コラム 2023.03.27. 18:00

超大物助っ人、バウアーはDeNAの救世主となるか?【白球つれづれ】

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入団会見を行ったDeNAのトレバー・バウアー [写真=萩原孝弘]

白球つれづれ2023~第13回・サイヤング賞右腕はDeNA王座奪還の切り札となるのか?


 WBCの侍ジャパン世界一の前に、影の薄かったNPBのオープン戦が26日、全日程を終了した。

 12球団中、11位の不成績で終わったDeNAの評価が分かれている。

 昨年は前年の最下位からヤクルトに次ぐ2位に躍進。今季こそ25年ぶりの優勝に向けて照準を合わせているが6勝13敗と調子が上がらないまま、開幕を迎えることになった。

 投打の両輪である今永昇太投手と牧秀悟選手が日本代表入りしたため、戦力層が薄くなったのが要因とも言えるが、それは各球団とも似たり寄ったり。それ以上に主力選手の出遅れが気にかかる。

 中でも首脳陣が頭を悩ませているのが大貫晋一投手の戦列離脱である。

 キャンプ終盤の2月28日に右肩肉離れを発症、昨年今永と並ぶ11勝をマークした右のエース格が開幕を絶望視されている。加えて、今季の復活が期待された主砲のトレバー・オースティン選手も右肘手術の影響から、未だにファームで調整中だ。いずれもリーグ制覇のためには欠かせないキーマン達だから一刻も早い復帰が望まれる。


「3月の陣」では、出遅れたチームにあって戦力強化のビッグニュースもある。

 メジャーの最優秀投手に贈られるサイヤング賞受賞歴のある超大物、トレバー・バウアー投手の加入だ。

 2015年から19年にかけて5年連続2ケタ勝利をはじめ、通算83勝の右腕。最速159キロのストレートと多彩な変化球を駆使、イメージ的にはダルビッシュ有投手(パドレス)を、さらに上回る怪腕と言っていいだろう。

 ドジャース在籍時の21年の年俸は3133万ドル(当時のレートで約41億9800万円)の大エースが、DeNAとの契約では単年4億円(出来高含む、推定)と超安値。その背景には米球界を揺るがしたスキャンダルがある。

 21年のシーズン中に知人女性に対する暴行疑惑が発覚。その後、MLBから2シーズン分に相当する324試合の出場停止処分を受け(その後194試合に軽減)今年1月にドジャースから契約を解除されている。

 DeNAではMLBと現状を確認したり、本人との面談も行ったうえで獲得に踏み切った。親日家で、19年の来日時には横須賀にある球団施設の「DOCK」を訪れて今永らとキャッチボールをしたこともあると言う。こうしたパイプが契約につながった面もある。額面通りの働きを見せれば2ケタ勝利以上が望める。V獲りの救世主となっても不思議ではない。

 反面、不安要素もある。まず、第一に一昨年の6月から実戦マウンドから遠ざかっていること。本人は今月24日に行われた入団会見の席上で、出場停止中もトレーニングは欠かさず、新球の「スプリットチェンジ」をマスターして、「村上との対戦は楽しみ」と語っているが、本格始動は4月中旬以降になるはずで、サイヤング腕が復活するかは未知数である。


どこまで日本野球と真剣に向き合うのか


 さらに、これだけの大物になると、どこまで日本野球と真剣に向き合うのかが最大の注目ポイントとなる。

 過去にもメジャーの大物選手が日本球界入りした例は多い。だが大物ほど評判倒れに終わっているケースが目につくのも確かだ。

 直近では一昨年までオリックスに在籍したアダム・ジョーンズ。メジャー通算282本塁打の実績を残して来日したが、レギュラーとして活躍したのはわずかな期間に終わっている。

 ジョーンズの場合は年齢的に下り坂での来日だったが、1980年代、ヤクルトに入団したボブ・ホーナーはメジャーで4番を務めた元新人王。今なら村上のような豪打で1年目から30本塁打を記録したが、わがまま放題でこの年限りで退団。他にも1990年代、ダイエー(現ソフトバンク)にやってきたケビン・ミッチェルはメジャーで本塁打、打点の二冠王に耀き、MVPも獲得した超大物だったが、病気やけがを理由に欠場を繰り返し、無断帰国。その後契約を巡って球団と裁判沙汰まで起こしている。

 日本野球に適応しようと努力して開花した外国人もいれば、一時的な“腰掛気分”でやって来る問題児もいる。

 バウアーの単年契約は球団との合意のもと。仮に来年以降のメジャー復帰を目指してのものでも構わない。せめて今年1年は三浦大輔監督を胴上げするために、剛腕で白星の山を築くことを願わずにはいられない。

 サイヤング賞投手の日本球界入りは1962年に中日でプレーしたドン・ニューカム(日本での登録名は「ニューク」)以来2人目。ただし、ニューカムは年齢を重ね、中日では外野手として主にプレーしている。

 バウアーはまだ32歳の若さ。世界の野球に酔いしれた日本のファンにも、格の違う投球を見せてもらいたいものだ。


文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

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