コラム 2023.03.17. 18:00

神から選ばれし者【2023年版 大谷翔平 大研究】

無断転載禁止
侍ジャパン・大谷翔平

第3回:“大谷旋風”が吹き荒れた東京ラウンド


 負ければ終わりの一発勝負。侍ジャパンがイタリアを撃破して準決勝に駒を進めた。

 ヒーローのお立ち台は3ランを含む5打点の岡本和真選手に譲ったものの、大谷の存在感はこの日も際立っていた。

「三番・投手」の二刀流で先発。5回途中2失点の投球は、本来の力量からすれば不本意だったかもしれない。打撃でも“怪物打”は見られなかったが、それでも気迫を前面に押し出したプレーで大仕事をやってのける。

 3回無死一塁の場面。イタリアの守備陣が一塁側に大きく移動する「大谷シフト」を敷くと、意表を突いたセーフティーバントを三塁前に転がした。相手投手が慌てて一塁に悪送球する間に(記録は内野安打とエラー)一、三塁。吉田正尚選手の遊ゴロの間に先制点を挙げると、二死後に岡本の3ランが飛び出した。

 主役ではない。フォア・ザ・チームに徹した大谷の職人技が先制の4点を演出した。

 160キロ超の快速球に、150メートル超えの特大アーチが二刀流の代名詞だが、俊足を加えれば立派な「三刀流」。メジャーでも21年シーズンには26盗塁を記録している。この場面でも大切な準々決勝。今、自分が何をやればチームの勝利に近づくか? 瞬時に判断して、しかも的確に仕事を果たしている。だから、ベーブルースを超え、世界最高の選手の称号が与えられる。野球の神様はどれだけの才能を大谷に授けているのだろうか。

 6年ぶりに開催されるWBC大会。日本中が侍ジャパンの話題で持ち切りだ。

 初戦となった中国戦にテレビ視聴率は41.9%を記録すると、続く韓国戦が44.4%、第3戦のチェコ戦43.1%で、予選リーグ最終の豪州戦が43.2%とすべて40%台を越した。(関東地区、ビデオリサーチ調べ)そしてイタリア戦は48%だ。

 ちなみに野球の歴代視聴率トップは1994年の巨人が中日に最終戦で優勝を決めた一戦の48.8%。当時の野球人気は高く、現在では日本シリーズでも20%台に届けば上出来と言う時代背景を考えれば、同等以上の数字である。

 さらに付け加えれば、大谷と佐々木朗希投手の出身地である岩手では大谷が先発した中国戦で56.8%、佐々木が投げたチェコ戦では62.6%を記録している。青少年の野球離れや、人気低落を危惧するムキもあるが、関係者も胸をなで下ろすWBC特需である。


広告業界でも際立つ唯一無二の価値


 大谷フィーバーはグラウンドにとどまらない。この大会のテレビ中継を見ていると大谷銘柄のCMがやたらと目につく。

 16日にテレビ朝日系列で放送されたイタリア戦だけでも「ニューバランス」「コーセー」「バンテリン(興和)」「三菱UFJ銀行」「セールスフォース」の5社が大谷を起用したCMを流している。昨年、大谷がCM契約を結んだのは19社と言われている。

「世界一のレベルにあるメジャーリーグで二刀流と言う特異な才能を発揮するナンバーワン選手。加えて甘いルックスとさわやかさもある。どんな業種でもCMに起用したいはず」と、ある広告代理店の関係者は唯一無二の存在を裏付ける。仮にCM出演料を1社1億円として約20億円近い大金を手にする計算だ。大谷のすさまじさはこの業界だけを見てもけた外れである。

 予想を上回る“大谷旋風”が吹き荒れた東京ラウンド。決戦の場は米国・マイアミに移り、準決勝と決勝が行われる。(決勝は日本時間22日午前8時開始予定)エンゼルスとの契約で準決勝以降の登板は不可とされるが、それならバットと足で世界一に貢献するだけだ。

 世界もうらやむ日本の至宝。対戦国に大きな衝撃を与え、侍ジャパンのチームメイトにもこれ以上ない刺激をもたらした。

“大谷劇場”の最終章に、神はどんなドラマを用意しているのだろうか?


文=荒川和夫(あらかわ・かずお)
ポスト シェア 送る

もっと読む

  • ALL
  • De
  • 西