“お荷物”と呼ばれた球団が奮起
ナ・リーグ東地区でマイアミ・マーリンズが奮闘中だ。
2015~17年にはイチローが所属していたこともあり、日本のファンにもお馴染みの球団。16年にはカジキのロゴをまとったレジェンドがメジャー通算3000安打を放った。そのシーンは今も多くのファンの記憶に刻まれていることだろう。
マーリンズはチーム創設5年目の1997年と、その6年後の2003年に世界一に輝いたものの、勝ち越したシーズンは昨年までの30シーズン中7度だけ。近年はチーム再建を試みるもことごとく失敗してきた。2010年以降は特にひどく、直近13年間で勝ち越したのは3年前の1度しかない。しかも、そのシーズンはコロナ禍で行われたため60試合制で、31勝29敗と辛うじて勝ち越したものだった。
今季も苦戦は免れないとみられていたマーリンズだが、大方の予想に反し、ここまで23勝21敗と2つの貯金を作っている。地区首位のアトランタ・ブレーブスには4.5ゲーム差をつけられているが、ニューヨーク・メッツや昨季のリーグ覇者フィラデルフィア・フィリーズといった“金持ち球団”を勝率で上回っている。
日本時間19日に行われたワシントン・ナショナルズとの同地区対決は、序盤から一進一退の攻防となったが、これを5-3で制したマーリンズが同カード3連勝。15日のシンシナティ・レッズ戦からの連勝を4に伸ばし、勢いに乗ったまま、20日からサンフランシスコ・ジャイアンツとの3連戦に臨む。
マーリンズの躍進を支えているのが、3番を務めるルイス・アラエスだ。
ツインズ時代の昨季はア・リーグ首位打者に輝き、オフにマーリンズへとやってきた。リーグが替わり、未対戦の投手も少なくない中で当初は苦戦も予想されたが、昨季以上のペースで安打を量産。打率は両リーグトップの.378をマークしている。
そんなアラエスが牽引するマーリンズだが、現実的には投打ともにレベルは高くない。「-52」(155得点/207失点)というリーグワーストの得失点差が総合力の低さを物語っている。
そんなチーム状態にもかかわらず、マーリンズが貯金生活を送れているのは、ひとえに“接戦に強い”からに他ならない。
今季ここまでの1点差試合は15を数えるが、驚異の14勝1敗という好成績。2~3点差の試合では負け越しているものの、最後まで手に汗握るような展開になったときはほぼ負けていないのだ。
地力では同地区のライバル球団に劣るものの、粘りと勝負強さで何とか白星を拾ってきたマーリンズ。果たして快進撃はどこまで続くだろうか。
文=八木遊(やぎ・ゆう)