第2回:スタートダッシュ失敗…原巨人に早くも訪れた試練
開幕から11試合。12日時点(以下同じ)で、巨人が4勝7敗と不振にあえいでいる。振り向けば最下位の中日がすぐそこにいる体たらくだ。
昨年の11試合消化時点では9勝2敗で首位を快走。チーム総得点は53点を数えているのに対して、今季は32得点。1試合平均で2点近くも少ないのだから、苦戦もうなずける。
12日の阪神戦が、下位に沈む現状を象徴していた。
打線は阪神の3年目・村上の前に7回までパーフェクトに抑え込まれる。ようやく8回に同点とするが、それが精一杯。延長10回にはバッテリーエラーも手伝ってピンチを広げると、決勝点を許してしまう。打てない、防げないと言う現実が突き付けられた敗戦だった。
開幕前から、巨人の下馬評は決して高くなかった。
評論家による順位予想でも、優勝に推す声は少なく、中にはBクラスとする声も目立った。
中でも不安視されたのが、長年、チームを牽引してきた菅野智之投手と坂本勇人選手の衰えだ。
シーズン前のあるインタビューで原辰徳監督は、こう語っている。
「勇人と智之が本当に主力らしく戦ってくれるのか? この2~3年は決して主力としての戦い、結果は残してくれていない」(『Number Web』、2月13日配信)
案の定と言うべきか。3月のオープン戦で右肘の変調を訴えた菅野は一軍から消え、打撃不振に悩む坂本は開幕5試合目で先発メンバーから外れた。同時にこのあたりから指揮官の“迷走”が始まる。
8日の広島戦で新外国人のルイス・ブリンソン選手が先発メンバーから姿を線消す。2日前のDeNA戦で左中間に二塁打を放ったものの、三塁を欲張って三走の岡本和真選手が塁上で憤死、しかもアウトカウントを間違ったプリンソンまでが立ち往生で珍しい併殺となった。DeNA戦までは打率4割を超していた新助っ人の出番は、それ以降減っている。
9日の広島戦では丸佳浩、吉川尚樹の主力選手が打撃不振のため、定位置をはく奪された。吉川の場合はルーキーの門脇誠選手に二塁を譲った形だが、試合途中には松田宣浩選手が、プロ入り初の二塁を守り、失策も記録している。この用兵には評論家やOBからも疑問符がつけられた。
名門球団は今、大きな曲がり角に差し掛かっている
原監督は動きを好む指揮官である。早めの仕掛けで、これまでも多くの勝負に勝ってきた。だが、今季の戦いを見ると落ち着きが感じられないのはどうしたことか。確かに打線全体に調子が上がらず、得点機でもあと一本が出ない。
しかし、開幕直後から主力を先発メンバーから外し、「猫の目打線」では、無理にあがいているようにしか映らない。通常、開幕オーダーとは1年間、このメンバーを中心に戦うと言う意思表示でもある。少なくとも10試合くらいはどっしり構えて、その後に修正点を加えるのが一般的だ。
新たに三番に起用された梶谷隆幸選手や現役ドラフトで獲得したオコエ瑠偉選手らも頑張っている。投手陣に目を転じれば重要場面での起用が多い田中豊樹投手も気を吐いている。だが、梶谷も田中も開幕直前に育成契約から支配下登録されたばかりの選手だ。とても、計画的に起用されているとは言い難い。
二年連続のV逸に、昨年はBクラス転落。名門球団は今、大きな曲がり角に差し掛かっている。長期的には若手の育成。しかし、目の前の勝利もつかみに行かなければならない。原監督がよく口にする「勝利至上主義」だが、ここまでチームがバタバタすると、落ち着いて戦えるのか心配になる。
主砲の岡本和に今季1号が飛び出した。長距離砲は、感触を掴めばアーチ量産も見込まれる。丸の打棒が復調して岡本和、中田翔選手とのクリーンアップが戻れば浮上の目も見えて来る。
今季の原監督の表情を見ていると落胆、怒り、イライラが例年以上に見て取れる。3年契約の2年目ではあっても、優勝以外なら勇退までささやかれている。
選手を駒として動き回らせるのも指揮官なら、不調の時こそ、どっしり構えるのも監督のあるべき姿だ。
いきなり訪れた試練の時。原辰徳、真価の問われる春である。
文=荒川和夫(あらかわ・かずお)