アルメイダ
26 J.ロメロ
29 R.ゴメス
30 Y.ゴメス
32 W.クエバス
52 R.サンマーティン
53 R.ガリンド
58 E.アルカラ
66 G.スニガ
72 P.ガルシア
74 N.クリスマット
90 J.ビバス
93 D.コレア
98 J.ヘレラ
<捕手>
12 G.カンペロ
20 M.ビロリア
35 E.ディアス
38 J.アルファロ
<内野手>
3 D.ヘレラ
9 A.サンチェス
11 F.ペルトゥス
13 J.ディアス
27 E.メンドーサ
39 G.ウルシェラ
77 D.フリアス
<外野手>
6 J.マリアガ
36 O.メルカド
43 H.ラミレス